382 / 935
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
第30話 コンスタンティノープル陥落3
しおりを挟む4月20日——。
ジェノバ海軍がボスポラス海峡に到着する。その数、四隻。しかもそのうちの一隻は食料や資材を積んだ輸送船だった。
140隻の船で待ち構えていた指揮官バルトル・スレイマンは手漕ぎボートであるガレー船で、ジェノバの軍船に近づいていく。だが、ジェノバの船は最新の大型帆船。手漕ぎで追いつけるわけがなかった。
だが、ここでメフメトに運が傾く。
金角湾を目の前にして、風がやんだのだ。
火のついた矢を帆船に射掛けるオスマン軍。ジェノバ軍は燃え上がる船の消化におわれて、ガレー船の接近を許してしまう。だが、いざ船に乗り込もうとしたとき、バルトル・スレイマンは大型帆船の甲板までの高さが命とりになると気づかされた。
下から網や紐をつたってあがっていく兵士は、甲板から突き下ろされる槍の餌食になっていった。あとすこしで帆船を沈められるところまで迫りながら、次々と兵士が海へと突き落とされていく
そのとき、マルマラ海の気まぐれな風が吹きはじめた。
メフメトの運もここまでだった。
ジェノバの帆船は追い風を受け、痛手を被りながらも、四隻とも無事に金角湾に逃げ込むことに成功した。
援軍の無事を祈っていたビザンチン帝国のひとびとの歓声が、都市中であがった。
だがその日、メフメトは同時に地底からの攻撃をもしかけていた。
セルビアの銀山から連れてきた炭坑夫たちに、自陣からトンネルを掘らせていたのだ。
メフメトが『工作員』と呼んでいた炭坑夫たちは、壁の下までトンネルを通し、地下から難攻不落とされた壁を崩落させるのが任務だった。
そしてこの日、その工作員のトンネルは首都の地下にまで達していた。
だが、23回にもわたる攻略を受けてきたビザンチン帝国は、それをも見越していた。
イギリス人ジョン・グラント率いる部隊が敵の行く先を調査し、その先に穴を掘って待ち受けていたのだ。
その方法は、水をはった盥を地面において、水面の動きで敵の位置を知るという原始的なものだったが、効果は抜群だった。
グラントは西側から掘られてきた穴のなかに、『ギリシア火薬』を流し込んで火をつけた。この火薬は火薬に松脂をまぜたもので、即座に発火し長時間燃え続ける上、粘着性があるため、一度着火すると容易にははらえず、生きたままその身を焼き尽くした。
古代版のナパーム弾のような凶悪な火薬だった。
この夜、メフメトにもたらされたのは、最悪なふたつの結果だった。
援軍をまんまと入港させ、トンネルのなかで何十人もの炭坑夫が焼け死んだ——。
メフメトは完全に追い詰められていた。
さらにイタリアのヴェネチアからさらに強大な援軍がくると噂されていた。40隻もの軍船が組織されて一ヶ月後には到着するというのだ。
兵士の士気はおおきく削がれて、敗戦濃厚という空気があった。
ハリル・パシャはビザンチン帝国内の有力者でギリシア人のノタラス公と、秘密裏に和平交渉を模索して、この地からの撤退を具体化しようとしていた。だが若きスルタンは内外に己の力を印象づける勝利が、どうしても欲しかった。
その追い詰められた苦悩が、とんでもない閃きをもたらした。
天才的とも狂人的とも思える、実現不可能ともいえる無謀な作戦だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる