異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#64 バジルソースの改善案

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 まな板と包丁を洗って、壱は木製のトレイに入れられた、入荷された野菜たちを見る。

「ねぇカリル、バジルとペペロンチーノの具は何にする?」

「そうだなー」

 ミネストローネを作り終え、ペペロンチーノの下拵したごしらえをしていたカリルが、手を洗って布で拭きながら寄って来る。

 昼営業分に入荷される野菜は、日によって違う。だからパスタの具材が日替わりなのだ。夜営業はメニューも素材も固定されているので、農家がじゅくされ方などを見ながら昼の野菜を決めるのだ。

 カリルが数種類の野菜を見て、壱に聞いて来る。

「壱は、バジルソースに何入れたい?」

「俺が決めて良いの? じゃあ、鶏とブロッコリってどうかな」

「いいね! じゃあペペロンチーノはカリフラワと鯛かサーモンで行こうかな」

 どちらも昨日の昼に入荷されてさばかれた分が、冷蔵庫にあった筈だ。

「あ、それ旨そう」

「じゃあイチはブロッコリとカリフラワの塩茹で頼んで良いか? オレ、鶏と鯛やるからさ」

「うん」

 トレイからブロッコリとカリフラワを出し、包丁で小房に分けて行く。その前に鍋に水を入れ、コンロに掛けておく。

 湯が沸いたので塩を入れて、ブロッコリとカリフラワを入れる。数分後にザルに丘上げする。

 カリルを見ると、鶏肉と鯛を切り終えて、サーモンを切っている途中だった。

「カリル、鶏肉焼くな。味付けは塩胡椒だよな」

「おー助かる。頼むな!」

 1口大よりも小さめにカットされた鶏肉に塩と胡椒で下味を付けて、フライパンで焼いて行く。後でまた火を通すし、上げた時から余熱でも火が入って行くので、神経質に火を通さなくても大丈夫である。

 鶏肉を焼いていたら、隣にカリルが立ち、鯛を焼いて行く。

 夜メニューのカルパッチョのイメージで、この村では魚は生で食べるのが当たり前だと思いがちであったが、昨日茂造も言っていた。火を通す事もあると。

 昼営業では確かに火を通している。メインでは無くパスタの具材なせいか、あまり印象に残っていなかった。

 魚料理と言えば、塩焼きや煮魚、ムニエルや包み焼きなどが壱のイメージだった。そのどれもがこの村では作られないのである。

 勿体無いな、と思いつつ、新鮮な内は生で食べるのが村人の希望らしいし、昼営業にそんな魚料理を作る余裕は無い。それで巧く回っているのだ。

「おお、お前たち、待たせたの。済まんの」

「あ、じいちゃんお帰り」

 茂造が帰って来た。

「店長お帰りっす! コンソメ仕掛けてあるんで、続きはよろしくっす!」

 サントは小さく頭を下げる。

「ありがとうの。すっかり行った先々で話し込んでしまっての、帰りが遅くなってしまったのう。しかしお前たちがちゃんとやってくれるからの。壱も来て人手も足りておるから、安心出来たぞい」

「じゃんじゃん任せてくださいよ! 店長は村長だってやってるんすから、もっと食堂の仕事量減らしても良いと思うんですけどねー」

 そうだ。茂造は表向き、この村の村長だった。実際考えているのはサユリだろうが、茂造も全てを把握はあくしている筈だ。で無ければ立ち行かない。

「ほっほっほっ、それは助かるのう。じゃが儂はまだまだ働けるぞい。ではコンソメを見るかの」

 言いながら茂造は割烹着と三角巾を付けて、ブイヨンの鍋に向かった。



 怒涛どとうの昼営業が落ち着き、やっと交代で昼食である。壱はバジルソースのパスタを食べる事にする。

 まずは生パスタを湯が沸いた大鍋に入れて。

 次にフライパンを火に掛け、オリーブオイルを薄く引き、既に火が通っている鶏肉を入れる。

 温まったところにバジルソースと塩茹でしておいたブロッコリを入れる。中弱火で更に温めて、茹で上がったパスタを入れて和え、皿に盛る。

 食欲を唆る、鮮やかな緑。温かい内にいただく。

 食べたのは初めてでは無い。だがほぼ毎回具材が違うので、そこから滲み出る旨味のお陰で毎回微かに味が違う。今日は鶏肉の旨味である。

 新鮮なバジルで作ったソースは爽やかである。オリーブオイルもマメに入荷するので新鮮で、にんにくがコクを生み出す。そこに鶏肉の油が更なるコクを加えるのである。

 打って間も無いパスタももちもちしていて美味しい。

 しかし、壱は思った。壱たちの世界では、バジルソースには松の実を使っていた。それがよりコクと香ばしさを出しているのである。

 松の実が難しくとも、他のナッツで代用出来ないものか。

 この村ではまだどのナッツも育てていない。だが村人の好物であるとも聞いていたので、育てる事が出来たら一石二鳥では無いだろうか。

 育てたいが、人手の問題で難しいとサユリは言っていた。だが育て方次第に寄っては、例えばこの食堂の裏庭で育てる事が出来るのでは無いだろうか。

 そうなると村人の口に入る量を育てるのは難しいかも知れないが、せめてバジルソースに使う分だけでも。

 料理の味が上がれば、村人も喜んでくれるかも知れない。

 松の実そのものを食べた事のある壱には、心当たりのナッツがあった。擂り鉢の事も含めて、相談してみる事にしよう。
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