いつか日本人(ぼく)が地球を救う

多比良栄一

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第三章 第二節 魔法少女大戦

第395話 船をできるだけ遠くへ投げて早く始末しよう

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 ヤマトはセラ・ジュピターの武器であるそり返った長剣を腰から引き抜くと、船底にむけて横から剣をつきたてた。
 だが、さすが豪華客船というべき堅牢な造りで、まったく刃がたたなかった。何度か船底に剣をふるってみたが、容易には壊れそうになかった。苛つく気持ちが頭にあがってきそうになったが、ヤマトは「ダメかぁ」とひとこと言って、それ以上の攻撃をやめることにした。
 元々、この剣は対・亜獣戦用の兵器なのだから、このような堅牢な装甲に穴をあけられる作りになっていない。
 ヤマトは剣をしまうと、アイに呼びかけた。
「アイ、船を持ちあげる。手伝って!」
「も、持ちあげてどうするの!」
 アイの声は反論するように強い口調だった。これからどうするかがわかっている声だ。
「できるだけ遠くへ投げる」
「陸側に投げるほうが効果が高いけど、そうはいかないだろ。でも、ある程度の衝撃を与えられれば、自重で船体が折れるか、悪くてもひびが入ると思う」
 そう言いながら、ヤマトは船尾部分を両手でつかんだ。アイはすこしもたついたがヤマトをまねて、船首をぐっと力強くつかんだ。
 今度もふたりは絶妙な呼吸で船をもちあげた。船が海から完全にもちあがると、浮力をうしなった船の重量が一気に両腕にかかってきた。腕の筋肉が全郡ぶち切れるのではと思うほどだったが、一秒ほどでその感触は消え去った。ナーブ・センサーが自動で感覚をシャット・アウトしたのだ。
「アイ、ふたりでブランコみたいに振り回して、二回目で遠くに投げとばす。いいかい」
 これもアイは押し黙ったまま従った。
 二体のデミリアンは『ディープ・ムーン号』を前後に二回ふりまわして反動をつけると、力の限り遠くへ投げとばした。
 豪華客船は数百メートル先に派手な音をたてて落ちた。ゆうに百メートルはある水柱をあげて船体が海の中に沈む。だがすぐに同じくらいの高さの水しぶきをあげて浮かびあがってきた。
「ダメかぁ?」
 ヤマトは失望の声をあげたが、そうではないことがわかった。デッドマン・カウンターの数字がゆるゆると動きはじめたからだ。
 原因はわからない。上空から落下した衝撃で絶命したか、亀裂が入って海の水が浸水したのかもしれない。確認しようとヤマトは『ディープ・ムーン号』の元へ歩いていこうとした。そのとたん、デッドマン・カウンターの数字がスピードアップしはじめた。おそろしい勢いでみるみると数字が増えていく。
 『ディープ・ムーン号』に近づいていくと、船体の一部が折れて、そこから船内へ勢いよく水が流れこんでいることがわかった。電気系統の破損によるものなのか、船尾のほうから煙が吹き出してきているのも確認できた。

 ヤマトはデッドマン・カウンターの数字を見つめた。リズムよく刻まれていくその数字を見ながら、ヤマトはほっと胸をなでおろす思いだった。
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