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第2章 魔術師の試練
8. 高貴なる血
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「――血!?そんなもの採ってどうするんですか」
「きみは素性を明かしてくれないけど、私にはお見通しさ」
帝国の皇子だということは、面倒ごとを避けるために伏せている。誰にも明かさない、とウィルと約束している。
「……なんのことですか」
「きみにはとても高貴な血が流れている。高貴と言うか、濃い血だね。それは首長の一族や王族の特徴のひとつだ」
「……っ」
「あははは…!顔色が変わったよ。ダメだねぇ…そんなんじゃ、隠し事なんてひとつもできやしないよ」
「……生まれなんて関係ないです。俺はこれからは、冒険者として生きていくつもりですから」
「ふふ、きみにもいろいろと事情があるみたいだね。それで、きみの血をもらってどうするのかって話だけど…」
さっきから、魔術師の視線を強く感じていた。真っ赤な舌が自らの唇を一舐めする動きが、いやに目についた。
「濃い血は強い魔力を秘めているからね。いろいろと利用できるのさ」
「……例えば?」
「魔法の道具や魔法薬を作ったり…いろいろさ」
「俺の血を悪用するつもりですか?」
「悪用?そんなことするもんか。きみには私が、邪悪な野望を持つ悪の魔術師に見えるのかい?至って健全な、ただの隠居魔術師さ」
健全というのは、どうだろう……そもそも自分で言うことか?
「そんなに警戒しないでくれ。再来月、帝都の魔導院で魔術研究会があってね。実は今回、私が研究発表する番のだが、何ひとつ用意していなくて……そこに現れたのがきみだよ!」
「じゃあ、最初から……」
「そう怒らないでくれよ。きみは少しの痛みを我慢するだけで、新しい魔法を覚えることができる。私はきみの血をほんの少しいただいて、素晴らしい研究ができる。どちらも得をする、いい取引だろう?」
帝都の魔導院には、何度か出入りしたことがある。と言っても、皇族としての権力を利用して、見学させてもらっただけだけれど。
俺のような駆け出し魔法使いにとって、魔導院の魔術研究会で発表するなんて、雲の上のような世界の話だ。いつか俺にも、最高峰の魔術師たちを前にして登壇する日が、来るのだろうか――
「……わかりました。そういうことなら――」
魔術師の研究室に案内され、豪奢な革張りの椅子に座るよう、促される。
「楽にしてくれたまえ」
いやムリです……前世から注射は大の苦手だった。普通に痛い。人より痛みに弱かったのかもしれない。
「どうやって採血するんですか?」
この世界に注射はないはずだが、血を取る魔法はたしかあったはずだ。
「かんたんだよ……ほら」
首筋に顔を寄せられた――と気づいたときには、首筋にちくりとした痛みを感じていた。
「な……っ!」
ヤツの身のこなしは尋常でないほど速く、俺はあまりに無防備だった。
魔術師は俺に覆いかぶさり、俺の首筋に噛みついていた。
「きみは素性を明かしてくれないけど、私にはお見通しさ」
帝国の皇子だということは、面倒ごとを避けるために伏せている。誰にも明かさない、とウィルと約束している。
「……なんのことですか」
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「……っ」
「あははは…!顔色が変わったよ。ダメだねぇ…そんなんじゃ、隠し事なんてひとつもできやしないよ」
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さっきから、魔術師の視線を強く感じていた。真っ赤な舌が自らの唇を一舐めする動きが、いやに目についた。
「濃い血は強い魔力を秘めているからね。いろいろと利用できるのさ」
「……例えば?」
「魔法の道具や魔法薬を作ったり…いろいろさ」
「俺の血を悪用するつもりですか?」
「悪用?そんなことするもんか。きみには私が、邪悪な野望を持つ悪の魔術師に見えるのかい?至って健全な、ただの隠居魔術師さ」
健全というのは、どうだろう……そもそも自分で言うことか?
「そんなに警戒しないでくれ。再来月、帝都の魔導院で魔術研究会があってね。実は今回、私が研究発表する番のだが、何ひとつ用意していなくて……そこに現れたのがきみだよ!」
「じゃあ、最初から……」
「そう怒らないでくれよ。きみは少しの痛みを我慢するだけで、新しい魔法を覚えることができる。私はきみの血をほんの少しいただいて、素晴らしい研究ができる。どちらも得をする、いい取引だろう?」
帝都の魔導院には、何度か出入りしたことがある。と言っても、皇族としての権力を利用して、見学させてもらっただけだけれど。
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「……わかりました。そういうことなら――」
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「どうやって採血するんですか?」
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「な……っ!」
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