チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆

文字の大きさ
22 / 69

第4話【エピローグ】

しおりを挟む
 影縫いで縛られたまま泣き叫ぶ幼子。
 たわわな乳房を剥き出しのまま、影を踏まれ身動きが取れない女。
 その女に抱きつき胸の谷間に顔を埋める、貧血で失神寸前の成人男性。

 高名な美術家の名画か、はたまた、地獄絵図か。

(まっったく嬉しくない! 気を失したら確実に殺される!)
 シチュエーションだけなら男として羨ましい限りだが、当の本人は生き延びるため必死だった。なんせ、いま動きを止めているくのいち──サザンカの顔色が明らかに悪い方向に傾いている。耳まで赤面し目を見開き、サックを睨みつけていた。

 その時、何かが聞こえてきた。警笛の音だ。
 ドカドカと、そこそこに大人数の足音も聞こえてきた。暗殺犯を捕らえるべく多くの憲兵が動員されたようだ。
 先ほどサックが放った棒手裏剣の炸裂もあって、おおよその場所が割れたらしい。
 サックは安どのため息を吐いた。なんとかこの沈黙が打破されそうだ。

「いたぞー! こっちだー!」
 一人の憲兵が、サックたちの居場所を見つけた。すぐに、大勢の憲兵が集まってきた。
「た、助かっ……てないっ!」
 憲兵が手に持っていたカンテラの明かりが、サックたちを照らすことになるが、つまりそれは『上半身裸の女に抱きつき胸の谷間に顔を埋める変態男』のこの絵面を大衆の面々にさらすこととなってしまった。

(あかんやつー!)
 追放勇者として今まで過ごしてきたが、これほどの辱めは初めてだ。貧血で顔面蒼白だったサックの顔に、また赤みが戻ってきた。そして、大変なことに気付いた。
「……だめだ! 明かりを向けるな! 『影が動く』!」

 先に術が解けたのは、ヒマワリだった。壁に刺した手裏剣と影の位置がずれたことに気付いたヒマワリは、素早く足元の煙玉を手に取り、そしてサックのほうに投げつけた。
 多量の煙を発生し、サックを中心に視界が奪われることになった。
 ランタンの光は煙によって乱反射してしまい、目くらまし効果を倍増させた。

「しまった……!」
 影が見え隠れすることで、『影踏み』の効果が薄れ、対象から術が外れた感覚が分かった。サザンカの縛りが解けた。
「くっそ!」
 サックは、僅かに残った気力を振り絞り、全力で身を引いた。それを追ってサザンカが猛襲する……と、サックは思っていたのだが、予想外に、彼女は襲ってこなかった。

 煙玉の白煙が、少しずつ収まってきた。細い路地に詰まった憲兵たちのパニックはだいぶ落ち着いたようだ。
 そこには、くのいち二人の姿はなかった。煙に乗じて逃走したらしい。

「ま……まじで助かった……」
 ぼそり、とサックは独白するも、その瞬間一気に気が抜けてしまい、膝を付きぶっ倒れた。
「お、オイ! 大丈夫かっ!」
 いかにもベテラン感のある、ひげを蓄えた男性の憲兵が、サックに近づき仰向けにされ肩を揺さぶった。
 その憲兵に、サックは見おぼえがあった。そして憲兵のほうも、サックのことを知っていた。
「……ジャクレイ総隊長……?」
「も、もしかして、勇者殿っ!」
 こんな会話をしたのち、サックはゆっくり気を失っていった。ジャクレイと呼ばれた男の呼びかけ声を、はるか遠くに聞きながら──。


 +++++++++++++++


「……」
「姉様、とりあえずこちらを」
 ヒマワリが、どこからかシーツを調達してきた。誰かの取り込み忘れだろうか。ヒマワリは、裸同然のサザンカにシーツを被せた。マントを羽織ったような格好となった。

「……」
 ギュッ、と、サザンカはシーツの裾を握りしめた。
 憲兵と偽勇者から這々の体で逃げ出し、街の外れのスラム街近くに身を潜めていた。

「姉様……」
 ヒマワリは、なんと声をかけて良いかわからなかった。
 里の中でも、抜きん出た実力を持ったサザンカ。大人たちも彼女の技量には敵わなかった。少なくとも、ヒマワリは姉が負けたところなど見たことがなかった。

「……」
 そんな姉が、こんなにも気落ちするとは。先程から全くサザンカの反応がない。姉の『色香』を使った暗殺が通じなかった。『大教祖様のご信託』に従ったのに……。

「姉様、一度『教団』に戻りましょう、偽物の報告をして、『司祭様』と『大教祖様』のご助言を……」
「……ヒマワリ」
 一旦戻ろうというヒマワリの提案を、サザンカが制した。しばらくぶりに口を開いたサザンカに、ヒマワリは少し安堵した。

「アッチ、里の男どもにも負けたことない」
「うん。姉様は最強の忍者だよ」

「でも、父上のカタキに負けちゃった」
「姉様、ウチら生きてるうちはまた機会があるよ」

「父上のカタキに負けたってことは」
「……うん」

「あの男、父上より強いってことよね」
「……うん……うん?」
 ヒマワリは、風向きの悪さを仄かに感じた。

「父上、よく言ってた。『俺より強い男にしか、娘は嫁にやらん』って」
「……うん?」

 すると、サザンカの顔が急に赤く染まっていった。火照った頬を擦りながら、とんでもないことを言い出した。

「アッチ、あの男に……ほ、ほ、ほ……」
 やめてくれ、姉様。それ以上のことは聞きたくない。
 何かの間違いであってくれ。ヒマワリは心の底から女神に願った。

「惚れてしもうた……」

「はぁ??」
 無情にも、ヒマワリが一番聞きたくなかった回答であった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...