いつか日本人(ぼく)が地球を救う

多比良栄一

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第三章 第四節 エンマ・アイ

第621話 あんた、ちょっと力を貸しなさい

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「ちょっと力を貸しなさい」
 そう言うなりアスカは中層のビルを踏み板にしておおきくジャンプした。アスカがその上空にいた魔法少女を『万布』のラケットでスマッシュするように振り抜いてきた。パーンという威勢のいい音とともに、潰れた魔法少女が飛んでくる。ユウキはあわててうしろを振り向くと、反射的にその魔法少女を打ち返していた。
 はね返した魔法少女のおおかたはあらぬ方向へ飛び散ったが、一体だけがすぐうしろに着地したセラ・ヴィーナスの胸、コックピット部分にべしゃっとはりついた。
「なぁにすンのよよぉ、ユウキ」
「いや、アスカくんこそ」
「『ドラッグ・テニス』じゃないんだから、打ち返す必要はないでしょう」
 そう言いながら胸についた血だらけの魔法少女を手のひらで払い落とした。
「あぁ、『ジェット・テニス』……というわけか」

 『ジェット・テニス』は立方体のコート内で空中浮遊装置を使って、縦横だけでなく上下でもボールを打ちあう競技だった。ボールそのものが360度カメラになっているため、観客は浮遊感あふれる映像にまさに酔いしれることになる。ドラッグのようにトリップすることがあったので、『ドラッグ・テニス』という通称を使われることのほうが多かった。
 だが競技は空間でのフットワークが勝負になる、スピード感あふれるスポーツで、魔法少女を叩き潰しあうような血なまぐさいものではない。

 ユウキはアスカが持ち場を離れて、自分勝手に最前線まできているのではないかと、ふと心配になって尋ねた。
「アスカくん。しんがりを任されていたのではないかね?」
「大丈夫。バットーがいるわ」
「いや、しかし……」
「しかしもへったくれもない。攻撃目標が変わったの」
「目標が変わった?」
 その言い方がよほど気に入らなかったらしく、アスカは強い口調でユウキの行動にけちをつけてきた。
「あんたねぇ。魔法少女駆除に夢中になりすぎて、本来の目的忘れちゃったンじゃないでしょうね」
「そんなことは……」
「あそこを見て」
 セラ・ヴィーナスが後方の一番高い天井部分を指さした。と同時に目の間のモニタにその部分のアップの映像が割り込んでくる。
「あそこに魔法少女がたまっている。あたしは攻撃してみたけど、見事に追い返された」
「追い返された?。ということは、追撃してこなかったというのかね?」
「ユウキ、あんた勘がいいわね。そうなのよ。おかしいでしょ」
「つまり、あそこにいる連中は、なにかを守っている……」
「そういうことになるでしょ!」
 ユウキはまじまじとその空間にたむろしている魔法少女の群れを見た。自分が叩き潰してきた『一群』と呼ばれる魔法少女ととくに変わった様子はない。
 ド派手なひらひらの衣装に腕や脚についたアクセサリー、そして安っぽい少女のお面——。
 特別な任務をおった魔法少女には見えない……。
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