異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#132 ノルドの新居と、壱の家事

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 茂造が戻って来たのは、昼営業が始まった頃だった。

「抜けてしまって済まんかったのう。さてさて、わしも入るぞい」

 割烹着かっぽうぎを着けながら茂造は言う。

「ノルドさんは? 大丈夫なの?」

「うむ。家を決めて来たからの。今、村人何人かが手伝ってくれて、掃除中じゃ。その後はロビンと診療所改装の相談じゃの。その頃にはまた顔を出すんじゃが、とりあえずは大丈夫じゃ」

「そっか。診療所の開店、楽しみだなぁ」

「診療所出来たら助かるよな! 病気とか怪我とか滅多に無いけど、だからたまに熱とか出た時、怖いな! て思う事があるんだよな。酷くならねーだろうって解っててもさ」

「そうなんだ。あーでも確かに、俺もこの前熱出した時には不安になったかなぁ。俺たちの世界では病気になったら大体医者に診てもらうから。熱って言っても、ただの風邪だったら良いけど、インフルエンザとかだったら大変だし」

 壱の場合は知恵熱と思われた訳だが。

「い、いんふる?」

 カリルが首を傾げる。そうか、この世界にインフルエンザは無いのか。それは良い事だ。

「俺らの世界の病名。高熱が出てしんどいんだ、あれ」

 壱も罹患りかんした事がある。数日寝込み、熱が下がっても感染防止の為に家に引きこもっていた時は、本当に退屈だった。

「そこまでの熱が出た事は無いなー。そこはやっぱりサユリさんの加護のお陰か?」

「そうだね」

 そのサユリは今、食堂が営業中なので、フロアにいる。今頃客席をせわしなく渡り歩いているのだろう。

「店長さぁん」

 マーガレットが空いた皿を両手に厨房に入って来る。

「ノルドさんが来られててぇ~、お家のお掃除終わったんですってぇ~。ランチ終わったらロビンさんと合流するからってぇ~」

「おお、そうかのそうかの。では儂は昼営業が終わったら行こうかの。ノルドの新居に行ったら良いのかの?」

「そうして欲しいって言っていたわよぉ~」

「解ったぞい。ありがとうの」

「はぁ~い」

 マーガレットは笑顔で返事をすると、皿をサントに渡してフロアに戻って行った。

「ふむ、もしかしたら夜営業の仕込みに間に合わんかも知れんが、済まんのう」

「大丈夫っすよ! 昼の準備も行けましたからね!」

「俺も大分慣れて来たしね」

 サントも皿を洗いながら頷く。

「頼もしいのう。よろしくの」

 茂造がほっほっほっと笑いながら言った。



 さて昼営業が終わると、従業員は一時的に家に戻り、茂造もノルドの新居に向かう。

 サユリとふたりになった壱。とは言えゆっくりはしていられない。

 洗濯物がそこそこまっていた筈だ。壱がやれはしり鉢だクッキーだと外出している間に、茂造が数日に1度、洗濯してくれていたのだ。

 今日は茂造が出ているので、壱がする事になる。

 洗濯場は2階にある。物干し場のあるバルコニーの横だ。

 そこには大型の洗濯機が置かれている。壱たちの世界のものの様に高性能では無いが。

 タイマーは付いているものの、ただ中のドラムが回るだけである。洗う用に低速、脱水用に高速。乾燥機は無い。

 しかし1枚1枚手洗いをするよりは、余程手間が省かれる。

 こうした機械は、街で開発されている。この村では、自宅用に持っているのはこの食堂だけである。購入はともかく搬入が大変なのである。重量があるので、1往復で1台運ぶのがやっとなのだ。

 村の集会所に、共用の冷蔵庫と並んで洗濯機が並んでいる。それを村人が交代で使用しているのだ。

 故障などがあれば、ロビンたちドワーフの腕が光る。

 この世界の洗濯も、洗剤を使用する。液体洗剤である。汚れは普通に落ちるが、色物と白いものは分けて洗わなければならない。

 茂造はそれが面倒だと言って、はなから下着も含めて白いものは購入しない。いつでも色の濃い洋服を着ているのはそれが理由だった。

 そう言われてみれば、茂造が壱の為に村人から譲り受けた数枚の服なども、色物ばかりだった。

 壱も新しく服を買う時は気を付けなければ。やはり分けて洗うのは面倒だ。

 さて、洗濯物を1枚ずつ洗濯機に入れて行く。脱水後に少しでも服同士が絡み合うのを防ぐ為だ。

 そして洗剤を直接入れて、まずは洗浄である。ちなみに柔軟剤などという贅沢なものはこの世界には無い。

 さて、その間に掃除である。これも今まで茂造が数日に1度、してくれていた。

 朝食の洗い物と言い、そう思うと壱は結構家事を茂造に任せてしまっていた。

 しまった、それはこの村の掟に沿っていないでは無いか。いくら遊びでは無い外出が多かったと言っても。これは反省である。

 茂造が老体で掃除をするのが大変だからと、サユリがあまり汚れない様にしてくれているらしいので、壱もその恩恵おんけいを受ける。大変助かる。

 実は食堂の厨房に勤める者は、この村の中では仕事の拘束時間が長いのである。なので独り暮らしのカリルもサユリの掃除の加護があるらしい。サントは妹と暮らしているので、協力している様だ。

 壱は時計を見る。洗濯機にタイマーは付いているが、アラームなどは無いので、ある程度時間を見て、戻って来なければ。

 そして脱水して、流水濯ぎである。その後、脱水。全て手動で設定する。

 そう思うと、壱たちの世界の全自動洗濯機の、何と優秀な事か。

「さ、掃除掃除っと」

 掃除機などは無いので、叩きと箒での掃除である。壱は鼻歌を歌いながら、道具を取りに行った。
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