異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

文字の大きさ
153 / 190

#153 診療所の完成

しおりを挟む
 夜営業の仕込みが始まる前に、壱は裏庭に出た。

 昨日芽吹いたばかりの米の苗を見る。まだまだ短いが、青々と空に向かって懸命に伸びている。

 田植えが出来る様になるまでまだ掛かりそうだが、その時が楽しみである。



 夜営業が落ち着いた頃、マユリが壱たちを呼びに来る。

「あ、あの、の、ノルドさんが、こ、来られてます」

 壱とサユリ、茂造は厨房をカリルたちに任せてフロアに出る。

 ノルドは壱たちを見ると立ち上がり、深々と頭を下げた。

「お忙しいところ申し訳ありません。実は今日の改装で診療所が完成しましたので、そのご報告に。この度は本当にありがとうございました」

 ノルドは言うと、また大きく頭を下げた。

「おお、そりゃあ良かったのう。ああじゃがの、わしらは何もしておらんぞい。頭を上げておくれの」

「いえ、店長さんたちが私を受け入れてくださったので、こうしてこの村で診療所が開けます。ありがとうございます」

「本当に礼を言われる様な事は何もないぞい。まま、とりあえず座ろうかの」

 茂造は穏やかに言うと、ノルドの前に掛ける。サユリは速やかにテーブルの上に。壱とノルドは譲り合いながら、結局は壱が先に座る事になった。

「早速なのですが、村の方々の健康診断を始めようかと思います。日付や時間は皆さまにご希望をお伺いしようと思っているのですが、各所を回らせていただいても大丈夫でしょうか」

「それは構わんが、手間じゃないかのう、取りまとめも含めての。そうじゃのう……」

 茂造はあごに手を添えて、考える仕草。

「うむ、儂が各所ごとの時間割の様なものを作るからの。それを村人に埋めて貰うと良いかのう。それじゃとお前さんの手間も省けるじゃろ? 村人の手間ものう。確か前に言ったかのう、相談してくれと」

 するとノルドは慌てた様な表情を浮かべる。

「確かにそう仰っていただきました。それは本当にとても助かりますけども、やはり店長さんにそんな手間をお掛けしてしまう訳には」

「いやいや、そんな手間でも無いからの。儂は各所の仕事内容なんかを把握しておるからの、比較的身体が空く時間帯も解っておる。その方が早くて良いじゃろ」

「そうするが良いカピ。どちらにしても、お前には各所に行って貰う事になるカピ。だからこれぐらいは甘えるカピよ」

 サユリにまでそう言われ、ノルドは散々迷った後、テーブルにぶつけそうな勢いで頭を下げた。

「では、甘えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」

「うんうん」

 茂造は満足げに頷き、サユリも鼻を鳴らした。

「明日の休憩時間に作るからの、夜営業の時でも取りに来ると良いぞい。で、壱よ、各所を回る時に、ノルドに付き添ってくれの」

「解った」

 壱が快諾かいだくして頷くと、ノルドはまた頭を下げた。

「本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。イチくんもお忙しいのに申し訳無い。よろしくお願いしますね」

「大丈夫ですよ。明後日の朝から回りましょうか。じいちゃん、それで良いかな。朝の苗の水遣りだけはやってから行きたいけど」

「そうじゃの。そうしてくれの。よろしく頼むぞい」

「本当にありがとうございます」

 ノルドはまた丁寧に頭を下げた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...