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#24 心地の良い目覚め
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驚くほどに爽快に眼が覚めた。あれ、もう朝か? 眠っていると過ぎる時間を体感出来ない訳だが、それにしても短かった様な気がする。
それはその通りで、窓のカーテンを開けると、外は暗いまま。ベッド脇の時計を見ると、22時を過ぎたところだった。
「ありゃ」
あれから1時間あまりしか寝ていない事になる。だがまた寝ようと言う気にはなれなかった。元気になったからか、風呂に入りたくなった。
そろそろ食堂も閉店準備に入る頃だろう。昨日のボニーの様な一件が無ければ、だが。
厨房までならこのままでも大丈夫かな。壱はパジャマのまま下に降り、厨房に顔を出した。
「あれ、イチ。寝てなきゃダメじゃん」
魚を捌くのに使用していた包丁とまな板を洗いながら、カリルが声を掛けて来た。
「もう本当に大丈夫なんだよ。だから風呂に入りたくて。汗掻いたから」
「そっか、熱出てたんだもんな」
カリルがアハハと笑う。
「今夜は相談とかそういうの無かった筈だから、掃除終わったら風呂行けると思うぜ。だから着替えて準備して来いよ。店長には言っとくからさ。今フロアにいるんだ」
「ありがとう」
壱は着替える為に部屋に戻る。先ほど着ていた服、黒のシャツとカーキのパンツに着替えると、風呂後に着る服などをセットにし、袋に入れてベッドの上に置いておく。
厨房に行くと、茂造もフロアから戻って来ていた。足元にはサユリもいた。
「おお壱、風呂に入りたいって、大丈夫なのかのう。熱が出た時には風呂は駄目だって聞いていたがのう」
「もう熱も下がってるしさ、熱の時の風呂が駄目っていうのは、環境の問題なんだって。この村暖かいし、湯冷めする様な事も無いだろうし、帰って来たらすぐにベッドに入るから」
「じゃがのう……おお、そうじゃ、熱を測るかの」
茂造は渋っていたが、ふと思い立った様に2階に上がり、すぐに戻って来た。手にしていたのは木箱で、中から取り出したのは水銀の体温計。
茂造はそれを振ると、壱に突き出した。
「脇の下で測るんじゃよ。3分じゃぞ。熱が無いと分かれば風呂に入っても良いからのう」
そう言い残して、茂造はフロアに出て行った。サユリは残って壱の足元に擦り寄って来たので、壱はしゃがんで聞いて見る。
「じいちゃんて、あんな過保護だっけ?」
「距離を図っている最中なのかもカピ。もしくは、茂造の中での壱は、別れた10年前のままなのかもカピな。子どもカピ。身内とは言え10年も離れていたのだカピ。壱がその間にどういう成長をしているかなんて、茂造には判らないカピ。幸いにも良い子に育ってくれた様だと茂造は言っていたカピがな」
「うち蔵だろ? 家族全員が仕事してるんだよ。だから家事なんかは俺も妹も手伝ってたし、当然自分の事は自分でやるって躾けられてたよ。それよりも家事育児は女の仕事、身の回りの世話さえ奥さん任せって世代のじいちゃんの方が、こっち来た時大変だったんじゃ無いのか?」
「ふむ」
サユリはどこか懐かしむ様に眼を細めた。
「包丁を持った事が無ければ、洗い物ひとつもした事が無かったカピ。湯もまともに沸かせなかったカピね。その時を思うと、成長したカピよ」
「そんなに酷かったの? じゃあ何でじいちゃんを連れて来ようと思ったんだよ」
「……暇そうにしていたからカピ」
「そんな理由!?」
実際はその頃、1週間前に細君を亡くして気落ちしていた筈だ。暇と言えば暇だったのかも知れないが、サユリのことだから、そんな茂造の気持ちを慮ったのかも知れない。異世界などに連れて行かれれば、寂しい気持ちなど吹っ飛んだだろうから。
「幸いだったのが、それらの仕事をすんなりと受け入れてくれた事カピ。この村は男も女も、それこそ子どもでさえも仕事をしているカピ。食事はこの食堂に任せているカピが、掃除と洗濯は家族全員でやるカピよ。最初は「何で儂が」みたいな事を言っていたカピが、村のみんなを見て考え方をあらためたカピ。この世界では、壱たちの世界の「古き良き」なんて戯言は通用しないカピ」
戯言と来たか。だが確かにそうかも知れない。夫が稼いで、妻が家の事をやる。この世界全体の事は判らないが、少なくともこの村ではそうは行かない。
「茂造、壱が来るのを楽しみにしていたカピ。この部屋を壱に使ってもらうんじゃ、と嬉しそうにいそいそと部屋を掃除していたカピ。壱にとってこの異世界転移は災難だったかも知れないカピが、せめて次に我が異世界を渡れる様になるまでは、茂造の傍にいてやって欲しいカピ」
「うん。解ってるよ」
壱は言うと、眼を伏せる。先代がどうしたのか、どうなったのかは知らないが、茂造はサユリがいたとは言え、実質ひとりぐらしが続いた筈だ。寂しいと思っても不思議では無い。そこで身内である壱を頼ったとしても、責められるものでは無い。
「では壱よ、茂造に渡された体温計で熱を測るカピ。戻って来てまだ測っていなかったら怒られるカピ」
「おっとそうだった」
壱は慌てて体温計を脇の下に入れた。
それはその通りで、窓のカーテンを開けると、外は暗いまま。ベッド脇の時計を見ると、22時を過ぎたところだった。
「ありゃ」
あれから1時間あまりしか寝ていない事になる。だがまた寝ようと言う気にはなれなかった。元気になったからか、風呂に入りたくなった。
そろそろ食堂も閉店準備に入る頃だろう。昨日のボニーの様な一件が無ければ、だが。
厨房までならこのままでも大丈夫かな。壱はパジャマのまま下に降り、厨房に顔を出した。
「あれ、イチ。寝てなきゃダメじゃん」
魚を捌くのに使用していた包丁とまな板を洗いながら、カリルが声を掛けて来た。
「もう本当に大丈夫なんだよ。だから風呂に入りたくて。汗掻いたから」
「そっか、熱出てたんだもんな」
カリルがアハハと笑う。
「今夜は相談とかそういうの無かった筈だから、掃除終わったら風呂行けると思うぜ。だから着替えて準備して来いよ。店長には言っとくからさ。今フロアにいるんだ」
「ありがとう」
壱は着替える為に部屋に戻る。先ほど着ていた服、黒のシャツとカーキのパンツに着替えると、風呂後に着る服などをセットにし、袋に入れてベッドの上に置いておく。
厨房に行くと、茂造もフロアから戻って来ていた。足元にはサユリもいた。
「おお壱、風呂に入りたいって、大丈夫なのかのう。熱が出た時には風呂は駄目だって聞いていたがのう」
「もう熱も下がってるしさ、熱の時の風呂が駄目っていうのは、環境の問題なんだって。この村暖かいし、湯冷めする様な事も無いだろうし、帰って来たらすぐにベッドに入るから」
「じゃがのう……おお、そうじゃ、熱を測るかの」
茂造は渋っていたが、ふと思い立った様に2階に上がり、すぐに戻って来た。手にしていたのは木箱で、中から取り出したのは水銀の体温計。
茂造はそれを振ると、壱に突き出した。
「脇の下で測るんじゃよ。3分じゃぞ。熱が無いと分かれば風呂に入っても良いからのう」
そう言い残して、茂造はフロアに出て行った。サユリは残って壱の足元に擦り寄って来たので、壱はしゃがんで聞いて見る。
「じいちゃんて、あんな過保護だっけ?」
「距離を図っている最中なのかもカピ。もしくは、茂造の中での壱は、別れた10年前のままなのかもカピな。子どもカピ。身内とは言え10年も離れていたのだカピ。壱がその間にどういう成長をしているかなんて、茂造には判らないカピ。幸いにも良い子に育ってくれた様だと茂造は言っていたカピがな」
「うち蔵だろ? 家族全員が仕事してるんだよ。だから家事なんかは俺も妹も手伝ってたし、当然自分の事は自分でやるって躾けられてたよ。それよりも家事育児は女の仕事、身の回りの世話さえ奥さん任せって世代のじいちゃんの方が、こっち来た時大変だったんじゃ無いのか?」
「ふむ」
サユリはどこか懐かしむ様に眼を細めた。
「包丁を持った事が無ければ、洗い物ひとつもした事が無かったカピ。湯もまともに沸かせなかったカピね。その時を思うと、成長したカピよ」
「そんなに酷かったの? じゃあ何でじいちゃんを連れて来ようと思ったんだよ」
「……暇そうにしていたからカピ」
「そんな理由!?」
実際はその頃、1週間前に細君を亡くして気落ちしていた筈だ。暇と言えば暇だったのかも知れないが、サユリのことだから、そんな茂造の気持ちを慮ったのかも知れない。異世界などに連れて行かれれば、寂しい気持ちなど吹っ飛んだだろうから。
「幸いだったのが、それらの仕事をすんなりと受け入れてくれた事カピ。この村は男も女も、それこそ子どもでさえも仕事をしているカピ。食事はこの食堂に任せているカピが、掃除と洗濯は家族全員でやるカピよ。最初は「何で儂が」みたいな事を言っていたカピが、村のみんなを見て考え方をあらためたカピ。この世界では、壱たちの世界の「古き良き」なんて戯言は通用しないカピ」
戯言と来たか。だが確かにそうかも知れない。夫が稼いで、妻が家の事をやる。この世界全体の事は判らないが、少なくともこの村ではそうは行かない。
「茂造、壱が来るのを楽しみにしていたカピ。この部屋を壱に使ってもらうんじゃ、と嬉しそうにいそいそと部屋を掃除していたカピ。壱にとってこの異世界転移は災難だったかも知れないカピが、せめて次に我が異世界を渡れる様になるまでは、茂造の傍にいてやって欲しいカピ」
「うん。解ってるよ」
壱は言うと、眼を伏せる。先代がどうしたのか、どうなったのかは知らないが、茂造はサユリがいたとは言え、実質ひとりぐらしが続いた筈だ。寂しいと思っても不思議では無い。そこで身内である壱を頼ったとしても、責められるものでは無い。
「では壱よ、茂造に渡された体温計で熱を測るカピ。戻って来てまだ測っていなかったら怒られるカピ」
「おっとそうだった」
壱は慌てて体温計を脇の下に入れた。
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