いつか日本人(ぼく)が地球を救う

多比良栄一

文字の大きさ
307 / 1,035
第三章 第一節 魔法少女

第306話 この場所からはオレたちはなんにもできねぇんだ

しおりを挟む
 アルはその情景をみて、ぎくりとした。

 おい、嘘だろ。この陣形、また電撃攻撃をくらわすつもりか——。
「おい、整備班。セラ・サターンのコックピットの超絶縁体に、損傷はねぇだろうな。確認しろ」
 アルは装備のモニタリングをしている班に、大声をあげた。
 すぐに網膜モニタに責任者の映像が映し出され、目でデータを追いながら報告してきた。
『大丈夫です。デミリアン本体のほうの損傷は多分にありますが、コックピットは無傷です』
「セラ・サターン本体はダメになっても、レイは大丈夫ってことだな」
『はい。通常なら。ですが、さきほどのセラ・ジュピターのように直撃を受けては、どうなるか……』
「アル、どういうことよ。デミリアン本体はどうなってもいいってこと?」
 やりとりを聞いていたのだろう、春日リンが激しい剣幕でアルの脳を揺らした。
「リンさん。勘弁してくんねぇか。今、この場所からはオレたちはなんにもできねぇんだ。せめてパイロットだけでもって考えるのが筋ってぇモンだろ」
「だからといって、あの子がやられていいわけないでしょ。それでなくてもジュピターが無事かどうかもわからないのよ」

 そのとき、レイのセラ・サターンがビルに手をかけながら、ゆっくりと移動をはじめた。反対側のほうの手にもった薙刀なぎなたを杖のようについて、バランスをとりながらイオージャから逃げていく。レイは大通りの十字路までからだを運ぶと、そのまま左方向へ曲がった。これですくなくともイオージャの死角になる。 
「レイ、正解だ。今は逃げろ。その状態とその武器じゃあ、まともには戦えねぇ」
 ほっとした思いも加勢して、思わずアルがレイに声をかける。

「アル、逃げてない。わたし誘ってる」
 レイから間置くをあたわずという速さで、思い掛けないことばが返ってきた。
「どういうこったい、レイ」
 アルは聞き返したが、レイはそれにはこたえずにそのままセラ・サターンを大通りの突き当たりにまで歩をすすめた。レイは突き当たりにある百貨店らしき横長のビルまで来ると、そのままそのビルに背中をあずけた。倒れないようにすぐさま後ろ手で、両指をビルの窓に突っ込んでからだをささえる。
 ゴトンと音がして、それまで杖にしていた薙刀なぎなたがセラ・サターンの前に転がる。
 武器ももたず、ただビルを背中にして後ろ手にしがみついているセラ・サターンを見てミサトが叫んだ。
「レイ。なにをしているの!。そのままじゃ無理よ。逃げて」
 アルはモニタ越しでも蒼ざめて見えるミサトの顔をみて、自分もおなじ思いをぶつけようかどうか迷った。ほかの面々の顔を順繰りに見ていく。
 ヤマトは先ほどからほとんどことばも発せず、ただただ両腕を組んでモニタを見ていた。その顔に焦りや不安はかいま見えない。だが、ヤマトはどんな状況でも感情を表に出さない人間だ。その心中を外から推しはかることは無理だ。
 アスカはどうか。アスカはさきほどクララがピンチのときにかなり焦っていたが、今もその余波が残っているのか、顔がすこしこわばって見えた。

 ミライも相当に焦っている表情を見せているが、エドは相変わらず自分の管轄の『亜獣』のデータを分析しているようで、そもそもレイのピンチに関心をむけていないし、ウルスラ総司令は目をつぶったまま泰然自若といった態度でなりゆきにまかせている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...