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#88 楽しい?宴会の時間。その2
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「で? イチさん、実家の話の続きが聞きたいっす」
ジェンに言われ、壱は少し前に話していた内容を思い出す。
「あ、実家の味噌蔵の話でしたよね。そうですね。その分若い人は入り辛いかも知れないですが、他の店にも卸してますしね。お陰さまで評判なんですよ。俺も小さい頃から毎日味噌を食べてたんで、今でも味噌が大好きなんですよ」
それはもう禁断症状が出る程までに。
「どんな味なんですかー?」
食いしん坊のナイルが身を乗り出して来る。
「塩を使って作るので、そのままだとしょっぱいんです。でも甘みもありますよ。出汁に溶かしてスープにしたり、他の調味料で伸ばして炒め物に使ったりするんです。あ、これから育てる米に、本当に良く合うんです。米を炊いて、こう丸めて」
壱は両手をお握りを握る様に動かす。
「焼いて、焦げ目を付けてから味噌を塗って、香ばしくなるまで焼いた味噌握り、旨いですよ」
「それは美味しそう……!」
ナイルが喉を鳴らした。
「その味噌と言うものは、この世界では作れないんですか?」
壱は一瞬動揺し、エールを口に運ぼうとしていた手が止まる。ここで漸く気付く。何をしているのだ、自分で墓穴を掘ろうとしているでは無いか。もっと他の話題にすれば良かった。
例えばこの村にも学校があるのだから、学生時代の話とかもあったでは無いか。どれだけ自分の世界は狭いのか。
「え、あ、あの、実は今作っている最中で!」
慌ててそう応える。もう実は作ってあって、毎朝食べているなんて言えない。
何せまともに作ると完成まで1年は掛かるものなのだ。サユリの時間魔法の事は言えないのだから、今この世界に存在していたらおかしいのだ。
壱は小さく深呼吸をし、己を落ち着かせる。
「大豆を潰したものに塩と麹を混ぜて、1年寝かすんです」
「麹って何ですかー?」
ナイルの問いに、壱はまた焦る。これもこの世界に無いものだ。麹菌そのものは空気中に漂っているものである。しかしそれは壱では集める事が出来ない。
「こ、麹っていうのは、あの、麹菌というのを米に付着させて発酵させるんですけども、その麹菌というのが、空気中にあるもので、あ、ここに来る時に偶然蔵で使ってたやつを持っていたんです」
とりあえず言い繕えただろうか?
「そうなんすか。でも、それが無くなったらどうするっすか? もう味噌作れなくなっちゃうんすか?」
ジェンの疑問は尤もである。壱が応えに窮してしまうと、サユリが口を開いた。
「それなら心配無いカピよ。少しの量なら我が増やせるカピ」
え、サユリ、そんな話をして大丈夫なのか? 壱が驚いてサユリを見ると、ガイが「ああ」と思い出したと言う様に言った。
「そうでしたね。サユリさん、少しなら増やすと言うか、複製が出来るんでしたね」
「便利な魔法っすよね。沢山増やせるんなら、 それこそ畑とか必要無くなるとか思っちゃうっすけど、少しっていう所が何とも絶妙っすよね~」
「個人的には美味しいものを増やして欲しいなって思いますねー」
成る程。出来る事出来ない事はともかく、規模が重要なのだ。村人がサユリの魔法で出来る事をどこまで把握しているのかを壱はまだ知らないので、やはり下手な事は言えないが。
そうなるとやはり、サユリが内緒にしている時間魔法は規模の大きなものなのだ。それもそうか。時間そのものの操作なんて、科学技術などの進んだ壱の世界でも出来ない事だった。
「そのお味噌、出来たら是非食べてみたいですー」
ナイルが恍惚とした表情で言うと、壱は笑みを浮かべた。
「出来たら是非食べてみてください。この村の方々のお口に合うと良いんですけど」
「楽しみだなー」
実はもうあるんだけどね! ごめんなさい! 壱は心中で詫びながら、ぎこちない笑みを浮かべた。
そうしている内にパスタなども運ばれ始め、壱たちはエールを傾けながら腹を満たす。そして話なども盛り上がりながら。
楽しい時間が過ぎて行く。
ジェンに言われ、壱は少し前に話していた内容を思い出す。
「あ、実家の味噌蔵の話でしたよね。そうですね。その分若い人は入り辛いかも知れないですが、他の店にも卸してますしね。お陰さまで評判なんですよ。俺も小さい頃から毎日味噌を食べてたんで、今でも味噌が大好きなんですよ」
それはもう禁断症状が出る程までに。
「どんな味なんですかー?」
食いしん坊のナイルが身を乗り出して来る。
「塩を使って作るので、そのままだとしょっぱいんです。でも甘みもありますよ。出汁に溶かしてスープにしたり、他の調味料で伸ばして炒め物に使ったりするんです。あ、これから育てる米に、本当に良く合うんです。米を炊いて、こう丸めて」
壱は両手をお握りを握る様に動かす。
「焼いて、焦げ目を付けてから味噌を塗って、香ばしくなるまで焼いた味噌握り、旨いですよ」
「それは美味しそう……!」
ナイルが喉を鳴らした。
「その味噌と言うものは、この世界では作れないんですか?」
壱は一瞬動揺し、エールを口に運ぼうとしていた手が止まる。ここで漸く気付く。何をしているのだ、自分で墓穴を掘ろうとしているでは無いか。もっと他の話題にすれば良かった。
例えばこの村にも学校があるのだから、学生時代の話とかもあったでは無いか。どれだけ自分の世界は狭いのか。
「え、あ、あの、実は今作っている最中で!」
慌ててそう応える。もう実は作ってあって、毎朝食べているなんて言えない。
何せまともに作ると完成まで1年は掛かるものなのだ。サユリの時間魔法の事は言えないのだから、今この世界に存在していたらおかしいのだ。
壱は小さく深呼吸をし、己を落ち着かせる。
「大豆を潰したものに塩と麹を混ぜて、1年寝かすんです」
「麹って何ですかー?」
ナイルの問いに、壱はまた焦る。これもこの世界に無いものだ。麹菌そのものは空気中に漂っているものである。しかしそれは壱では集める事が出来ない。
「こ、麹っていうのは、あの、麹菌というのを米に付着させて発酵させるんですけども、その麹菌というのが、空気中にあるもので、あ、ここに来る時に偶然蔵で使ってたやつを持っていたんです」
とりあえず言い繕えただろうか?
「そうなんすか。でも、それが無くなったらどうするっすか? もう味噌作れなくなっちゃうんすか?」
ジェンの疑問は尤もである。壱が応えに窮してしまうと、サユリが口を開いた。
「それなら心配無いカピよ。少しの量なら我が増やせるカピ」
え、サユリ、そんな話をして大丈夫なのか? 壱が驚いてサユリを見ると、ガイが「ああ」と思い出したと言う様に言った。
「そうでしたね。サユリさん、少しなら増やすと言うか、複製が出来るんでしたね」
「便利な魔法っすよね。沢山増やせるんなら、 それこそ畑とか必要無くなるとか思っちゃうっすけど、少しっていう所が何とも絶妙っすよね~」
「個人的には美味しいものを増やして欲しいなって思いますねー」
成る程。出来る事出来ない事はともかく、規模が重要なのだ。村人がサユリの魔法で出来る事をどこまで把握しているのかを壱はまだ知らないので、やはり下手な事は言えないが。
そうなるとやはり、サユリが内緒にしている時間魔法は規模の大きなものなのだ。それもそうか。時間そのものの操作なんて、科学技術などの進んだ壱の世界でも出来ない事だった。
「そのお味噌、出来たら是非食べてみたいですー」
ナイルが恍惚とした表情で言うと、壱は笑みを浮かべた。
「出来たら是非食べてみてください。この村の方々のお口に合うと良いんですけど」
「楽しみだなー」
実はもうあるんだけどね! ごめんなさい! 壱は心中で詫びながら、ぎこちない笑みを浮かべた。
そうしている内にパスタなども運ばれ始め、壱たちはエールを傾けながら腹を満たす。そして話なども盛り上がりながら。
楽しい時間が過ぎて行く。
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