身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ

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3章 商業都市メルセバ

3 出発の朝

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日が登り始め、いつもより少し早いが身支度を整える。そろそろアシェを起こしておくか。
アシェはまだ眠そうだったが、ふと覚醒したように起き上がり、お出掛け楽しみ!と元気良く着替えていた。

ここ騎士団庁舎から商業都市メルセバまで徒歩だとかなり時間が掛かる。
子供の足ではキツイだろう。

アシェの様子を見てみると、既に嬉しそうに頬を染めていた。

アシェには銅貨――セリカを持たせたが、昨晩のノーマン館長の目配せ。アシェにもお金を使わせてあげなさい。と言うことだろう。
色々とお見通しのようだ。

「馬車もう来てるかなあ」

「まだ時間ではないな。
しかしすぐ来るだろう」

今日は騎士団庁舎の寮の入り口から外へ向かう。ここに馬車が来る手筈になっている。

「あれ?」

「ヴァルドさん!アシェくん!」

門の前に立っていたのは、リオットだ。
手を振っている。
なんとなく会うような気はしていたが。

「リオットさんだ」

「へへ。せっかくの2人のお出掛けっすからお見送りっす。これ良かったらどーぞ!」

「あ、ありがとう……!」

リオットはアシェに2つの小瓶を渡した。
栄養ドリンクだ。
アシェはエレナ司書からもらったクッキーに栄養ドリンクで、両手はいっぱいだった。

そろそろ馬車が来る時間だ。見ると遠くから走ってくる馬車が視界に入った。

「馬車が来たな」

「わあ!大きい。カッコいい!」

「上等な馬車っすね~!」

オレ達の目の前に綺麗に止まり、扉が開けられる。
階段が少し高いであろう。
アシェを抱え上げて、馬車の中に乗せる。

「い、椅子がふかふか。
クッションも……!」

「本当だな。
では行ってくる。留守は任せたぞ」

「お任せ下さいっす!お気を付けて!」

リオットは敬礼して返す。

「い、いってきます!」

アシェは馬車の中から大きな声で、伝えていた。

「いってらっしゃい。お土産話楽しみにしてるっす」

リオットは再び手を振る。
馬車はゆっくりと走り始めて、騎士団庁舎を後にした。


_____




窓の外の景色を堪能したのか、アシェは外から馬車の中に目を向けた。

「エレナさんにもらったクッキー。
食べてもいいかな。リオットさんにも、もらっちゃったね」

「あぁ。アシェは人気者だな」

すると馬車の外から声が聞こえた。

「少し長旅になると思い用意しました!そちらも良ければどうぞ!」

御者は手綱を取りながら、通る声でこちらにそう告げた。馬車の小さなテーブルには果実水と焼き菓子が準備されていた。

「あ、ありがとうございます」

「ありがとう。頂くか」

「うん」

魔法のお陰で揺れも少ない。
アシェは安心そうに、さくりとクッキーを頬張っている。

「美味しい!エレナさんのクッキー!
ヴァルドさんも」

アシェにクッキーを差し出され、
そのままアシェの手から口元へ運ぶ。
程よい甘さだ。

「お行儀が、悪いよ?」

「そうか?」

「うう」

アシェは少し目を逸らしながら、クッキーをもぐもぐと食べている。頬にはクッキーの粉が付いていた。
手で軽く払い落とす。

「あ、りがとう。こんなに食べても、大丈夫かな?」

「食べていい。街の中はすこし歩くからな」

「はい」

アシェは幸せそうに焼き菓子やクッキーを味わっている。もう少しで街が見えてくるだろうか。
アシェが食べる姿を眺めながら、果実水をそっと口にした。






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