いつか日本人(ぼく)が地球を救う

多比良栄一

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第三章 第四節 エンマ・アイ

第595話 私の人生で一番で恐怖を感じた瞬間

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「エンマ・アイは……そう、とても危険だった……。私はあのとき、そう思った……」

「危険だった?。ってどういうことですの?」
 クララはおどろきの顔をこちらに突き出してくる。

「あの子はとても明るくて素敵な子だった。アスカ、あなたとおなじで意地っ張りで、口の聞き方はなっちゃあいなかったけど、羨ましいほど気持ちの裏表がなかった。でも任務となると冷徹な判断も迷わず下すことができるほど優秀。タケルくんとおなじくらいの腕利きだったのは確か」

「でも……、私はあの日、アイに人生で一番の恐怖を感じさせられたの……」

 からだを前に乗り出したままこちらを見すえているふたりに、ショートが訊いた。
「あなたたちは。二人のパイロットを同時に失ったロシアでの戦いは聞いたことあるでしょ。亜獣『ライデーン』との戦いを」
「はい、授業で習いましたわ。タケルさんのお父さんとおじさまが、亡くなられたって聞いてます」
「ええ。それ。群しい戦況は軍事機密で語れないし、私もそこでなぜそんな事態になったのか本当の理由を聞かされてないから知らないの」
「でも、そんとき、タケルは大怪我を負ったってきいたわ」
「そうね。わたしにはかなりの大怪我に見えたわ。あの怪我で日本人の純血率が0・01%も下がらなかったのが不思議なくらい」
「ショート、あなた、タケルの怪我を診察したの!?」
 アスカがおもわず声をあげた。
「まさか。私に人間を診る権限はないわ。ただ、怪我をしたタケルくんに出くわした、といったほうがいいかしら?」
「出っくわしただけ——?」
「えぇ。でもそのとき、私はエンマ・アイとふたりきりになった……」
 ショートは目をふせると、勇気を奮い起こして、そのときの状況を思いだした。

「そしてそのときが、私の人生で一番で恐怖を感じた瞬間だったの——」




 もちろん私は焦っていた——。
 戦場から回収されてきたデミリアン三体が、もうじき到着するという報を受けて、メンテナンス・ドックのほうへ急いでいた。
 パイロットを同時に二人うしなうという悲報に、立っていらないほどの衝撃を受けていたが、悲しみに沈んでいる余裕はなかった。その情景を思い返せば、あらゆる感情が喉元に咳きあげてくる。だが、その感情に我を忘れていい場面ではない。
 私は戦況をリアルタイムでモニタリングしていたから、三体のデミリアンがどんな目にあったかを見ていたし、どれほどのダメージを負っているかも予想がついた。
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