某国の皇子、冒険者となる

くー

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最終章 死と光

最終話 これから

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「ふぎゃあ、ふぎゃあ――」
よしよし、と兄上は赤子のルクスを懸命にあやしている。
「いい子だねえ、ルクス。どうしたのかな?」

ルクスをみつめる兄上の目は、優しげで――そこには、満ち溢れるほどの愛があった。

「ルクスがお腹を空かせているようだ。私は城に帰らねば。すまない、ノア――」
「あ、はい……お気をつけて」

兄上は足早に階段を降り、店を出て行ってしまった。

「……あの赤ん坊、今のところは大丈夫そうだな……」
「うん……でも、いつ何が起こるかわからないけれどね……」

サナトリオルムが消滅した場所に残された、ルクスの幼い頃にそっくりな赤子……兄上は目に入れても痛くないという可愛がりようだ。突然現れた赤ん坊の噂は城内はおろか帝都中に瞬く間に広まった。兄上は側近に尋ねられても詳しい説明をしなかったが、赤い髪と青い目を持ち兄上が溺愛する赤子を、周囲は言われずとも察したのだった。
赤子――ルクスは兄上の落とし子であると城の者たちには認識されていた。

「いったんこうすると決めた兄上は誰にも止められない……俺たちはただ、ルクスが何事もなく無事に成長するのを祈ることししかできないよ」
「うーん……ラウルス殿の苦悩する姿が目に浮かぶな……」
「ラウルス……」
そう考えると、俺の護衛とは言え帝都から離れられるのはラウルスにとって、悪い話じゃない……か?




五日後――

よく晴れた日。凛とした早朝の空気の中、俺は馬に乗って街道を進んでいた。
秋から冬に移り変わる季節の冷たい風が頬に吹きつけるが、暖かな外套に身を包んでいるおかげで。心地いいくらいだ。
隣にはラウルスの愛馬が馬首を並べている。服装は騎士の甲冑ではなく旅装だった。冒険者だと名乗っても少しも違和感のない装束だ。

この旅では、よほどのことが起きない限りは転移魔法は使わないと決めていた。

一度訪れたことのある場所ならどんなところへでも行ける魔法は便利すぎるけれども、旅の醍醐味をが失われるというか……味気なくなるというか……

「ノア、よろしくお願いします」
「ラウルス……ごめんなさい。忙しいのに付き合わせちゃって……」
「いいえ、むしろ感謝しております。今日まで働き詰めでしたので、ゆっくりと骨休めをさせていただけるのはありがたいです。貴方と旅をするのも楽しみですし」
「ほんと……?よかったあ」

馬の蹄が地面を打つ音が小気味よく響く。
新鮮な朝の空気を、深く吸う。

「二ヶ月だって。あっという間だろうねえ……」
「ええ、そうでしょうね」
「俺はもっと、旅を続けたいよ」
「それは……」
「わかってる。ラウルスを困らせる気はないんだ。一人で旅を続けるつもり」
「グラヴィスが許すかどうか……」
「……厳しいかな」

はあ――……
思っていたよりも、重いため息を吐いてしまった。

「連れ戻しに来ると思う?」
「ええ。今はルクスが手のかかる時期ですが……」
「ルクス……!俺に構ってるヒマなんてないんじゃ……」
「甘いですね、ノア」
「うう……」
「わかることはひとつ」
「ん?」

「より強い意志を持つ者が、望みを叶える」

ラウルスは穏やかに笑んでいた。

「ああ……そうだったなあ――」




やりたいことが、数えきれないほどたくさんある。

旅に出て色々なものを見る。それから――

ギルドの依頼をこなして、冒険者としての名を上げたい。
今度こそは、自分自身の実力で――

魔法の腕前をもっと上達させたい。クラフターは職人級を目指す。

それから、帝都でウィルとエトワールと語り合った……仲間たちと共同でカフェを開く……なんて、絶対面白そうじゃないか――





光満ちるこの世界を自由に、心赴くままに歩いていく。胸に夢と希望を抱いて――

これから先も、ずっと――





某国の皇子、冒険者となる・完




*

拙いお話をお読みいただき、ありがとうございました!
またどこかでお会いしましょう!

くー
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