いつか日本人(ぼく)が地球を救う

多比良栄一

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第三章 第六節 ミリオンマーダラー

第724話 カツライ・ミサトはおもしろくなかった

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 カツライ・ミサトは自分が苦虫をかみつぶしたような顔をしている、とわかっていながら、その表情を崩せずにいた。

 おもしろくない——。

 今先ほどまでヤマト・タケルと草薙大佐、春日リン、そしてブライトが語りあっていたなかに、なにひとつことばを挟めず、共感の思いも伝えられなかったのが、腹立たしくてしかたがなかった。

 数ヶ月前にきたばかりの新参者の自分では踏みこめない領域なのはわかっている。
 たしかに戦闘中の経緯やデータ、経験値はすべて、彼らとおなじように共有している。これまでの戦いはデータ化され、ラピッド・ラーニングでからだに叩き込まれているのだから——
 『五感』はもちろん、表層的ではあるが、『想覚』や『霊覚』といった『七感』までもが、自分の戦いざまとして記憶され、おのれの経験値として脳に刻まれている。
 だが、それだけの洗礼を受けているにもかかわらず、ミサトはまったく彼らの話に触れることができなかった。
 ミサトはそのいらだちを背後の席にいるウルスラ総司令へぶつけた。

「カツエ、わたしたち、完全なのけ者あつかいね」
 だが、ウルスラからはすぐに返事はなかった。脳内への直接的なアクセスが拒否バンされているのかと思い、ウルスラが映るモニタ画面を探して覗き込んだ。

 ウルスラはこうべをたれて、腕組みしたまま沈思黙考しているようにみえた。どうやらさきほど、カミナ・アヤトの一件をエンマ・アイに暴露される形になって、すくなからず反省しているようだった。

 なぁに?。これじゃあ、ブライトと変わりゃあしないじゃないのぉ——

 ミサトはさらにいらだちを募らせた。
「カツエ。わたしたち、こんなんで大丈夫?。指揮を掌握できてないわよ」
 わたしたち、と言いながら、ほぼウルスラを責めるような当てこすりに、ウルスラはゆっくりと顔をあげた。
「昔話につきあえなかったからと言って、指揮をふるえてないというのは考えすぎだろう。われわれはこの亜獣がはじめて対戦する亜獣なのだ。百戦錬磨の彼らとは経験値がちがうのだ」
「はん、わたしたちだって、彼らが対戦した亜戦のデータや経験値は、脳に刻まれてるはずでしょ。なのになに? エンマ・アイやタケルの個人的な話は、まったく記憶にないのよ。これってどういうデータ解析なの? こっちは『ラピッド・ラーニング』で他人の記憶を無理やり、たたきこまれてンのよ」
「いたし方あるまい。しょせん過去の司令官たちの戦いの記憶だ。『五感』以外の『感覚』まで落とし込まれているとはいえ、必要なデータ以外は削ぎ落とされている。ほんとうに経験したものとはやはりちがうのだよ。ミサトもそれはわかっているだろう」

「なにがちがうっていうのよぉ?」
 ミサトはすねたような声をあげた。
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