いつか日本人(ぼく)が地球を救う

多比良栄一

文字の大きさ
649 / 1,035
第三章 第五節 エンマアイの記憶

第648話 サイトー、すみやかな排除を頼む

しおりを挟む
 サイトーは運転手の肩の横から前方にむけて銃を構えた。

 ひとり先頭を進む草薙はエア・バイクをAIにゆだねて攻撃に専念すべくマジカル・ソードを引き抜いていた。
 網膜デバイス上で、中央の後部シートに座っているヤマトの姿を映像で確認する。
「サイトーさん。こちらを気にしなくていいよ」
 ヤマトが背中越しに声をかけてくる。
「いつも草薙大佐に叱られているでしょ。注意を向けようとした方向の肩がわずかに動くって」
 ヤマトはバイクの後部シートについている背もたれに、深くからだを沈みこませていてリラックスした様子だった。この状況でひとにかまっていられる胆力に驚く。

 バイクは床から50センチほどを保ったまま、ゆっくりと前進していった。
 ひとつめの角にさしかかる。
『通路両側の部屋からは怪しいシグナルは検知されません』
 隊員のひとりが脳内通信で報告すると、草薙が噛んで含めるように言った。
『了解。だがAIの検査結果を鵜呑みにするな。魔法少女はAIを出し抜く力をもっている。参考程度にとどめろ』
 ひとつめの角を曲がろうとしたとき、草薙が身構えたのがわかった。計測装置に33メートルと表示された先に人影があった。
『サイトー、すみやかな排除を頼む』
 レーダースクリーンに見える人影をカメラで補足する。それは女性だった。うろたえた様子で、通路の両側の部屋のドアをまさぐるように探している。瞬時にAIが彼女の姿から名前と生体ID、隊員IDを表示する。
『助けてください。わたし取り残されてしまったんです。開けてください』
 脳内にその女性の声が飛び込んでくる。とてもか細い声、憐れなほど声が震えている。
 草薙のエア・バイクが通路の角を曲がる。すぐにサイトーのバイクが続く。
 通路の角から現れたエア・バイクに女性の目が見開かれた。なにが自分の身におきようとしているのか理解したようだった。
『わたし、ちがうんです。まちがえて……』
 女性は助けを乞うように、前によろよろと歩み出した。

 サイトーは引金をひいた。

 頭から赤い血の花がパッと咲いたかと思うと、血飛沫ちしぶき脳漿のうしょうの一部と一緒に後方へ飛び散った。女性のからだが一瞬棒立ちになり、そのままうしろにどうと倒れた。
『後方部隊は通り抜けるときに、死体を破壊するように』
 草薙が達し事項を告げると、頭が天井につくぎりぎりまでエア・バイクを上昇させて、女性の死体の上方の空間をとおりすぎた。それに続く前衛の2台とヤマトを乗せた中央のバイクもおなじように車体を上昇させる。
 サイトーは女性の上を通るとき、バイクのステップ越しに死体を見おろした。放った弾丸は眉間の中央を撃ち抜いていた。カッと見開かれた目は涙に濡れており、頬につたい落ちた涙の筋はまだ乾いていなかった。だがその目から完全に生気はうしなわれており、その目から涙が流れることがなくなったことはわかる。

『お嬢さん、すまんね。運が悪かったのさ』

 サイトーはこころのなかで呟いた。


 が、その瞬間、おんなの目がまたたいた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...