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第二章「時空管理局の女」
プロローグ2『時空管理局 世界線監視室』
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「やはり、次の【箱】の所有者は、あの男で良いように思います。我々が確認してるどの世界線においても、彼は相場を張り、大衆を扇動する能力にも長けている。こちらに取り込んでおいて損はありません」
太った三毛猫を抱えた女が、スクリーンの向こうの男に向かってそう言った。モニターには、『SOUND ONLY』の表示がしてあるばかりで、相手の表情はうかがえない。
「二代前の所有者、剣乃 征大の最後の弟子だった男か。前回の審査では、いささか脇の甘いところがあるという報告を受けていたように記憶しているが……」
「否めません。ですが、あの時からもう十年近く経過しています。彼はもう若輩とは言えませんし、赤瀬川は逆に高齢で、所有者として適任とは言えません。他の者は、我々の組織に対する忠誠の観点で劣ります」
ユキは上司らしき男にそう報告した。こいつらはいつもそうだ。正義者面して、本音では、自分たちの組織を守ることしか考えていない。
「剣乃 征大も、相場の世界に身を置きながら、一度、信奉を置いた相手は絶対に裏切らない事で定評があったな。では、今の実力を図るために、一度テストをしてみるとしよう」
「テスト?」
「あの男の、師に対する思いには凄まじいものがある。あの箱が、剣乃征大の遺品であることを知れば、奴は必ず乗って来るはずだ」
声を聞く限り、ユキの話している男は相当な年配者のようだが、何者かは分からない。だが、この時空管理局において、決定権を握る人間であることは間違いないだろう。
まあいい。久しぶりに、本物の箱が外に出るチャンスだ。脇から攫うには今しかない。
「テストの方法と審査は、私に一任していただけますか?」
「ユキ……。個人的な感情は交えないと、我々の組織に誓えるか?」
「Ja, mein Gebieter. 私の居場所はここにしかありません」
「良かろう。では、この件については一任する。ミッションは箱の安全を最優先とし、その目的のためには人命は問わない。万一、何者かに奪われてしまった場合には、いかなる手段をもってしても、あの箱を破壊するように」
「承知しました」
「あの箱の機能を解明し、世界線の安寧と秩序を守るのが我々の役割だ。箱をアイツらの手に落とす訳にはいかない」
《続く》
太った三毛猫を抱えた女が、スクリーンの向こうの男に向かってそう言った。モニターには、『SOUND ONLY』の表示がしてあるばかりで、相手の表情はうかがえない。
「二代前の所有者、剣乃 征大の最後の弟子だった男か。前回の審査では、いささか脇の甘いところがあるという報告を受けていたように記憶しているが……」
「否めません。ですが、あの時からもう十年近く経過しています。彼はもう若輩とは言えませんし、赤瀬川は逆に高齢で、所有者として適任とは言えません。他の者は、我々の組織に対する忠誠の観点で劣ります」
ユキは上司らしき男にそう報告した。こいつらはいつもそうだ。正義者面して、本音では、自分たちの組織を守ることしか考えていない。
「剣乃 征大も、相場の世界に身を置きながら、一度、信奉を置いた相手は絶対に裏切らない事で定評があったな。では、今の実力を図るために、一度テストをしてみるとしよう」
「テスト?」
「あの男の、師に対する思いには凄まじいものがある。あの箱が、剣乃征大の遺品であることを知れば、奴は必ず乗って来るはずだ」
声を聞く限り、ユキの話している男は相当な年配者のようだが、何者かは分からない。だが、この時空管理局において、決定権を握る人間であることは間違いないだろう。
まあいい。久しぶりに、本物の箱が外に出るチャンスだ。脇から攫うには今しかない。
「テストの方法と審査は、私に一任していただけますか?」
「ユキ……。個人的な感情は交えないと、我々の組織に誓えるか?」
「Ja, mein Gebieter. 私の居場所はここにしかありません」
「良かろう。では、この件については一任する。ミッションは箱の安全を最優先とし、その目的のためには人命は問わない。万一、何者かに奪われてしまった場合には、いかなる手段をもってしても、あの箱を破壊するように」
「承知しました」
「あの箱の機能を解明し、世界線の安寧と秩序を守るのが我々の役割だ。箱をアイツらの手に落とす訳にはいかない」
《続く》
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