ぶらり京都紀行 冬の京料理と祇園スイーツ

第一巻

　師走に入ったある日、グルメライターの立花悠人がたん熊北店本店にやって来た。取材の為である。
「こんにちは」悠人の元気な声である。
「いらっしゃい。たん熊北店本店の店主の息子•熊木実（28歳）が言った。実と悠人は幼馴染である。それぞれ人生の出発点は違う。悠人はグルメライターという職業についた。自分の能力次第でグルメ業界での仕上がはることが出来る。一方、実は悠人とは違い厳しい師弟関係のある料理の世界に足を踏み入れた。実の生まれた処がたん熊であった」
父親の熊木力蔵は以前、たん熊で働いていた。板前の修行をするたのであった。
「今日どんな用事できたんだい？」実が言った。
「今日はたん熊さんの看板メニューを取材させてほしいと思いまして」
「私どもの看板メニューですか？
「そうです。教えてください」
「いいでしょう、お教えします」
実が言った。

　　　看板メニュー

　「まず、最初は私どもの看板メニューです」

　|会席料理】
【前菜・造り・吸物・焼物・焚合・蒸物・御飯・香の物・止椀・水物・菓子・抹茶】
料理の値段は31,625円である。

【前菜】
菊菜白和え　雲子
生雲丹ぽん酢　かぼす釜　いくら　鱒
鯖小袖寿司　あんぺい　海老　青唐　床節
渋皮栗甘露煮　松風　珍味
【造り】
天然白身薄造り　剣先烏賊　中トロ　あしらい

【吸物】　

丸鍋　又は　甘鯛清汁

【焼物】

魴味噌味噌
銀杏松葉　

【 焚合たきわあせ
海老芋おかき粉揚げ
湯葉　菊菜　合鴨　吉野煮

【蒸物】
汲み上げ蒸　鼈甲餡べっこうあん
鰻　百合根　山葵　　　

【御飯】
甘鯛　生姜御飯
三つ葉

【香の物】
三種盛
柴漬　昆布　千枚漬

【止椀とめわん】
赤出汁
豆腐　三つ葉　焼茄子

【水物】
フルーツ盛り合わせ
アイスクリーム
【菓子・抹茶】
きんとん・長久の白

　これが特別メニューだよ」　「じゃあ、今日は俺がオーダーするよ」
「悠人、この懐石料理「梅」でいいのか？」
「ああ、いいよ。取材経費ど落とせるから」
「分かった。最高に美味料理にするからな」
そういうと調理を始めた。なんといってもたん熊北店本店のカウンターで食べる懐石料理は、目の前で料理人が調理するのを鑑賞する楽しみがある。そのお刺身を包丁で捌く作業から天ぷらを揚げる作業、また、魚を焼く作業、このような作業を鑑賞出来るのは、グルメライターとしては、口では言い表すことが出来ない醍醐味である。