崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ

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 牛すね肉のシチューと好き嫌い 2

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「お前の家は、どうして困窮を?」

「えっ、あっ、その、……お恥ずかしい話、ですけれど、父が、お金の使い方が下手な人なんです。欲しいと思えばすぐに買ってしまうのですね。珍しいものが好きで、本や、調度品や、それから植物なんかもそうなんです。それと……リュコスちゃんたちも。闇オークション、わかりますか?」

「あぁ。魔生物ハンターたちが不正に狩った魔生物を売り捌いている場所だな。……本来なら、取り締まらなくてはいけない。だが、そういった噂があるだけで、調べてはいるものの実態はわからない。魔生物の毛皮や、ツノなどは、個人で売買をしていて、どこで買ったと所有者に尋ねても、ずっと昔に人から貰ったとしか言わないのでな」

「そうなのですね……私はあまり詳しくないのですけれど、お父様はそこに参加していて」

「お前の父は、オークションの場所を知っているのだな。……そうか。魔生物は、そこで?」

「はい。お父様、珍しいものを保護したいという気持ちが強くて……そこで売られている魔生物たちを買ってきては、我が家に連れてきて、私にお世話を丸投げするのですね。お世話ができないのです、お父様は」

「大変だな」

「リュコスちゃんたち、人間に酷い目にあった後でしたから、最初は警戒されていて大変でした。追い回されたりしましたし、食べられるかなって思うこともありました」

「それは、怖かっただろう」

「怖かったです……木の上から半日ぐらい降りられないこともあって。木の下で、水色大虎のティグルちゃんがぐるぐる回るものですから……今ではすっかり仲良しになりましたけれど」

「水色大虎……白狼もそうだが、人に懐くような存在ではない」

「そうなのですね。私、家にこもっていましたので、あまりよく知らないのですけれど……やっぱり、ご飯を毎日あげたのがよかったのかなと思います」

『毎日の食事と、風呂とブラッシング。あと、なでなでするのも、悪くないぞ、ティディス』

「きゅぷ」

「ほうほう」

 リュコスちゃんの言葉に同意するように、ペロネちゃんとシュゼットちゃんが鳴き声をあげた。
 改めて尋ねることなどなかったのだけれど、お風呂とブラッシングとなでなでも、結構みんな好きなのね。よかった。なでなでに関しては、私が気持ちいいからしているのだけれど。

「お話をしていると、時間が経つの、あっという間ですね。……私、こんなに誰かと、きちんとお話ししたのは、はじめてかもしれません」

「そうか? お前は、侍女たちと親しくしているだろう」

「私、言葉を話すよりも、聞いているほうが楽で……大体、いつも聞いています。お話を聞くの、好きです。でも、レイシールド様は……その、私の言葉を待っていてくださるから、なんだかお話ししやすくて。自分のこと、たくさん話してしまいました」

「そうか」

「ご迷惑じゃ、ないでしょうか……」

「いや」

「ふふ……よかったです」
 
「……お前も、俺がそばにいたら、迷惑では?」

「ど、どうしてです……? レイシールド様は私の大切な旦那様です……! お世話係というのは、旦那様の側にいるものですから、迷惑なんて思わなくて、むしろ嬉しいです」

「……旦那様、か」

「は、はい。仕えるべき主人のことを、旦那様や、ご主人様と、いうのですよね?」

「間違ってはいないが」

「旦那様とお呼びしたほうがいいでしょうか。それとも、ご主人様?」

「名前でいい」

 レイシールド様は少しだけ困ったように言った。
 レイシールド様のお口に合うといいけれどと思いながら、私は牛スネ肉のシチューとマッシュポテトをお皿に盛り付けをして、カートに乗せてダイニングへと運んだ。
 カートを押す私の後ろを、ペロネちゃんとシュゼットちゃんを背中に乗せたリュコスちゃんがついてくる。
 テーブルにお皿を並べるのをレイシールド様も手伝ってくださって、私は恐縮しながらも甘えさせていただくことにした。


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