【アラウコの叫び 】第2巻/16世紀の南米史

ヘロヘロデス

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傑物の交錯

第57話「ドラキュラ」

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ラウタロが生まれた約100年程前にヨーロッパで生を受け世を震撼させた人物がいた。
 
名をヴラド3世といい、現代ではドラキュラ、串刺し公、ヴラド・ツェペシュという名で知られている。

強国オスマン帝国との抗争に敗れ、彼の父ヴラド2世は従属する事になった。
 
その際、ヴラド2世は13歳の若さでオスマン帝国の人質となった。
 
そして一説にはオスマン帝国が将来ワラキア公国(ルーマニア)を操る為の手駒として、彼に英才教育を施していったとも言われている。
 
ヴラド2世は強国の戦を学び吸収しながら、従順にオスマン帝国に仕えていった。
 
オスマン帝国により家族が殺され、ヴラド3世はルーマニアの地の領主となり、オスマン帝国の指示の元で多額の金を支払続けた。
 
オスマン帝国の要求はさらに増長してゆき、遂には領内の子供をオスマン帝国の兵士として差し出せてと指示してきた。
 
ついにヴラド3世は従順な下僕の運命を捨て去り、オスマン帝国の使者を串刺しにし宣戦布告をする事になる。

 オスマン帝国のスルタンであるメフメト2世は、反旗を翻したヴラド3世に向けて進軍を始めた。
 
オスマン帝国とワラキアでは圧倒的な戦力格差があったが、
ブラド3世は少年の頃にオスマン帝国から学んだ事を生かし、強大な敵を苦しめる事になる。
 
ブラド3世は真っ向勝負はせずに、夜襲やゲリラ戦を仕掛け、オスマン帝国に小規模な打撃を与え続けた。
 
とは言え、オスマン帝国の兵力は依然として強大で進軍は止まらなかった。
 
しかしオスマン帝国は、道中で衝撃的な状況に出くわす事になる。
 
それはオスマン帝国兵が串刺しにされてる姿が永遠と広がりゆく光景だった。
その数2万人余り。
 
オスマン帝国の兵たちは常軌を逸した地獄絵図に震え上がり、著しく士気を下げていった。

さらに追い討ちをかける様に、ヴラド3世は自らの首都を破壊する焦土作戦を展開し、物資をも渡さない徹底した執念を見せる。
 
極めつけは、ルーマニアの地でペストが蔓延していると流言飛語を流し、より恐怖を煽った。
 
ブラド3世の苛烈な抵抗に、
オスマン帝国は兵だけを消耗し
得たもの恐怖のみだった。
 
やがてオスマン帝国側では逃亡兵が後を立たない状態となる。
 
この様な経緯でヴラド三世は、串刺し公として、恐怖で名を轟かせた。
 
ここにまた強大な脅威を前に、様々な点でブラド3世と酷似した半生を送っていった少年がいる。
 
 
 

ラウタロ「串刺し公か、そんな悍ましい者がこの世にはいるもんなんだな。」
 
ラウタロは本を閉じた。
 
「騎士の風上にもおけないやつだよ、ほんと。」
ラウタロに熱っぽく語る少年の名はマルコスといった。
 
マルコスはラウタロの教育係を任された者の1人である。
 
スペインにおいて清廉潔白な人物であり、かつ騎士道を重んじる聡明な少年であった為、この任に抜擢された。
 
マルコス「しかし、ラウタロは凄いね。
すでにスペイン語まで読める様になるなんて。

僕なんてイタリア語すら未だに良く分からないよ。」
 
ラウタロ「得手不得手はあるだろうからね。
僕は君には剣でまるで敵わないだろう?」
 
マルコスはやや得意げな顔をしている。
「僕は気が強いだけさ。
ラウタロ、君だって気持ち一つで全然変わってくるよ。」
 
ラウタロ「うん、僕にマルコスの心の強さが少しでもあればなぁ。」
 
マルコス「でも無理もないさ。
そんな野蛮な暮らしをしていたなら、気の優しいラウタロなら辛かっただろうな。
今でも最初に君がここへ来た時を思い出すよ。」
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