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第8章 呪われた世界
10. 譲れない場所
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「……」
ルクスはうつむいたまま、動かない。
兄上は彼のそばまで歩み寄り、腰を屈めて目線を合わせた。
「どうだ――この話を聞けば、困っているノアを助けるために、おまえのからだにノアの魂を受け入れてやろうという気になるだろう?」
「……ぼくが反対しても、兄さまは自分のやりたいようにやるんだろ……」
ルクスは今までになく険しい顔を兄上に向けている。そんなルクスを見るのは初めてだった。
兄上も驚いているようだ。
「そ…そんなことはないぞ!ルクス。おまえとノアは私にとって、どちらもかけがえのないほどに大切な存在なんだ。不便はあるだろうが、おまえたちにはこれからも共に生きてほしい……それが私の望みだ」
しばらく沈黙が続いた後、ルクスが尋ねた。
「少し……ノアとふたりで話をしたいんだけれど……」
「ああ――もちろんいいとも。ノアも大丈夫か?」
二人に了承の頷きを返すと、兄上たちは俺とルクスを残して船へ乗り込んで行った。
不思議なかんじだなあ……
かつての自分とまったく同じ容姿――
まるで、鏡の前に立っているかのような感覚だ……
ルクスは、遠くに見える水平線を眺めながら話し始めた。
「ねえ、ノア……ぼくたちこれからふたりひとつのからだを共有して生きていくなんて……そんなこと、できると思う?」
「……やってみないと、わからないよ」
「ノアはうそつきだ。わかってるくせに……。ぼくもわかってる。絶対に、うまくいきっこない!」
「……そうは言っても、他にどうしろって言うんだ?兄上のためにも、万が一うまくいくかもしれない可能性に賭けてるべきじゃないか?」
「兄さまはぼくのだ!ぼくだけの兄さまなんだ!!」
兄上の名前を出した途端、ルクスは激昂した。
「ル……ルクス……俺だって……」
「ノアなんて!ノアなんて他にも好きな人がいるじゃない!ウィル、エトワール、ジン、ニケ!みんなきみのことが好きだし、きみだってそうだろ!でも、ぼくには兄さましかいない。それなのに、ノアはぼくから兄さまを取ろうとしてるんだ!」
「きみから兄上を取る気なんてないよ。兄上は、俺もきみもどちらもかけがえのない存在だって言ってたじゃないか。いったい、何がそんなに不満なんだ?」
「……ぼくたちは、一緒になんか生きられない。僕は知っているんだから。きみのいいところも、いやなところも、ぜんぶ――」
ルクスは俺の意見を聞く耳を持ってくれない。このままじゃいつまでも平行線だ。
「ノアにはわからないよ……ぼくがどれほど、兄さまを愛しているか……それなのに、兄さまはぼくが兄さまを愛するほど、ぼくを愛してくれなかった。どれだけショックか、ノアにはわからないだろうね……もう、昔みたいに兄さまはぼくだけのものじゃないだなんて……」
「ルクスにだって、俺の気持ちはわからない。サナトリオルムに病気を患った人のからだに入れられて、俺は学んだ。健康なことがどれくらい素晴らしいことかを……だから、きみと俺が逆の立場だったら、俺はきみを必ず助けるよ。だから……」
ルクスはうつむいたまま、動かない。
兄上は彼のそばまで歩み寄り、腰を屈めて目線を合わせた。
「どうだ――この話を聞けば、困っているノアを助けるために、おまえのからだにノアの魂を受け入れてやろうという気になるだろう?」
「……ぼくが反対しても、兄さまは自分のやりたいようにやるんだろ……」
ルクスは今までになく険しい顔を兄上に向けている。そんなルクスを見るのは初めてだった。
兄上も驚いているようだ。
「そ…そんなことはないぞ!ルクス。おまえとノアは私にとって、どちらもかけがえのないほどに大切な存在なんだ。不便はあるだろうが、おまえたちにはこれからも共に生きてほしい……それが私の望みだ」
しばらく沈黙が続いた後、ルクスが尋ねた。
「少し……ノアとふたりで話をしたいんだけれど……」
「ああ――もちろんいいとも。ノアも大丈夫か?」
二人に了承の頷きを返すと、兄上たちは俺とルクスを残して船へ乗り込んで行った。
不思議なかんじだなあ……
かつての自分とまったく同じ容姿――
まるで、鏡の前に立っているかのような感覚だ……
ルクスは、遠くに見える水平線を眺めながら話し始めた。
「ねえ、ノア……ぼくたちこれからふたりひとつのからだを共有して生きていくなんて……そんなこと、できると思う?」
「……やってみないと、わからないよ」
「ノアはうそつきだ。わかってるくせに……。ぼくもわかってる。絶対に、うまくいきっこない!」
「……そうは言っても、他にどうしろって言うんだ?兄上のためにも、万が一うまくいくかもしれない可能性に賭けてるべきじゃないか?」
「兄さまはぼくのだ!ぼくだけの兄さまなんだ!!」
兄上の名前を出した途端、ルクスは激昂した。
「ル……ルクス……俺だって……」
「ノアなんて!ノアなんて他にも好きな人がいるじゃない!ウィル、エトワール、ジン、ニケ!みんなきみのことが好きだし、きみだってそうだろ!でも、ぼくには兄さましかいない。それなのに、ノアはぼくから兄さまを取ろうとしてるんだ!」
「きみから兄上を取る気なんてないよ。兄上は、俺もきみもどちらもかけがえのない存在だって言ってたじゃないか。いったい、何がそんなに不満なんだ?」
「……ぼくたちは、一緒になんか生きられない。僕は知っているんだから。きみのいいところも、いやなところも、ぜんぶ――」
ルクスは俺の意見を聞く耳を持ってくれない。このままじゃいつまでも平行線だ。
「ノアにはわからないよ……ぼくがどれほど、兄さまを愛しているか……それなのに、兄さまはぼくが兄さまを愛するほど、ぼくを愛してくれなかった。どれだけショックか、ノアにはわからないだろうね……もう、昔みたいに兄さまはぼくだけのものじゃないだなんて……」
「ルクスにだって、俺の気持ちはわからない。サナトリオルムに病気を患った人のからだに入れられて、俺は学んだ。健康なことがどれくらい素晴らしいことかを……だから、きみと俺が逆の立場だったら、俺はきみを必ず助けるよ。だから……」
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