腐った林檎

アズ

文字の大きさ
25 / 67
第2章 イリゼ

11 カーチェイス

しおりを挟む
 ウーリーの錆びついた車は子供達全員を乗せるには狭すぎた。ギニャールは前の席で、後部座席にはオラス、カミュ、ヴァイヤン、ノルデ、ガニエ。まだ上手く喋れないガニエは最年少で、まだ泣いたり怒ったり感情で訴えることが多い。四人乗りの車では当然シートベルトの数も足りない。ガソリン車で、電気でもなければ水素でもない。年代もので、車種はとっくに生産を終えたものだ。そして、しっかりと車検切れでもあった。古い車を乗るとお金がかかる。ウーリーはそれをちゃんと支払ったことがなかった。
 角を見つけるとウーリーはハンドルを回し、角を猛スピードで曲がる。
 歩行者は驚き立ち止まる。その後でバイクの集団や車が猛スピードでその車を追いかけていく。街の遠くからはパトカーのサイレンが聞こえ、遠くの空からヘリの騒音が響き渡る。
 状況を察した人々は歓声をあげる。
「ウーリーの野郎、やらかしやがった!」
「終わったな」
 ウーリーを知る連中はこの状況を笑った。
 警察にどうせ捕まる。そうでなくても、他の怖い人達に捕まりもっとひどい目に合うか。だったら警察に捕まった方が安全だろう。どちらにせよ、奴は終わりだ。
 皆の世の中の不満は突然のカーチェイスで祭りのように発狂し、盛り上がった。
「逃げろ逃げろ!!」
 大笑いしながら次々と見物客が窓を開けて外を見る。
 ようやく現れたパトカーに皆が一斉に指を差して方向を教え、更に盛り上げる。
「最悪だ!!」とウーリーは叫んだ。
「嫌われてるの?」とギニャールは訊いた。
「違う! 楽しんでやがるんだ」
「なら、途中で私達を降ろして! あんたと一緒に捕まるなんてごめんよ」
「ふざけるな! 勝手なこと言いやがって」
 ウーリーはアクセルペダルを踏み続けるが、それよりも早くバイクが追いつこうとしていた。
「もっとスピード出ないの?」
「やってる!」
 すると、追いかける車の後部座席の窓が開き銃が出てきた。
「やばっ!! 皆、頭を下げて!」
 ギニャールがそう叫び、一斉に頭を下げる。
 直後、銃撃を受け車の窓が割れる。
 ミラーも破壊され、無残な有り様となる。
 ガニエは悲鳴をあげ、ノルデは大声で泣き、ギニャールは何か怒鳴っている。ウーリーはハンドルをきり、角を曲がった。
「てめぇら、うるせぇ!! 降りたきゃ勝手に降りろ!」
「オラス!」ギニャールはオラスを呼んだ。
 オラスは頷くと、割れた窓から変身した右腕を出し、盾にした。
「これで弾はなんとかなるでしょ」
「ああ!」
 すると、ヘリの音が聞こえてきた。ついでにサイレンも。
 それでも連中はウーリーを追いかけるのをやめようとはしなかった。
「空からの追跡は面倒だ。地下に向かう」
「地下?」
 ウーリーは通りにある地下鉄の入口に車のまま突っ込んだ。
 階段をガタガタと揺れながら下に降り、クラクションを鳴らしながら駅のホームにいる人達を避けつつ、地下鉄のレールへと降りた。
 追っても諦めることなく地下に降り、バイクがレールへと降りた。
 バイクが徐々に追いつき、あともう少しというところまで迫ると、オラスはドラゴンの右腕で横に払い、振り払われたバイクは壁に激突にした。
「いいぞ! その調子で連中を撒け」
 直後、嫌な音が聞こえた。
 前方に明かりが見える。
 それは徐々に此方に近づいてくる!
「いやあああああ!!!」
 ギニャールとウーリーが叫ぶ。
 前から列車が走ってきた。地下の為、逃げ道は無し!
「ぶつかるうううう!!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...