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ひっかけ
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そこまで考えてからステラが今の結論に辿り着いたことに圭司は少し疑問が湧いた。ニューヨークで日本人女性が一人事件に巻き込まれ、子供が行方不明になったとして、それを圭司の関係者だと結びつける根拠があまりにも強引ではないかと気がついた。
圭と圭司の関係は「顔が似ている」以外——しかもそれはステラの主観だ——は何もないに等しいはずだ。宝箱の中の紙に書かれた名前がもしタカナシと読めたとしても、それで圭と圭司が血が繋がっているという結論が確信できるレベルにはないはずだ。まさか——
「ステラ、君はいつその答えが間違いないと思ったんだい?」
「うん、ついさっきかな」フッと笑うようにステラは答えた。「さっき東京から帰る前に菊池さんに聞いたのよ、ショウダサエさんを知ってるかって」
——ニュースソースは誠か!
「なんだ、あいつが喋ったのか。余計なことを——」
「ははっ、やっぱりね」と言ってステラは口に手を当てた。「菊池さん、何も言わなかったわよ」
「それって——」
「うん。今あなたから答えを聞いた。やっぱりショウダサエさんは、あなたの知り合い——っていうか、元カノ?」
しまった、やられた——
「おかしいって思ったの。あんなに二人で何年探してわからなかったことが、日本に来てすぐに関連性のありそうな事件の記事を見つけたのに、あなたは妙に知らない素振りをしたよね。だって、ほとんど同じ時期に同じぐらいの子供を連れた女性がニューヨークで亡くなって、その子供が行方不明。誰だって圭とその女性の関係を疑っても不思議じゃない。ネットを使えばかなりの情報を拾えるはずなのに、あなたはそれをしようともしなかった。それって私に気づかれないようにしてるとしか思えなかったの」
ステラは圭司をじっと見据えるように視線を逸らさなかった。
「いや、その、別に隠してた訳じゃ……」見透かされて圭司は慌てて取り繕った。
「さっきも言ったけど、圭の宝箱を開けた時だってさ、名前が違ったはずなのに私にはその話に触れようともしないから」そう言ってステラは唇を尖らせた。
「で、逆に聞くけど圭司はいつ気がついたの?」
もう言い逃れはできそうになかった。圭司はとうとう観念して今日あったことを全て話すことになった。
「帰り際にな、その子供の名前はと聞いたんだ。そしたら『正田圭』だと向こうの母親が言ったんだ。圭は俺と同じ漢字だ」
「だからいくら探しても、高橋圭という名前じゃ親が見つからないはずよね。でも、なんで高橋って名前でストロベリーハウスに預けたのかしら」
高橋という子供の入国記録が見つからない。ずっと疑問に思ってたことだ。
「ひょっとしたらなんだけど……。彼女はもし自分に何かあっても、高梨圭という名前でハウスに預けていたら、俺が気がついてくれるかもしれないと思ったんじゃないかなあ。今となってはわからないけど」
「じゃあ、サエさんが母親に言ってた、圭司ならわかる場所って?」
「それはストロベリーハウスのことだと思う」
圭司の「神」、ジョン・レノンは「ストロベリー・フィールズ・フォー・エバー」という名曲を残している。「ストロベリーフィールズ」は、両親から見放されおばさんに育てられたジョンの家の隣にあった孤児院の名前であり、ジョンはいつもそこで遊んでいたということだ。
アミティはボストンにも移動しやすく、治安は少々悪いがニューヨークの中心地からすると安いホテルがたくさんある地区で、そこで宿を取った紗英がストロベリーハウスという子供を預かってもらえそうな施設を見つけ、ほんの少し未来に自分に起こる不幸な出来事など想像できるはずもなく、短期間預かってもらうにあたり遊び心で「高梨圭」という名前を書いたのではないか。
「それで圭司は、子供ができたから彼女を捨てたの?」
「いや、違う違う。全然違う。俺は子供ができたことさえ知らなかった。完全に別れた後にわかったことだよ。俺たちは終わってたんだ。本当だよ信じてくれ」
圭司は必死に誤解を解こうとステラに言う。
「どうだか。男ってみんなそう言って浮気する」
ステラは当てつけがましく大きなため息をついた。
「で、圭にはどう説明するの」
ステラが言う。やはりそこは大事なところだ。
「一応遺伝子検査とかしてからのほうがいいのかと思って。紗英のお母さんにもちゃんと伝えるためにも、科学的にはっきりするまでは黙っておいた方がいいような気がするんだが、どう思う?」
半分冷や汗を流しながら圭司が言うと、「まさかこの後に及んで、まだ自分は父親じゃないとか言って逃げるんじゃないでしょうね」と近くにあった枕を投げつけられそうになった。
圭と圭司の関係は「顔が似ている」以外——しかもそれはステラの主観だ——は何もないに等しいはずだ。宝箱の中の紙に書かれた名前がもしタカナシと読めたとしても、それで圭と圭司が血が繋がっているという結論が確信できるレベルにはないはずだ。まさか——
「ステラ、君はいつその答えが間違いないと思ったんだい?」
「うん、ついさっきかな」フッと笑うようにステラは答えた。「さっき東京から帰る前に菊池さんに聞いたのよ、ショウダサエさんを知ってるかって」
——ニュースソースは誠か!
「なんだ、あいつが喋ったのか。余計なことを——」
「ははっ、やっぱりね」と言ってステラは口に手を当てた。「菊池さん、何も言わなかったわよ」
「それって——」
「うん。今あなたから答えを聞いた。やっぱりショウダサエさんは、あなたの知り合い——っていうか、元カノ?」
しまった、やられた——
「おかしいって思ったの。あんなに二人で何年探してわからなかったことが、日本に来てすぐに関連性のありそうな事件の記事を見つけたのに、あなたは妙に知らない素振りをしたよね。だって、ほとんど同じ時期に同じぐらいの子供を連れた女性がニューヨークで亡くなって、その子供が行方不明。誰だって圭とその女性の関係を疑っても不思議じゃない。ネットを使えばかなりの情報を拾えるはずなのに、あなたはそれをしようともしなかった。それって私に気づかれないようにしてるとしか思えなかったの」
ステラは圭司をじっと見据えるように視線を逸らさなかった。
「いや、その、別に隠してた訳じゃ……」見透かされて圭司は慌てて取り繕った。
「さっきも言ったけど、圭の宝箱を開けた時だってさ、名前が違ったはずなのに私にはその話に触れようともしないから」そう言ってステラは唇を尖らせた。
「で、逆に聞くけど圭司はいつ気がついたの?」
もう言い逃れはできそうになかった。圭司はとうとう観念して今日あったことを全て話すことになった。
「帰り際にな、その子供の名前はと聞いたんだ。そしたら『正田圭』だと向こうの母親が言ったんだ。圭は俺と同じ漢字だ」
「だからいくら探しても、高橋圭という名前じゃ親が見つからないはずよね。でも、なんで高橋って名前でストロベリーハウスに預けたのかしら」
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「ひょっとしたらなんだけど……。彼女はもし自分に何かあっても、高梨圭という名前でハウスに預けていたら、俺が気がついてくれるかもしれないと思ったんじゃないかなあ。今となってはわからないけど」
「じゃあ、サエさんが母親に言ってた、圭司ならわかる場所って?」
「それはストロベリーハウスのことだと思う」
圭司の「神」、ジョン・レノンは「ストロベリー・フィールズ・フォー・エバー」という名曲を残している。「ストロベリーフィールズ」は、両親から見放されおばさんに育てられたジョンの家の隣にあった孤児院の名前であり、ジョンはいつもそこで遊んでいたということだ。
アミティはボストンにも移動しやすく、治安は少々悪いがニューヨークの中心地からすると安いホテルがたくさんある地区で、そこで宿を取った紗英がストロベリーハウスという子供を預かってもらえそうな施設を見つけ、ほんの少し未来に自分に起こる不幸な出来事など想像できるはずもなく、短期間預かってもらうにあたり遊び心で「高梨圭」という名前を書いたのではないか。
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ステラが言う。やはりそこは大事なところだ。
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