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#50 コンシャリド村プチツアー。その6
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次が最後だと茂造が言う。
「麦畑じゃ。ここで製粉までをしておるの。村の今の主食じゃからの、大事じゃ。勿論他も大事なのじゃがの」
昼に夜にと提供しているパンもパスタも、ここの小麦で作られているのだ。肉だって野菜だってアルコールだって大事だ。だがやはり主食は替えが利き難いのだ。
先々米が育っても、麦の地位は変わらないだろう。
麦畑に寄ると、畑に人手は無かった。代わりに端のエリアに数人が集まっている。木製の背凭れの無い椅子に掛け、何やら口に入れながら談笑している。
「休憩中かの? 邪魔するぞい」
茂造が声を掛けると、全員が振り返る。
「あ、店長さん。こんにちは」
「こんにちはー」
「どうしたんスか?」
方々から声が掛かる。
「孫の壱に村を案内しとるんじゃ」
「ああ、彼がお孫さん」
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
壱が挨拶すると、あちらこちらから挨拶が返って来た。
見ると、みんなが囲っている小さなテーブルには、枝豆が山盛りになっていた。
「あ、枝豆」
壱がぽつりと呟くと、輪の中にいたひとりの膨よかな女性が枝豆を数個掴み、壱に差し出した。
「イチくんの世界の食べ物なんだって? こっちに来てから食べた? こっちでもなかなか良く育てられてると思うんだけど。こうしておやつにしてるのよ」
壱はそれを両の掌で受け取った。左手に傾けて右手で食べると、大きく頷く。
「うん、美味しいです」
「良かったあー」
女性が安堵し、他の村人も沸く。
枝豆は、多少良く無い土壌でも育つと聞いた事がある。この村では先ほど見た、きちんと整えられた畑で育てられているのだろう。
壱がこれまで食べていた枝豆と何ら遜色無い、美味しい枝豆だった。これは茹で枝豆だが、ちゃんと塩味も効いていて、しっかりと甘みもある。硬さも程良い。
「先代が持ち込んだ当初は、育て方は種の袋に書いてあったが、食べ方がの、それこそ茹で時間なんかも判らんかったしの、塩を使うって事も知らなかったんじゃが、村人がいろいろ思案しての、ここに辿り着いたんじゃ」
茂造の世代より上となると、確かに枝豆も茹でた事が無かっただろう。買い物などをしていた事すら奇跡かも知れない。
ただ、そのせいだろう。産毛は取られていない様だった。しかし今更訂正するのもどうかとも思う。とりあえず後で茂造に言ってみる事にしよう。
「さて、ではそろそろ帰るかの。ではまたの」
「はーい、また後で」
「また後で~」
麦農家の面々に見送られ、壱たちは麦畑を出た。
「これで一通り村を見た訳じゃが。まぁ普通の村じゃ」
普通の村なのかなこれ。みんな凄く働いていたけども。壱がこれまで抱いていた、村=のんびり、なイメージでは無かった。
しかしサユリから全員が働く理由を聞いていたので、この村ではこれが当たり前なのだろうと納得する。
「全員を紹介出来んかったが、しても多くて覚えるのは難しかろうて。徐々に覚えてくれると良いの。さ、そろそろ帰るぞい。仕込みの時間が近いからの」
茂造がベストのポケットから懐中時計を取り出して、時間を見た。
「少し離れたところに養蜂場もあるんじゃが、時間が無いでの、また今度の。海も今度行こうかの」
そんな話をしながら壱たちは食堂に戻り、少しするとカリルとサントが再出勤して来た。割烹着と三角巾を着け、仕込みを始める。
コンソメを漉してポトフを作り、野菜を切り、肉を叩き、炒め、煮込んで行く。
その最中、いつもの通り、漁師が捕れたて新鮮の魚を入荷しに来た。
「毎度! 今日はサーモンが多めかなぁ。潜水日でしたから、海老と貝もありますよ」
「うんうん、今日の魚も旨そうじゃ」
木桶の中で大きく跳ねる魚たち。既に水を張ってある水槽に入れると、元気に泳ぎだした。
「お、そうじゃ、明日の漁で鰹が捕れたら、2尾ほど持って来てくれんかの。食堂用じゃ無く、儂個人で欲しいんじゃが」
「いいですよ。毎日1尾はリリースしてますから。毎日要ります?」
「いや、とりあえずは明日だけでの。1尾しか上がらんかったら1尾で良い。よろしく頼むぞい」
「解りました。ではまたよろしく!」
そう言って、程良く日焼けした良い体格の男は出て行った。
明日鰹が来ると言う事は、明後日の朝、タタキを作れるかな。楽しみだ。壱はつい喉を鳴らした。
「麦畑じゃ。ここで製粉までをしておるの。村の今の主食じゃからの、大事じゃ。勿論他も大事なのじゃがの」
昼に夜にと提供しているパンもパスタも、ここの小麦で作られているのだ。肉だって野菜だってアルコールだって大事だ。だがやはり主食は替えが利き難いのだ。
先々米が育っても、麦の地位は変わらないだろう。
麦畑に寄ると、畑に人手は無かった。代わりに端のエリアに数人が集まっている。木製の背凭れの無い椅子に掛け、何やら口に入れながら談笑している。
「休憩中かの? 邪魔するぞい」
茂造が声を掛けると、全員が振り返る。
「あ、店長さん。こんにちは」
「こんにちはー」
「どうしたんスか?」
方々から声が掛かる。
「孫の壱に村を案内しとるんじゃ」
「ああ、彼がお孫さん」
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
壱が挨拶すると、あちらこちらから挨拶が返って来た。
見ると、みんなが囲っている小さなテーブルには、枝豆が山盛りになっていた。
「あ、枝豆」
壱がぽつりと呟くと、輪の中にいたひとりの膨よかな女性が枝豆を数個掴み、壱に差し出した。
「イチくんの世界の食べ物なんだって? こっちに来てから食べた? こっちでもなかなか良く育てられてると思うんだけど。こうしておやつにしてるのよ」
壱はそれを両の掌で受け取った。左手に傾けて右手で食べると、大きく頷く。
「うん、美味しいです」
「良かったあー」
女性が安堵し、他の村人も沸く。
枝豆は、多少良く無い土壌でも育つと聞いた事がある。この村では先ほど見た、きちんと整えられた畑で育てられているのだろう。
壱がこれまで食べていた枝豆と何ら遜色無い、美味しい枝豆だった。これは茹で枝豆だが、ちゃんと塩味も効いていて、しっかりと甘みもある。硬さも程良い。
「先代が持ち込んだ当初は、育て方は種の袋に書いてあったが、食べ方がの、それこそ茹で時間なんかも判らんかったしの、塩を使うって事も知らなかったんじゃが、村人がいろいろ思案しての、ここに辿り着いたんじゃ」
茂造の世代より上となると、確かに枝豆も茹でた事が無かっただろう。買い物などをしていた事すら奇跡かも知れない。
ただ、そのせいだろう。産毛は取られていない様だった。しかし今更訂正するのもどうかとも思う。とりあえず後で茂造に言ってみる事にしよう。
「さて、ではそろそろ帰るかの。ではまたの」
「はーい、また後で」
「また後で~」
麦農家の面々に見送られ、壱たちは麦畑を出た。
「これで一通り村を見た訳じゃが。まぁ普通の村じゃ」
普通の村なのかなこれ。みんな凄く働いていたけども。壱がこれまで抱いていた、村=のんびり、なイメージでは無かった。
しかしサユリから全員が働く理由を聞いていたので、この村ではこれが当たり前なのだろうと納得する。
「全員を紹介出来んかったが、しても多くて覚えるのは難しかろうて。徐々に覚えてくれると良いの。さ、そろそろ帰るぞい。仕込みの時間が近いからの」
茂造がベストのポケットから懐中時計を取り出して、時間を見た。
「少し離れたところに養蜂場もあるんじゃが、時間が無いでの、また今度の。海も今度行こうかの」
そんな話をしながら壱たちは食堂に戻り、少しするとカリルとサントが再出勤して来た。割烹着と三角巾を着け、仕込みを始める。
コンソメを漉してポトフを作り、野菜を切り、肉を叩き、炒め、煮込んで行く。
その最中、いつもの通り、漁師が捕れたて新鮮の魚を入荷しに来た。
「毎度! 今日はサーモンが多めかなぁ。潜水日でしたから、海老と貝もありますよ」
「うんうん、今日の魚も旨そうじゃ」
木桶の中で大きく跳ねる魚たち。既に水を張ってある水槽に入れると、元気に泳ぎだした。
「お、そうじゃ、明日の漁で鰹が捕れたら、2尾ほど持って来てくれんかの。食堂用じゃ無く、儂個人で欲しいんじゃが」
「いいですよ。毎日1尾はリリースしてますから。毎日要ります?」
「いや、とりあえずは明日だけでの。1尾しか上がらんかったら1尾で良い。よろしく頼むぞい」
「解りました。ではまたよろしく!」
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明日鰹が来ると言う事は、明後日の朝、タタキを作れるかな。楽しみだ。壱はつい喉を鳴らした。
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