某国の皇子、冒険者となる

くー

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第6章 あなたは私の宝物

10. 脱出

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「ノアは一番うしろに」
「ごめん…よろしく」

やっぱり、自分の非力さが歯がゆい。
魔法が使えれば……
手首に嵌められた魔力封じの腕輪が邪魔で仕方なかった。

三人一列になって、長い螺旋階段を下っている途中――


ドオオオオオン!!

遠くで何かが爆発する音――城壁が破壊されたのだろうか……。それは凄まじい衝撃の余波を以って塔を揺らした。

この魔力は――

まちがいない、兄上の……

「始まりましたか……」
「階段はあと少しのはずだ……急ごう!」

長い階段を下りきった場所には衛兵がいると思われたが、予想に反して誰もいなかった。
宮殿の回廊には人の行き来する気配があった。慌ただしい靴音や人の声、それから武器、防具などの金属が人の動きに合わせて鳴る音が、どこかから聞こえてきていた。

「ニケはどこにいるんだろう」
「道案内は私に任せてください。ニケの研究室に行ってみましょう」
レンジャーのエトワールは方向感覚に優れているので、こんなときとても頼りになる。

研究室の扉には鍵がかかっていたが、簡単な作りだったため、開錠魔法で開けることができたのだった。

部屋にはいくつかの明かりが付いていた。

「ニケ?いるの?」
「ノア!?」
「――ウィル!」

棚の陰から現れたのは、ニケではなく帝都にいるはずのウィルだった。

ザハブルハーム風の白い外套を羽織ったウィルが、足音に配慮しつつも足早にこちらへと歩み寄ってきた。そして、強い力で抱きしめられた。

「く…苦しいよ、ウィル……」
「ノア!無事か!?何かひどいことされなかった!?」
俺にケガがないか、確認するウィル。心配性は相変わらずだ。

「うん、何もされてない。大丈夫だったよ」
「よかったほんとうに……帝国と王国が戦争するって知ったときから、君のことが心配で心配で……気が気じゃなかった」
「ウィル……心配かけてごめん」
「ノアが謝ることなんてないよ。それよりも、すぐにここを出よう。俺は海を渡って来たから港に船を停泊させてるけど……この状況だと、グラヴィス陛下に保護してもらったほうがいいのか?」
「船!?」

ニケを王宮から連れ出し、港に行くところまでしか計画はなかった。なんとかして船を現地調達するしかないと思っていたけれど、ウィルのおかげで厄介な問題の一つは解決だ。

「助かります、ウィル」
「エトワール、ジン!きみたちも無事みたいだな!よかった」
「俺らもさっきからずっといたんだけど。ノアしか目に入ってなかったのかい……」
「致し方ないことですよ……」
「ウィル、港に向かう前に、ニケを探さないと……」
「ニケ……アイツがきみを?」
「……ごめん、その話はあとでちゃんと話すから、今は……」
「……わかってるよ、ノア。きみは――」

ドオオオオオン!!

爆発音が鳴り響いた。螺旋階段の途中で聞いた音よりずっと近く、大きい。
市街地の中にある王宮を守る城壁が、魔法で打ち砕かれた音に違いない。

「ニケ……?」
ドクン、と胸が脈打つ。悪い予感は、胸の内で次第に大きくなっている……


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