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第四章 第三節 Z.P.G.(25世紀のルール)
第967話 父のことは苦手だった
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父のことは苦手だった——
それは前から変わっていない。
だが父も自分の娘のことを苦手に思っているはずだった。
アスカが最後に父を会話を交わしたのは、兄リョウマが亜獣と化して死んだときだった。軍の葬儀に合葬されることがなかったリョウマは、内輪でささやかな式をおこなったが、それとは別に地元で身内だけで葬儀が行われた。
アスカはその式に『素体』を通して参加していた。
葬式自体が珍しかったこともあり、父親の知りあい等が積極的に参加した式だったが、アスカはほとんど父と会話を交わすことがなかった。当たり障りのないねぎらいのことばを、数回かわしただけだったように記憶している。
そのとき感じた、息が詰まるような居心地のわるさにアスカは、自分から父に連絡をとることはないだろう、と薄ぼんやりと確信していた。
だが母のことを知りたい、という思いが日に日につのりはじめてくると、行動を起こさねばならないという強迫観念のほうがまさった。
「生身のからだで来るとは思わなかったよ。カオリ」
会いに行くと父はおどろきを素直に口にした。
「まあね。最近、ゴーストとか素体を多用しすぎて嫌になったから、たまには自分の足ででかけたくなったの」
アスカは自分の背後に距離をおいて立っている、バットーと数人の部下のほうを目で指し示した。
「おかげで警護の連中がぞろぞろとついてきてるけどね」
「ふむ、それだけのVIP待遇になった、ということか」
「大袈裟なだけよ。地球を何回か救っただけなんだから」
父は目をほそめて笑った。
「そうか。で、なんの用かな」
アスカは父のやわらかい物腰におどろきを隠せなかった。自分の知っている父親は、いつも上から目線で、ひとを押さえつけるような物言いしかできない人物だったからだ。
「お母さんのこと……今、どこにいてなにをしているか知りたいの」
父はとっさに目を伏せようとした。が、瞬時に思い直したのか、目をあげるとアスカの瞳を覗き込むようにして凝視した。そして、その視線を背後のバトーたちのほうへむけてから言った。
「カオリ、はいりなさい」
------------------------------------------------------------
「なぜ、母さんのことを聞きたいのかね」
龍・響は娘に問いかけながら、ソファに腰を沈めた。
「みっともない話だけど、『0PG法』のことをいまさら知ったの。同期のパイロットの父親が突然見つかったせいでね」
「ああ、そうか……『0PG法』か。あれはチップ埋込者』にしか知らされないからな。おまえが知らずにいたのも無理もない」
「自分が生きている理由を知らされないなんて信じられない」
「ひとの命を削ってまでして、この世に生を受けたことを、負い目に感じて生きて欲しくなかったからだよ」
「母さんはどこ? 今なにをしているの? いえ、それより、なぜ父さんは寿命を削られてないの?」
それは前から変わっていない。
だが父も自分の娘のことを苦手に思っているはずだった。
アスカが最後に父を会話を交わしたのは、兄リョウマが亜獣と化して死んだときだった。軍の葬儀に合葬されることがなかったリョウマは、内輪でささやかな式をおこなったが、それとは別に地元で身内だけで葬儀が行われた。
アスカはその式に『素体』を通して参加していた。
葬式自体が珍しかったこともあり、父親の知りあい等が積極的に参加した式だったが、アスカはほとんど父と会話を交わすことがなかった。当たり障りのないねぎらいのことばを、数回かわしただけだったように記憶している。
そのとき感じた、息が詰まるような居心地のわるさにアスカは、自分から父に連絡をとることはないだろう、と薄ぼんやりと確信していた。
だが母のことを知りたい、という思いが日に日につのりはじめてくると、行動を起こさねばならないという強迫観念のほうがまさった。
「生身のからだで来るとは思わなかったよ。カオリ」
会いに行くと父はおどろきを素直に口にした。
「まあね。最近、ゴーストとか素体を多用しすぎて嫌になったから、たまには自分の足ででかけたくなったの」
アスカは自分の背後に距離をおいて立っている、バットーと数人の部下のほうを目で指し示した。
「おかげで警護の連中がぞろぞろとついてきてるけどね」
「ふむ、それだけのVIP待遇になった、ということか」
「大袈裟なだけよ。地球を何回か救っただけなんだから」
父は目をほそめて笑った。
「そうか。で、なんの用かな」
アスカは父のやわらかい物腰におどろきを隠せなかった。自分の知っている父親は、いつも上から目線で、ひとを押さえつけるような物言いしかできない人物だったからだ。
「お母さんのこと……今、どこにいてなにをしているか知りたいの」
父はとっさに目を伏せようとした。が、瞬時に思い直したのか、目をあげるとアスカの瞳を覗き込むようにして凝視した。そして、その視線を背後のバトーたちのほうへむけてから言った。
「カオリ、はいりなさい」
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「なぜ、母さんのことを聞きたいのかね」
龍・響は娘に問いかけながら、ソファに腰を沈めた。
「みっともない話だけど、『0PG法』のことをいまさら知ったの。同期のパイロットの父親が突然見つかったせいでね」
「ああ、そうか……『0PG法』か。あれはチップ埋込者』にしか知らされないからな。おまえが知らずにいたのも無理もない」
「自分が生きている理由を知らされないなんて信じられない」
「ひとの命を削ってまでして、この世に生を受けたことを、負い目に感じて生きて欲しくなかったからだよ」
「母さんはどこ? 今なにをしているの? いえ、それより、なぜ父さんは寿命を削られてないの?」
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