チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆

文字の大きさ
8 / 69

第2話 追放勇者、勇者時代を回想する【回想編2】

しおりを挟む
 アイサックたち『魔王錠開錠チーム』から 少し離れた位置で起こった、巨大な爆発。それは、古代文明を滅ぼさんと作られた、全てを焼き消す光の炎によるもの。
 神手ネアが、錠前に群がる魔物を消滅させた『獣皇無塵断』ほどではないにしろ、魔物が爆発に巻き込まれて消滅していくのが確認できた。

「――来てくれたのか!!」
 この遠くの爆発が目に入ったアイサックは、誰が来てくれたのか瞬時に理解した。そして、先の爆発に含まれる『属性』を鑑定し、目にも止まらぬ早さで、腰のホルダーから色々な薬草と薬瓶を、空中に放り投げた。

(『超速調合』!! 耐性属性【炎】レジストフレイム【光】ライト、そして『アイテム範囲化』!!)
 空中では、色とりどりの粉末や液体が、高速で混ざりあった。彼は空中で、それらを配合、調合を行ったのだ。そして完成したのが、炎と光属性ダメージを軽減する薬。それらはアイサックを中心に、アリンショアとユーナリスに降りかかった。

 っズドォォオ……。

 薬品が3人に行きわたった直後に、先ほどの爆発が正門を襲った。
 力無き魔物は蒸発し、また強靭なものも、全てを焼き消す光の炎により致命傷だ。

「……ぶあっぷ! ちょっとー! ヒメコちゃん! 危ないじゃないの!」
 ホコリまみれのユーナリスと、同じく砂まみれなアリンショアとアイサック。多少ダメージは負ったが、大したレベルではない。レジストが十分に仕事をした。

 爆発の張本人は、空に居た。

「ごめんなさいっ! でも『アイサックならやってくれる』って、イザムがっ!」
 攻撃魔力を最大限にまで高めた女性専用装備『ハイウィッチローブ』を纏い、先ほどの古代魔法《フレイヤ》を、常人ならざる早さで詠唱、連続発動させた彼女。
 降り注ぐ星の欠片を加工した、流星の名前を模した魔杖『ミーティアライト』に跨がり飛ぶ姿は、正に魔女のごとく。女神に祝福されし七勇者が一人。

神術ゴッドスペル ヒメコ=グラセオール』

 最初に放った爆発は、アイサックに属性を鑑定してもらうため。そうすれば二発目は味方巻き込みでも最小限に被害は抑えられる。
 勇者リーダー『イザム』の、アイサックを信じきった作戦バクチだった。

「……アタイを、忘れてんじゃねええええっ!」
 同じく爆発に巻き込まれたネア。だが、持ち前の体力と、『聖銀鎧』の【光耐性】によって無事だった。焼け焦げたチャリオットが、斧で真っ二つになっていた。

「忘れてないわー! 貴方ほどの脳筋なら耐えると信じてた!」
「ヒメちゃん! こんなときにまでネアを揶揄《からか》わない!」
 ユーナリスが、ヒメコを叱る。が、

「お、おおう! こんなの屁でもねぇぜ!アタイ最強だからなー!」
 揶揄られた自覚の無いネア。七勇者一の脳筋は伊達ではない。
 と、和やかな雰囲気が流れているように見えるが、しかし事態は全く好転していない。魔障気は全く衰える気配がなかった。そして、魔物の数もトータルで換算すると、ほとんど減ってない。一部が消滅したまでだ。
 すでに地平線は、魔物で黒く染まっていた。

「どうじゃ、アイサック殿」
「……行けた、2本目!!」
 三鬼神の2本目の刀の潜在解放を終え錠前に突き刺した。
 残りはあと1本。急いで潜在解放に取りかかる、が。

「う……ぐあぁぁぁ!!」
「ぬおっ! なんじゃ……がぁぁっ!」
「ひぃっ! お、音波攻撃!?」
 突然、激しすぎる耳鳴りに襲われた。まるで耳の鼓膜を脳みそごと焼けた棒でえぐられるような、形容しがたい痛みを伴った。非常に強力な音波攻撃だった。

 アイサックは音波耐性の薬を作ることもできるのだが、こうもスタン状態では、全く何もできなかった。ただ音波攻撃を受け続けるしかなかった。
 そしてさらに問題なことに、攻撃を発する敵影が見当たらないのだ。 どこから攻撃が来ているのか検討がつかなかった。
 アイサックは耳を押さえながら周囲を見渡し、自分の『いつでも鑑定』に引っ掛かることを願った。

 ……ビンゴ。見つけた。

「地面からだ! ネアっ!」
「お、おうっ!!」
 比較的軽症だったネア(聖銀は音波耐性有)、オノを適当に地面に叩きつける。

『ウオヲヲ……』
 断末魔と共に、マントラ土竜が一匹消滅した。だが、音波攻撃は止まない。何びきも地面に潜っているのだ。

「これは……マズい……っ! ヒメコさん!」
 アイサックは空にいたヒメコを見た。が、

「くっ!! ゴメン!」
 ヒメコも、敵に襲われていた。
 黒い炎に包まれた不死鳥のような魔物だった。
「こいつ、属性魔法が効かないの!」

 決定打を与えられず、空で逃げまわっているヒメコ。
 音波攻撃を直撃し、動けなくなった三人。

「このっ!このっ!」
 一人もぐら叩きを始めるも、圧倒的な数に翻弄されるネア(知力25)。
 そして全く止まる気配を見せない魔障気。

(早く……早く…っ。急いでくれっ!)
 彼ら5人は、残りの2人に賭けていたのだ。自分たち4人(当初ヒメコは入っていなかった)を『オトリ』にした、勇者イザムの作戦に賭けていた。


 イザムと、もう一人の七勇者に。


 その時、希望の眩い光が、一直線に地面を走った。
 複雑な模様を描きながら、その光に触れた魔物は瞬時に光に吸い込まれていった。
 そしてその光がひとつの紋様……魔方陣を描ききった瞬間、魔方陣から光の柱が立ち上がった。
 その魔方陣はあまりに強大で巨大であった。魔王城に集まっていた多くの魔物が、その魔方陣の上に乗っていたため、ほとんどが消滅した。

 そして、それは魔障気でさえも、浄化し薄めていった。

「間に合った……」
 音波攻撃が収まり、また、魔障気も薄くなったため、全員が動けるようになった。空を舞っていた魔鳥も消え去り、ヒメコも地面に降りてきた。
 暖かな光が、彼らを迎え入れた。

 大浄化術式《イア=ナティカ》。

 この術式を扱えるのは、女神の祝福を受けた聖職者、福音奏者エバンジェリストだけだ。また、今回に限っては一般的な効果範囲を逸脱してる。ここまで広域な術を敷いた前例などない。
 しかし今回は、彼はやってくれた。やってのけた。
 これの仕込みに、一週間以上前から準備をし、死に物狂いで完成させた。

 女神に祝福されし七勇者が一人。

神福ゴッドブレス ボッサ=シークレ』


「ボッサ、間に合ったにゃあ」
 安堵の表情で地面に経たり座るアリンショア。しかし、まだ休んでいる暇はない。正面の『次元錠』の隙間から、魔瘴気がまだ止まっていないのだ。

(あ――そうだ、早く鍵を開けないと!)
 開錠ののち、門の中で『女神の涙』を潜在解放ウェイクアップすることで、魔障気の発生源の根源を断つことができる。つまりは、アイサックがそこに到達しない限り、魔瘴気は止まることはない。
 アイサックは、懐に仕舞い込んでいた拳大の大きさの宝石を確認した。

 このとき、彼は慌ててしまっていた。

 もちろん、この結界も効果時間は有限である。そのため、急ぐ必要があるが、回りが一息ついている中で、先走ってしまった。
 3本目の刀を『潜在解放』……! そして、次元錠に刺した。


 パァン!!


 次元錠が、弾けるように開放された。

 そして、その場の全員が、そのあとの悲劇の目撃者となった。

 門から出てきた魔障気はあまりに濃厚で、それはもう霧ではなかった。
 まるで、粘度の高いインクだ。一気にそれが漏れ出し、アイサックを押し潰した。

 ドプン。

 霧でさえ吸い込めば一瞬で昇天する魔障気。それの濃密な液に飲み込まれ、溺れた。

(あー、マジか。最後に油断した、しくじったわ)
 死を覚悟したアイサックだが、人間、本当の死を目前にすると、案外冷静になるものなのだろうか。彼の体感では、ゆっくりと深淵に飲まれていく。そんな感じだった。

(わりぃ、皆。これはダメだわ)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...