異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏

文字の大きさ
33 / 36

第33話

しおりを挟む
渋谷の中心部へ足を進めると、ビル群やショッピングエリアが目に入った。

「ここが日本で一番栄えている場所よ」 

私は説明する。

「こんなにたくさんの人が……」 

クルトが驚いた表情で街を見渡している。
確かに渋谷の駅周辺は非常に混み合っており、賑わいを見せていた。
行き交う人々の多さに圧倒されるクルトだったが、次第にその環境に慣れていった。

私たちは複合施設に入ってみることに決めた。
高層ビルの内部にはショップや飲食店などが多数あり、その規模感にクルトは感嘆した様子だ。 

「これが地球の都市文化っていうやつか」

と呟きながら店内を歩いている。
エレベーターに向かい、ボタンを押すとすぐに扉が開く。
中に乗り込むと、液晶パネルに表示された各階の案内が映し出されていた。
私は9階のボタンを押し、扉が閉まる。

「本当に便利なものだな……」

と感心したようにクルトが言い、私は微笑んで答えた。

「クルトもすぐ慣れるわよ。ここで色々見て回りましょう」

数秒後に到着音が鳴り響き、扉が開く。
すると、そこには幅広い商品が陳列された売り場が広がっていた。
ショーケースには特殊な素材でできた武器や防具、アクセサリーなどが並んでいる。

「すごい量だな……」

クルトは店内を見回しながら言った。
私も少し驚いた。
この店舗の充実度は予想以上だ。
商品をひとつひとつチェックしていくと、確かに品質は悪くないものの、見た目が派手だったり奇抜な形状をしているものが多かった。

「なるほど」

と私は内心で考えながら商品を手に取ってみる。

「クルト、これなんかどう思う?」

私はひとつの武器を取り上げた。

「刃が波打っていて斬撃が通りやすいんじゃないかと思うんだけど」

クルトがそれを受け取り、慎重に手触りを確かめた。 

「なるほど……しかし、こういう形状だと扱いにくそうだな」 

彼は眉をひそめながら言った。
周囲を見回すと、他にも派手な色彩を持つ防具や奇妙なデザインの盾などが多く陳列されている。
確かに視覚的なインパクトはあるが、実用性に関しては疑問符が浮かぶものばかりだ。

「まぁ、試作品や動画映え用みたいな感じでしょうね」

と私は苦笑いしながら答える。 

「動画映え? なんだそれ?」

とクルトは首を傾げる。

「例えば昨日のリアが戦ってたみたいな映像を配信する時に、視聴者の印象に残るように工夫してるってこと」

「あぁ、なるほど。そういう意味か」

クルトは納得したように頷いた。
その後も店舗内の商品を一通り確認していく。実用性が高いものはあるがラキナに比べると品質的にはまだまだ改善の余地がある品ばかりだった。
結局、特に購入意欲をそそられるものはなく、店を後にする。

「今のところはこんな感じか」

店を出ると、クルトが溜息混じりに言った。

「確かに実用性に欠ける部分も多いし、デザイン先行な印象もあるわね」

私は同意しつつ、会話を続ける。

「これからもっと良いお店を見つけられるといいわね」

私たちはお店を離れ、お腹も減ってきたので昼食を食べに行く事にした。

クルトにどんなものを食べたいか聞くと、

「ラキナには無いような物」

と答えられ、日本では有名なものだと寿司を勧めてみることにした。

「寿司っていう魚をそのまま切って、ご飯の上に乗せたものだけど大丈夫?」

クルトはしばらく考え込んでから返事をする。

「魚……それを生で食べるのか。ラキナでは加熱調理したものしか食べたことがないので不安はあるが挑戦してみるか」

そう言われると私は微笑み、

「じゃあ行ってみましょう!」

と元気よく声をかける。
店に着くと席に座り、私はいくつかのお皿を選ぶ。
クルトは少し緊張した様子だったが、一口食べると目を丸くした。

「おいしい……!思ったよりずっと美味しい!」

彼がそう叫び、どんどん箸が進む様子に思わず笑ってしまう。
私も小さく笑いながら、一緒に楽しい時間を過ごす。

「そうでしょう?寿司はね、新鮮なネタを酢飯に乗せて食べるものだから、ラキナの料理とはまた違った旨味があるのよ」

私は解説しながらも、自然と箸が進む。
しばらくしてクルトがお酒はあるか聞いてきたので注文する。
届いたグラスビールを飲みながら、満足そうに寿司を堪能している。
嬉しそうに食べる姿を見て安心する。
彼にとっては未知の食体験だっただろうが、日本独特の味わいが気に入ったようだ。

「喜んでくれて嬉しいわ。まだまだ他にも美味しいものはたくさんあるから、今後ゆっくり教えてあげるわね」

「ああ、ぜひ教えてほしい。こんな素晴らしい経験ができるとは思わなかったからな」

クルトの言葉に私も笑顔になる。
最後の一口まで美味しくいただいたところで、会計を済ませることにした。
店員さんに伝票を渡して探索者カードで支払いをする。

「さて、行きましょうか」

そう言って出口へ向かうと、後ろから追いかけてきたクルトが不思議そうな顔でこちらを見つめている。

「支払いは終わったのか?」

不思議そうな顔で尋ねる彼に向けて説明をする。
ギルドで支給される探索者カードの便利さについて教えてあげた。

「日本の銀行にお金を預けると探索者カードで支払いが出来るのよ。そのあたりはクルトが日本に慣れてきたら教えてあげるわ」

「なるほど、それは便利そうだな」

クルトは感心した様子で言った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

処理中です...