異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

文字の大きさ
160 / 190

#160 とある食材との出会い

しおりを挟む
 ガイたちと米の苗に水を遣っている最中に、ノルドが訪ねて来た。

「イチくん、みなさん、おはようございます。作業の途中ですいません。イチくん、本日はよろしくお願いします」

 ノルドは言いながら、壱たちに深く頭を下げた。

「ノルドさん、おはようございます。もう少し待っててください」

 壱は如雨露じょうろを傾けながら、首だけをノルドに向けて返事をする。

「こちらこそ、タイミングが悪くて申し訳無いです。ゆっくり作業をなさってください」

 ノルドが笑顔で言うと、ガイが口を開く。

「こちらは大丈夫ですから、イチくん、ノルドさん、いえ、ノルド先生ですね、どうぞ行ってください」

「いえ、そんな訳には! ただでさえイチくんにはご足労いただくのですから、私は大丈夫です」

「いや、でも」

「いえ、本当に」

 ガイとノルドの、壱の譲り合いになってしまった。こうなると壱が出るしか無い。

「ガイさん、俺、この水遣りはちゃんと参加したいんです。夕方はお任せしちゃってるんですから。ノルドさんすいません、少し待っててください。もうそんなに掛からないんで」

 壱が真摯にそう言うと、ふたりは眼を見合わせて、納得した様に頷いた。

「解りました。イチくん、では続きをしましょう」

「はい、勿論。お待ちしますので。私が早く来過ぎてしまったのです。すいません」

「いえいえ。じゃあ、とっととやっちゃいましょう」

 壱が言うと、ガイたちは「はい」「おー」とそれぞれ声を上げて、水遣りを続けた。



 さて水遣りを終え、壱とノルド、そしてサユリは並んで各所を回る。

「本当にありがとうございます、イチくん、サユリさん。私はまだこの村に慣れきってはいませんので、助かります」

 恐縮して言うノルドに、壱は否定する様に手を振った。

「俺もここに来てそんなに経って無いですから。サユリがいてくれるのが大きいと思います」

「ま、我がいたら話は早いカピよ。とりあえず今は、我の事は身分証明書と思ってくれたら良いカピ」

 サユリのぶっきら棒な物言いに、ノルドはやはり腰が低い。

「はい、勿論サユリさんにも感謝しています。ありがとうございます」

 これがノルドの人間性なのだと解ってはいる。壱はやや不安に思いつつ、だがこの村なら、それが良い様な気もする。

 午前中は陶製工房などの工房を回る。軽い世間話をしつつ、順調に時間割りを埋めて。

 食堂に戻って昼食を摂った後、午後からは畑や牧場を回る。

 さて、その畑で、壱は欲しかったものを見付ける事になる。

 畑の、それぞれの栽培物をめぐっていた時の事。

 朝食を作る度に、欲しいと思っていたもの。

 それが青々と成っていた。

 そこは玉ねぎ畑である。

 それは玉ねぎが光合成をし、養分をたくわえる為に必要な部分。太く厚く、天に向かって伸びている。

 壱はつい、玉ねぎ畑をじっくりと見回る。すると、その青い部分の太さ、そして柔らかさはどうやら株によって様々。

 壱の知識不足だった。玉ねぎの上部、土から出ている部分なんて、これまで考えた事が無かった。

 壱はノルドと話をした後の、玉ねぎ担当の村人を捕まえる。

「あの、これ、玉ねぎの上に出てる葉っぱ、食べられるますか?」

 すると玉ねぎ担当は首を捻る。

「食べられるぜ。じゃがいもの芽と違って毒は無いからな。でもここでは食べる事は無いな。硬いしよ。収穫する時に全部切り落として、後は畑の肥料になるぜ」

 それは、厳密に言えば欲しかったものでは無い。だがそれにとても似たもの。まだ柔らかい内なら、充分その役割を果たしてくれる筈だ。

 壱は考える。出ているそれをここから貰えば話は早い。

 しかし玉ねぎが丸々と育つ頃に硬くなってしまったそれは、恐らく美味しく無い。だが柔らかい内に刈ってしまうと、多分玉ねぎの成長に影響が出る。

 なら食堂の裏庭で地道に育てるか、もしくはサユリの魔法に頼るか。

 出来るなら、ほぼ毎日使いたい。となると、確実なのは後者な訳だが。

 今までの経験上、サユリの魔法に不可能も死角も無い様に思える。ならお願いするのも手かも知れない。

 しかしあまりにもサユリに頼り切りではあるので、流石の壱もそろそろ遠慮するタイミングである様な気がする。

 壱は玉ねぎ担当に訊いた。

「玉ねぎの種か苗を、いくつか譲って貰えませんか?」

 すると玉ねぎ担当はきょとんとする。

「んん? 玉ねぎが欲しけりゃ、いつでもここに来たら良いのに。ま、譲るのは勿論良いけどさ」

 玉ねぎ担当は畑の端に向かうと、苗を結構な株数掘り起こしてくれた。

「ほら。こんなもんで大丈夫か?」

「はい。ありがとうございます!」

 壱は頭を下げて、苗を両手で受け取った。

「そこの小屋に袋があるから、使ってくれて良いぜ」

「ありがとうございます」

 有り難く頂く事にする。指された小屋に入ると、新品の紙袋が積んであったので、1枚頂戴し、玉ねぎの苗を入れた。

 これで益々ますます美味しい朝食が食べられる。

 壱がずっと欲しかったもの、それはネギなのだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...