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おじさん♡元気です
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宮司♡
「…全くをもって、遅いわ!」
立春を迎えても尚、寒さのきつい日々が続いておる。
そんな折、純白の文書鷹が遠く中欧大陸より飛んで参った。
あれが中欧に嫁いでからひと月程が経ったが、初の飛来である。
高生め!
小まめに文を寄越せとあれ程に言い聞かせたに、ちっとも言う事を聞かぬ。
「あやつめ、相変わらず馬鹿…」
「ギィ!」
儂の悪態を言わせぬとばかりに、文書鷹が鋭い嘴を突き立ててきおった。
油断のならぬケダモノだ。
後少しで目潰しされる所であった。
それにしても、この鷹の気位の高い事といったら無い。
隙あらば儂の禿頭を突こうと、狙うてきよる。
全く!
飼い主に似て憎たらしい。
…特にあれを溺愛し過ぎる所が、ソックリだの。
この獰猛な鷹の脚には、薄桃色の美しい文が結んである。
待ちに待った高生からの文だ。
用心深く鷹の足から抜き取る。
開くと直ぐに、ミミズがのたくったような汚い字が目についた。
全く!せっかくの薄様が台無しだ。
…しかし、元気の良い字だ。
『ジジイ、元気か。俺も野朗供も達者だぞ。巡業の方もなんとか軌道に乗って、少し自信がついて来たみてぇ。ついヤリ過ぎてオチることもあるけれど、俺、この生業が好きだわ♡』
( ̄(工) ̄)
…左様か。
何でも過ぎるのはようないぞ。
ほどほどにせい。
しかし、お前が間抜けなまんまでも大丈夫であろう。
あれは今、抜かりない御仁らに取り巻かれておる。
その誰も彼もが高生にベタ惚れで、命懸けてと必死なのだ。
全く、気が知れん。
儂には分からぬ事だった。
鬼人で無くとも、正斎子の色には気をとられてしまうものだ。
だが、それでは守手は務まらぬ。
これは、儂の能力であった。
そう。
あの彼の国の鬼人が持ち得る、常人ならざる力がこの儂にも備わっておるのだった。
秘中の秘であるが、我が一族は鬼気の血が濃い。
実の所、誰であろうと人間ならその血に多少は鬼の気を帯びているものだ。
だからこそ人が正斎子を強く求めるように、常人も否応なく求めてしまう。
それが、よりによって!
儂には正斎子に色気を感じぬ、という能力があるのだった。
…何というか、間抜けな能力だと思う。
一族では代々にこの力が伝わっており、特にその血が濃い者が守手頭に選ばれる。
とはいえ、能力と言えるほどのものでもない。
ただ正斎子に淫心をもよおさぬ、だけの事だ。
だが、だからこそ許婚殿達の信を得る事ができたのである。
彼らは儂以外の男をあれの側に置くことを嫌った。
なにせ儂には、高生の良さが分からぬ。
顔や身体がいかに美しくても、儂にはあれは可愛い馬鹿にしか思えぬのだよ。
だから厄介事にはならんのだ。
故にむさ苦しく小煩いジジイだが、世話役には適任だと思うたのであろう。
何しろ、あれを裸に剥いて身体の検分をしたのはこの儂である。
高生の身体はそれは美しく、素晴らしいものだった。
だが、儂には色気も素っ気も無い。
これがしかし、実に不思議だった!
高生の女性の秘所が、未通である事は誰が見ても一目瞭然のものだった。
何せ、例の割れ目が薄皮できちんと覆われておったのだから。
だが、陰茎や尻がおぼこい事は何とも説明し辛い様な、感覚で分かった事だった。
おそらく、これも例の能力であろう。
…何とも、くだらぬ能力だ。
とにかく儂は、特別な男なのだった。
普通ではこうはいかぬ。
正斎子は鬼人の妻たる器だが、常人をも魅了する強い誘引の芳を持つのだった。
それは本人の意思の及ばぬ人体の神秘だ。
双方、抗うことは出来ぬ。
高生はいつ何処でどんな輩に懸想され、乱暴されるやもしれない。
この常人の国に居る限りは、隠れ続けるしか生きようがないのだ。
やはり…
器は相応しい場所に据えられ、正しく有る事が望ましい。
高生にとってそれは、鬼人の世界に他ならない。
彼の国では権力や暴力にものを言わせて、傍若無人に高生が支配される事は無い。
彼らは秩序と礼節をもって、高生を恩恵として崇め讃える。
そして、綺麗に分配するのだ。
儂にはどっちもどっち、に思える。
双方、ろくでもない!
だから、良いとこ取りを試みた。
常人の国で、常人に太刀打ち出来ぬ鬼人と高生を番わせる。
さすれば常人から守ってやれる。
鬼人には、常人の干渉の元で分配とやらをしてもらう。
さすれば高生が小間切れにされぬよう、儂が気をつけてやれよう。
などとは、まあ…
全く思う通りには行かなんだ。
…だが、良い。
高生には鬼人の冷淡さが気にならぬらしい。
馬鹿は気楽だ!
そんなふうに…
徒然と思い耽りつつ、滑らかな紙の手触りを愉しんでいる。
ふと、文が重なっている事に気づいた。
二枚目の文には、どう見ても忘れていたのを書き殴ったと思しき走り書きがある。
『あと、やや子が出来たぞ♡』
Σ( ̄。 ̄ノ)ノ
よりによって!
そんな大事を、ウッカリで尻っぺたに書き足すとは何事か!
相も変わらず、馬鹿もんが!
…、、、、ふん、、ッ、、、、、
\\\\٩( 'ω' )و ////
…まあ、良い。
高生よ、お前は幸せそうだの。
それは守手頭である、儂の至福であるのだぞ。
どうか、大事にせい。
( ̄(工) ̄)
「…全くをもって、遅いわ!」
立春を迎えても尚、寒さのきつい日々が続いておる。
そんな折、純白の文書鷹が遠く中欧大陸より飛んで参った。
あれが中欧に嫁いでからひと月程が経ったが、初の飛来である。
高生め!
小まめに文を寄越せとあれ程に言い聞かせたに、ちっとも言う事を聞かぬ。
「あやつめ、相変わらず馬鹿…」
「ギィ!」
儂の悪態を言わせぬとばかりに、文書鷹が鋭い嘴を突き立ててきおった。
油断のならぬケダモノだ。
後少しで目潰しされる所であった。
それにしても、この鷹の気位の高い事といったら無い。
隙あらば儂の禿頭を突こうと、狙うてきよる。
全く!
飼い主に似て憎たらしい。
…特にあれを溺愛し過ぎる所が、ソックリだの。
この獰猛な鷹の脚には、薄桃色の美しい文が結んである。
待ちに待った高生からの文だ。
用心深く鷹の足から抜き取る。
開くと直ぐに、ミミズがのたくったような汚い字が目についた。
全く!せっかくの薄様が台無しだ。
…しかし、元気の良い字だ。
『ジジイ、元気か。俺も野朗供も達者だぞ。巡業の方もなんとか軌道に乗って、少し自信がついて来たみてぇ。ついヤリ過ぎてオチることもあるけれど、俺、この生業が好きだわ♡』
( ̄(工) ̄)
…左様か。
何でも過ぎるのはようないぞ。
ほどほどにせい。
しかし、お前が間抜けなまんまでも大丈夫であろう。
あれは今、抜かりない御仁らに取り巻かれておる。
その誰も彼もが高生にベタ惚れで、命懸けてと必死なのだ。
全く、気が知れん。
儂には分からぬ事だった。
鬼人で無くとも、正斎子の色には気をとられてしまうものだ。
だが、それでは守手は務まらぬ。
これは、儂の能力であった。
そう。
あの彼の国の鬼人が持ち得る、常人ならざる力がこの儂にも備わっておるのだった。
秘中の秘であるが、我が一族は鬼気の血が濃い。
実の所、誰であろうと人間ならその血に多少は鬼の気を帯びているものだ。
だからこそ人が正斎子を強く求めるように、常人も否応なく求めてしまう。
それが、よりによって!
儂には正斎子に色気を感じぬ、という能力があるのだった。
…何というか、間抜けな能力だと思う。
一族では代々にこの力が伝わっており、特にその血が濃い者が守手頭に選ばれる。
とはいえ、能力と言えるほどのものでもない。
ただ正斎子に淫心をもよおさぬ、だけの事だ。
だが、だからこそ許婚殿達の信を得る事ができたのである。
彼らは儂以外の男をあれの側に置くことを嫌った。
なにせ儂には、高生の良さが分からぬ。
顔や身体がいかに美しくても、儂にはあれは可愛い馬鹿にしか思えぬのだよ。
だから厄介事にはならんのだ。
故にむさ苦しく小煩いジジイだが、世話役には適任だと思うたのであろう。
何しろ、あれを裸に剥いて身体の検分をしたのはこの儂である。
高生の身体はそれは美しく、素晴らしいものだった。
だが、儂には色気も素っ気も無い。
これがしかし、実に不思議だった!
高生の女性の秘所が、未通である事は誰が見ても一目瞭然のものだった。
何せ、例の割れ目が薄皮できちんと覆われておったのだから。
だが、陰茎や尻がおぼこい事は何とも説明し辛い様な、感覚で分かった事だった。
おそらく、これも例の能力であろう。
…何とも、くだらぬ能力だ。
とにかく儂は、特別な男なのだった。
普通ではこうはいかぬ。
正斎子は鬼人の妻たる器だが、常人をも魅了する強い誘引の芳を持つのだった。
それは本人の意思の及ばぬ人体の神秘だ。
双方、抗うことは出来ぬ。
高生はいつ何処でどんな輩に懸想され、乱暴されるやもしれない。
この常人の国に居る限りは、隠れ続けるしか生きようがないのだ。
やはり…
器は相応しい場所に据えられ、正しく有る事が望ましい。
高生にとってそれは、鬼人の世界に他ならない。
彼の国では権力や暴力にものを言わせて、傍若無人に高生が支配される事は無い。
彼らは秩序と礼節をもって、高生を恩恵として崇め讃える。
そして、綺麗に分配するのだ。
儂にはどっちもどっち、に思える。
双方、ろくでもない!
だから、良いとこ取りを試みた。
常人の国で、常人に太刀打ち出来ぬ鬼人と高生を番わせる。
さすれば常人から守ってやれる。
鬼人には、常人の干渉の元で分配とやらをしてもらう。
さすれば高生が小間切れにされぬよう、儂が気をつけてやれよう。
などとは、まあ…
全く思う通りには行かなんだ。
…だが、良い。
高生には鬼人の冷淡さが気にならぬらしい。
馬鹿は気楽だ!
そんなふうに…
徒然と思い耽りつつ、滑らかな紙の手触りを愉しんでいる。
ふと、文が重なっている事に気づいた。
二枚目の文には、どう見ても忘れていたのを書き殴ったと思しき走り書きがある。
『あと、やや子が出来たぞ♡』
Σ( ̄。 ̄ノ)ノ
よりによって!
そんな大事を、ウッカリで尻っぺたに書き足すとは何事か!
相も変わらず、馬鹿もんが!
…、、、、ふん、、ッ、、、、、
\\\\٩( 'ω' )و ////
…まあ、良い。
高生よ、お前は幸せそうだの。
それは守手頭である、儂の至福であるのだぞ。
どうか、大事にせい。
( ̄(工) ̄)
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