【アラウコの叫び 】第2巻/16世紀の南米史

ヘロヘロデス

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暗殺者

第64話「便利と支配」

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カスティニャダ「まあ、聞け。
例えば生きるものの本懐ってのが、同胞を増やすことであるならば、コイツらに人間達は支配されていると考えられなくないか?」
 
「え・・?」
ロレンツォはますます怪訝そうな顔をしている。
 
「カスティニャダさんの言ってることはなんとなく分かります、私は農民の出なので。」
エレロがカスティニャダ達の会話に混ざってきた。
 
「またまた、エレロさんは調子がいいんだから・・」
ロレンツォはエレロにさらに怪訝そうにして顔を向けた。
 
エレロ「小麦というのは、植物の中でも貧弱な存在なんですよ。

だから一生懸命世話してやらないと、彼らはたちまちこの世から姿を消していたかもしれません。」
 
ロレンツォ「小麦に彼らって・・相変わらず頭おかしいですね。」
 
エレロはにっこり微笑んだ。
「それが今や人間がせっせと彼らの繁栄を手助けして、たちまち世の中に溢れています。
そういう意味では、人間は小麦の奴隷なのかもしれませんね。」
 
ロレンツォ「それは牛だって同じじゃないですか?
けれど、いくら牛が増えたって、牛は僕たちに食べられる為に生まれてきてますよ?
そんな存在ってどうなんですか?」
 
カスティニャダ「確かにそうなんだがな。
もちろん喰われるのは勘弁してほしいが、今の人間だって惨めに見える時がある。」
 
ロレンツォ「?
ヤナコナ達の気持ちになって何か考えてるんですか?」
 
カスティニャダ「いや、ヤナコナは人間ではないだろう。
例えば、多くのものを支配している我々でさえ、時間や未来の奴隷なのではないかと思うときがある。」
 
エレロ「こんな話がありますね。
狩りのみをして暮らしている人たちに比べて、畑を耕している者の方が労働に費やす時間が格段に多いと聞いたことがあります。

農耕を覚え未来への計算がより出来る様になり、逆に時間に追われる様になったと。」
 
カスティニャダ「航海中は特に良かった。
待ち望んでいる手紙も、煩わしい手紙も届かない。
地上でいるのと違い、単独で何処かに行くことも出来ない。」
 
エレロ「海上では、様々な事を諦めなくてはなりませんからね。
不自由ゆえに縛られないってとこですかね。」
 
ロレンツォ「2人とも何を言ってるんです?
待ち望んでる手紙なら早く受け取りたいじゃないですか?」
 
カスティニャダ「例えば、技術が進歩し、はるか遠くの地とすぐに連絡が取れる様になったらどうする?」
 
ロレンツォ「便利で快適じゃないですか?
使わない手はないですよ!」
 
カスティニャダ「そう便利なものは使わずにいられない。
そしてより多くの事を気にかける様になる。
そんな世の中は、結果的に窮屈だと思うがな。」
 
ロレンツォ「そんな事言って、便利な事は取り入れていかないと、時間よりも前に誰かに支配されちゃいますよ。」
 
カスティニャダ「まあ、知ってしまった者は取り入れていくしかないんだろうな。」
 
ロレンツォ「そうですよ。
考えたとこで何も変わらない話より、今に目を向けましょうよ。」
 
カスティニャダ「そうだな。

ん?黄色い花が見えてきたな。」
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