異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#23 心と身体に優しい一品

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 着替えて階下に降り厨房を覗くと、最初に壱に気付いてくれたのは、コンロでフライパンを握っていた茂造だった。

「おお、壱。マユリに聞いたが、本当にもう大丈夫なのかえ?」

 茂造の声にカリルも気付いて、「大丈夫かー?」と、いたわりの言葉を掛けてくれる。無口なサントが向けてくれる眼からも、心配してくれている感情が見える。

「うん。迷惑掛けてごめんな。もう大丈夫だから」

「迷惑とかは全然無いけどよー、気を付けなきゃよー」

「ありがとう」

 厨房はやはりフル回転だった。昨日パスタを担当していた壱がいないので、ホールからパスタの注文が入ると、その時動ける人間が素早く動く。

 そんな光景を見ると、少しでも手伝いたくなってしまう。

「じいちゃん、パスタ俺やるよ」

 そう申し出ると、茂造は首を振った。

「病み上がりなんじゃから、明日までおとなしくしておれ。それより腹が減ったんじゃろ?」

「うん、まぁそうなんだけど」

「じゃあ何か作ってやるかの。消化の良いものが良いかの」

「いや、それは本当に俺がやるから。コンロひとつ借りて良い?」

「それは勿論じゃ。大丈夫かの?」

「大丈夫。ポトフのスープ少し貰って良い?」

「おお、構わんぞ」

「ありがとう」

 壱は棚から中サイズの鉄製の鍋を取ると、ポトフの大鍋からレードルでスープを掬って入れる。

 そこに昨日サユリに精米せいまいして貰った魚沼コシヒカリの無洗米を入れ、中火に掛けた。

 スープが元々熱いので、すぐに沸く。くつくつと軽く沸いた状態を保ち、米が鍋底にくっついてしまわない様に、レードルでゆっくり混ぜながら火を通していく。

 最初は乾いたもの同士が軽くぶつかった様な、カラカラとした鈍い音がしていた鍋の中が、次第に重みを増して行く。米がコンソメスープを吸って、ふくらんで来た証拠だ。

 様子を見て、数粒すくって食べて見る。うん、しんまでしっかりと火が通っている。

 そこで少し火を強める。ぐつぐつと沸いたところで、真ん中に卵を割り入れる。素早くふたをして、火を止める。

 数分待って蓋を開けたら、洋風雑炊の出来上がりだ。鍋の真ん中で卵が良い具合に半熟状態になっていた。

 卵はボウルなどでほぐして回し入れるのも良いが、少しでも洗い物を減らしたいという庶民的な思いがあった。

 トレイに鍋敷きを置き、鉄鍋を置いて、小鉢とスプーンを添える。

「じいちゃん、みんな、ありがとう。今日は有り難く、ゆっくりさせて貰うな」

「おお、それは何じゃ?」

「洋風雑炊ってとこかな。ベースはポトフのスープだから、いろんな野菜のエキス出てるからうまいと思うんだよね」

「ほうほう、そういうものもあるんじゃな。また儂にも教えてくれの」

「うん、簡単だよ。じゃ、いただきます。上に行って食べるよ」

 居住スペースにもダイニングはあるのである。普段は朝食を摂る時ぐらいにしか使われていないらしい。

「うむ。治ったとは言え、振り返す事もあると聞いたぞ。今夜は食べて、またゆっくりと寝るが良い。明日からはまた忙しいからの」

「うん、ありがとう。お休み」

「うむ、お休み」

 茂造と、カリルとサントにも見送られて、壱は2階に上がってダイニングに向かう。テーブルにトレイを置き、早速食べ始める。

 半熟の卵を黄身から崩して、全体に混ぜて行く。そうすると余熱で、更に卵に良い加減に火が通って行く。卵がふわりとして来たところで小鉢によそって、まずは一口。

 うん、美味しい。米がポトフのスープをしっかり吸って、ほっこりと味わい深く、そして優しい。

 それは数時間掛けてブイヨンを取って、そこからまた時間を掛けてコンソメにしているのだから当然だ。そこから更にポトフの具材からも出汁が出ているのである。

 そして、とろりと柔らかい卵とふっくらとした米が胃に優しい。身体が温まって行く。何といやされる事か。

 そして温度の下がりにくい鉄鍋だからか、底にはほんのりとおコゲも出来ていて、香ばしさも味わう事が出来た。

 先ほどまで寝ていたと言うのに、また良く眠れそうだ。

 壱は洋風雑炊を綺麗に平らげると、鉄鍋や小鉢などを手早く洗い、部屋に戻る。既に完調ではあると思うが、念には念を入れて、朝まで眠れば、もう完璧な状態になると思う。

 SNSの事は引っかかる。だがこれは自分ひとりで判断して良い事では無いのだと思う。明日茂造とサユリに相談してみよう。

 壱は温まった身体のまま急いで新しいパジャマに着替え、またベッドに潜り込んだ。布団素晴らしい。布団ブラボー。そんな事を思いながら、眼を閉じた。心地よいままに、また壱は驚くべきスピードで、意識を手放して行った。
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