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第13話『英雄の帰還と、甘すぎるご褒美』
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王都の喧騒を離れ、私たちの馬車は北へとひた走りました。 車窓の景色は、整然としすぎた石造りの街並みから、次第に荒々しくも雄大な自然へと移ろいでいきます。
冷たい風が頬を撫でますが、それは王都の淀んだ空気とは違い、清涼な水のようでした。 雪を冠した山々が見えてくる頃には、私の心はすっかり解きほぐされていました。
「……帰ってきた、という感じがします」
私が呟くと、向かいに座っていたジークハルト様が、読みかけの書類を置いて微笑みました。
「そうだな。やはり俺たちには、この冷たくて静かな土地が合っている」
彼はリラックスした様子で、窓の外を流れる針葉樹の森を眺めています。 王都では常に張り詰めていた肩の力が抜け、その表情は穏やかそのものでした。 もちろん、仮面は外しています。 この馬車の中は、私たちだけの聖域ですから。
「到着まであと少しだ。……みんな、首を長くして待っているぞ」
「ふふ、お土産をたくさん買いましたから、喜んでくれるといいのですが」
今回の王都行きで、私たちは大量の「戦利品」を持ち帰っていました。 それは、伯爵家から回収した(というか、慰謝料として徴収した)宝石や美術品だけではありません。 王都の市場で買い付けた珍しい香辛料や、最新の調理器具、そして使用人たちへのプレゼントなど、馬車二台分にもなる荷物が後続しています。
「俺としては、お前が無事に帰ってくるだけで、あいつらにとっては最高の土産だと思うがな」
ジークハルト様が、いたずらっぽく片目を閉じました。 その言葉が真実であることを、私たちは城に到着した瞬間に思い知ることになります。
◇
「見えたぞ! 旦那様の旗だ!」 「帰ってこられたぞー!!」
城門のはるか手前から、見張りの兵士の大声が響き渡りました。 そして、その声を合図に、城の中からドッと人が溢れ出してきました。
「おかえりなさいませー!!」 「旦那様! 奥様! ご無事で何よりです!」 「王都の悪党どもを成敗したって聞きましたよ!」
騎士団員、メイド、執事、庭師、料理人。 総勢百名を超える城の人々が、沿道に並んで歓声を上げています。 中には、感動のあまり泣き出しているメイドや、「奥様バンザイ!」と書かれた手作りの横断幕を掲げている騎士たちもいました。
「……すごい」
私は圧倒されて、馬車の窓から身を乗り出しました。
「あ! 奥様が手を振ってくださった!」 「エルサ様ー! 今日のご飯は特製シチューですよー!」
熱烈な歓迎ぶりです。 かつて私がここへ嫁いできた時、誰一人として出迎えすらなかったあの寂しい到着とは、まるで別の世界です。
馬車がエントランスに横付けされると、執事長が恭しく扉を開けました。
「おかえりなさいませ、旦那様、奥様。……お二人のご帰還を、心よりお待ち申し上げておりました」
「ただいま、セバスチャン。留守の間、苦労をかけたな」
ジークハルト様が馬車から降り、続いて私に手を差し伸べました。 私がその手を取って降り立つと、ワッと歓声が一段と大きくなりました。
「さあ、中へ入ろう。外は寒い」
ジークハルト様は私をエスコートし、皆の祝福の中を歩き出しました。 その背中は誇らしげで、まるで凱旋した王のようでした。
城の中に入ると、懐かしい匂いがしました。 磨き上げられた木の床の匂い、暖炉の薪が燃える匂い、そして厨房から漂ってくるスープの香り。
「……落ち着きます」
私がほっと息をつくと、ジークハルト様が優しく頭を撫でてくれました。
「ここがお前の家だ。もう二度と、あんな窮屈な場所へ行く必要はない」
「はい、旦那様」
私たちは顔を見合わせて笑いました。 王都での華やかな日々も刺激的でしたが、やはりこの温かい日常こそが、私たちが一番大切にしたいものなのだと再確認しました。
◇
その夜は、城を挙げての祝賀会となりました。 王都での勝利と、無事の帰還を祝って、大広間で盛大な宴が開かれたのです。
「乾杯!」
ジークハルト様の音頭で、ジョッキやグラスが高々と掲げられました。 テーブルには、私が王都から持ち帰った食材を使った料理や、留守番をしていた料理人たちが腕によりをかけたご馳走が所狭しと並んでいます。
「奥様、これ食べてみてください! 俺が考案した新作のパテです!」 「いやいや、こっちのローストチキンの方が美味いですって!」
騎士たちが競うように私に料理を勧めてきます。 彼らは王都での武勇伝(特に私が毒霧の中でジークハルト様を助けた話)を聞きたがり、私が少し話すたびに「うおおおっ!」「さすが俺たちの女神!」と大盛り上がりでした。
ジークハルト様は、そんな騒ぎを上座から満足そうに眺めていました。 普段なら「騒がしい」と眉をひそめるところですが、今夜は彼自身も上機嫌で、珍しくワインを何杯も空けていました。
「……飲みすぎではありませんか?」
私が心配して声をかけると、彼は少し顔を赤らめて首を振りました。
「構わん。今日はめでたい日だ。それに……」
彼は私の耳元に顔を寄せ、低い声で囁きました。
「酔っ払った俺の介抱をするのは、妻の役目だろう?」
「もう……確信犯ですね」
「ああ。後でたっぷりと甘えさせてもらう」
その甘い響きに、私の心臓がトクンと跳ねました。 王都での緊張感のある関係も悪くありませんでしたが、この城での無防備な彼との時間は、何にも代えがたい幸福感があります。
宴がお開きになったのは、日付が変わる頃でした。 皆、酔い潰れて床で寝てしまったり、千鳥足で部屋に戻ったりしていきました。
私は、少し足元がおぼつかないジークハルト様を支えながら、寝室へと向かいました。
「おっと……大丈夫ですか?」
「問題ない。……お前の肩に捕まっているだけで、世界が安定する」
彼は私の肩に腕を回し、全体重を預けてきます。 重いですが、嫌な重さではありません。 信頼の重みです。
寝室に入り、彼をベッドに座らせました。 私は彼の靴を脱がせ、上着を脱がせようとしました。
「エルサ」
彼が私の手を止めました。
「ん? どうされました?」
「……ありがとう」
彼は真剣な眼差しで私を見つめました。 酔っているはずなのに、その瞳は澄み渡り、深い愛情を湛えています。
「王都では、本当に助けられた。お前がいなければ、俺はマリアの策に溺れ、獣に堕ちていただろう。……俺を守ってくれて、ありがとう」
「お礼を言うのは私の方です。……私を、あの地獄のような家から救い出し、こんなに温かい場所へ連れてきてくれたのは、貴方様ですから」
私は彼の頬に手を添えました。
「私たちは、互いに救い合っているのです。これからも、ずっと」
「ああ……ずっとだ」
彼は私の手首を掴み、引き寄せました。 そのまま、私たちはベッドへと倒れ込みました。
「……今日は、ご褒美をやらんとな」
ジークハルト様が、私の上に覆い被さりました。 銀髪がカーテンのように垂れ下がり、私と彼だけの閉じた空間を作ります。
「ご褒美?」
「ああ。王都で頑張った、最高に可愛い妻へのご褒美だ。……何が欲しい?」
彼は指先で私の輪郭をなぞりました。 そのタッチは羽毛のように優しく、同時に火傷しそうなほど熱を帯びていました。
「……貴方様が欲しいです」
私が素直に答えると、彼は嬉しそうに目を細め、蕩けるようなキスを落としてきました。
「強欲な妻だ。……だが、いいだろう。俺の全てをくれてやる。髪の毛一本、魂の欠片まで、全てお前のものだ」
その夜、私たちは王都での疲れを癒やすように、そして互いの存在を確かめ合うように、深く、長く愛し合いました。 窓の外では雪が降り始めていましたが、私たちの寝室は春のように暖かく、愛に満ちていました。
◇
翌朝。 私は鳥のさえずりと共に目を覚ましました。 隣を見ると、ジークハルト様はまだ深い眠りの中にいました。 昨夜のお酒と、愛の営みの疲れが出ているのでしょう。 その寝顔はとても無防備で、幼い少年のようでした。
私は起こさないようにそっとベッドを抜け出し、着替えを済ませました。 今日は久しぶりに、領内の視察……という名の、私の趣味である「領地改革」の続きを行う予定です。
厨房へ行くと、すでに料理長たちが朝食の準備をしていました。
「おはようございます、奥様! 昨日はお疲れ様でした!」
「おはよう。……ねえ、料理長。今日のお昼、少し時間が取れるかしら?」
「もちろんです! また何か新しいレシピですか?」
「ええ。王都で見つけた香辛料を使って、寒い冬にぴったりのスープを作りたいの」
私が提案すると、料理長たちは目を輝かせました。 王都での経験は、私に自信を与えてくれました。 以前は「私が口を出してもいいのかしら」と遠慮がありましたが、今は「この領地をもっと良くしたい」という明確なビジョンがあります。
朝食後、私はジークハルト様(まだ眠そうでしたが、無理やり起こしました)と共に、領地の南側にある農村へ向かいました。 ここは以前から、土壌が痩せていて作物が育ちにくいとされていた地域です。
「……確かに、土が硬いわね」
私は畑の土を手に取り、観察しました。
「魔力の影響で、土の栄養分が偏っているのかもしれません。……旦那様、ここに浄化の魔石を埋めることはできますか?」
「浄化の魔石? そんな高級品を、畑にか?」
ジークハルト様が驚きました。 浄化の魔石は、通常は貴族の屋敷や神殿で使われる高価なものです。
「はい。でも、この領地には魔石が掃いて捨てるほどあるでしょう? それを使わない手はありません。砕いて粉にして、肥料と混ぜて撒けば、土壌改良ができるはずです」
「……なるほど。贅沢な肥料だが、俺の領地ならではの発想だな」
ジークハルト様は感心したように頷きました。
「わかった。すぐに手配しよう。……お前のアイデアには、いつも驚かされる」
「ふふ、主婦の知恵ですよ。『あるものは使う』が基本ですから」
私たちは村長を呼び、計画を説明しました。 最初は恐縮していた村長も、「これで村が豊かになるなら」と涙を流して喜んでくれました。
「奥様は、本当に女神様のようだ……」
村人たちが拝むように私を見るので、少し恥ずかしくなりました。 でも、その笑顔を見ていると、疲れなんて吹き飛んでしまいます。
◇
午後になり、城へ戻ると、執事長が深刻な顔で待っていました。
「旦那様、奥様。……お客様がお見えです」
「客? また王都の連中か?」
ジークハルト様が不機嫌そうに眉を寄せました。 王都の人間はもう懲り懲りです。
「いいえ。……それが、隣国の外交官を名乗る者でして」
「隣国?」
私たちは顔を見合わせました。 北の国境を接しているのは、軍事大国として知られる「ドラグニア帝国」です。 あまり友好的とは言えない国ですが、表立った紛争もここ数年はありませんでした。
「通せ」
応接間に通されたのは、長身痩躯(そうく)の男でした。 仕立ての良いスーツを着ていますが、その目は蛇のように鋭く、油断ならない雰囲気を漂わせています。
「お初にお目にかかります、ジークハルト辺境伯閣下。私はドラグニア帝国の特使、ヴァイサと申します」
男は慇懃に礼をしました。
「何の用だ。俺は忙しい」
「単刀直入に申し上げます。……我が国の皇帝陛下が、貴方様の奥方、エルサ様に興味を持たれまして」
「……何?」
室温が一気に下がりました。 ジークハルト様から、黒い瘴気が漏れ出します。
「妻に興味だと? どういう意味だ」
「先日、王都で起きた『毒霧事件』。……その際、エルサ様が驚異的な『魔力無効化』の能力を発揮されたと聞き及びました。その力、我が国の魔導研究のために、ぜひお借りしたい」
ヴァイサは不敵に笑いました。
「もちろん、相応の対価はお支払いします。……場合によっては、貴国の王家よりも好待遇で迎えますよ?」
それは、明らかな引き抜き工作。 いや、事実上の「誘拐予告」に近いものでした。 私の能力が、他国にまで知れ渡ってしまったのです。
「……ふざけるな」
ジークハルト様が立ち上がりました。 その怒りは、マリアや両親に向けられたものとは比較にならないほど、静かで、そして深いものでした。
「エルサはモノではない。俺の妻だ。そして、俺の命だ。……それを『借りる』だと? 貴様らの皇帝に伝えておけ」
彼はヴァイサの目の前に指を突きつけました。
「『エルサに指一本でも触れてみろ。その時は、俺が帝国ごと地図から消してやる』とな」
凄まじい殺気。 ヴァイサの顔から余裕が消え、汗が流れ落ちました。 彼は、自分が虎の尾を踏んだことを悟ったようでした。
「……ご冗談を。あくまで、友好的な提案ですよ」
「二度目はない。……失せろ」
ヴァイサは逃げるように部屋を出て行きました。 しかし、その去り際に私に向けた視線は、まだ諦めていないことを物語っていました。
「……厄介なことになったな」
ジークハルト様が溜息をつき、ソファに座り込みました。 そして、不安そうに立っている私を抱き寄せました。
「すまない、エルサ。俺がもっと慎重であれば、お前の力が知られることもなかったのに」
「いいえ、旦那様。あの時は仕方ありませんでした。それに……」
私は彼の手を握り返しました。
「私は怖くありません。だって、世界最強の旦那様が守ってくださるんでしょう?」
「ああ。……絶対に守る。例え世界中を敵に回しても」
彼は私の手を強く握りしめました。
「これからは、城の警備をさらに厳重にする。お前も、一人での外出は控えてくれ。……窮屈かもしれないが、今は我慢してほしい」
「はい。貴方様のお側が、私にとって一番安全で、幸せな場所ですから」
平和な日常に戻った矢先の、新たな火種。 私の「魔力無効化」という特異体質は、幸せをもたらすと同時に、新たな争いの種にもなり得る諸刃の剣でした。
しかし、私たちはもう以前のように怯えることはありません。 困難が訪れるたびに、私たちの絆はより強固なものになっていくのですから。
「……そういえば、旦那様」
私は空気を変えるために、明るい話題を振りました。
「今日、畑の視察に行った時、不思議なものを見つけたんです」
「不思議なもの?」
「はい。雪の下から、小さな青い花が咲いていたんです。……この時期に咲く花なんて、聞いたことがありません」
「青い花……? まさか、『氷結花(アイス・ブルーム)』か?」
ジークハルト様が驚いた顔をしました。
「それは、強い魔力と、清らかな心を持つ者の近くでしか咲かないと言われる幻の花だ。……伝説だと思っていたが」
「まあ、そんな素敵な花なんですか?」
「ああ。……きっと、お前が呼び寄せたんだろう。この地に春を告げる、幸運の兆しだ」
彼は微笑み、私のお腹にそっと手を触れました。
「もしかしたら……他にも幸運が訪れているのかもしれんな」
「え?」
彼の手の温かさが、お腹を通じて伝わってきました。 まだ確証はありません。 でも、なんとなく、予感めいたものを感じました。 私たちの愛の結晶が、ここに芽吹いているのかもしれないと。
「……もしそうなら、もっと賑やかになりますね」
「ああ。……俺は、世界一の親バカになる自信があるぞ」
「ふふ、もうなっていますよ」
私たちは笑い合いました。 外からの脅威など、この温かい幸せの前では些細なことに思えました。
英雄の帰還。 それは、戦いの終わりではなく、新しい家族の物語の始まりでした。 これから訪れるであろう長い冬も、二人ならきっと、温かく過ごせるはずです。
冷たい風が頬を撫でますが、それは王都の淀んだ空気とは違い、清涼な水のようでした。 雪を冠した山々が見えてくる頃には、私の心はすっかり解きほぐされていました。
「……帰ってきた、という感じがします」
私が呟くと、向かいに座っていたジークハルト様が、読みかけの書類を置いて微笑みました。
「そうだな。やはり俺たちには、この冷たくて静かな土地が合っている」
彼はリラックスした様子で、窓の外を流れる針葉樹の森を眺めています。 王都では常に張り詰めていた肩の力が抜け、その表情は穏やかそのものでした。 もちろん、仮面は外しています。 この馬車の中は、私たちだけの聖域ですから。
「到着まであと少しだ。……みんな、首を長くして待っているぞ」
「ふふ、お土産をたくさん買いましたから、喜んでくれるといいのですが」
今回の王都行きで、私たちは大量の「戦利品」を持ち帰っていました。 それは、伯爵家から回収した(というか、慰謝料として徴収した)宝石や美術品だけではありません。 王都の市場で買い付けた珍しい香辛料や、最新の調理器具、そして使用人たちへのプレゼントなど、馬車二台分にもなる荷物が後続しています。
「俺としては、お前が無事に帰ってくるだけで、あいつらにとっては最高の土産だと思うがな」
ジークハルト様が、いたずらっぽく片目を閉じました。 その言葉が真実であることを、私たちは城に到着した瞬間に思い知ることになります。
◇
「見えたぞ! 旦那様の旗だ!」 「帰ってこられたぞー!!」
城門のはるか手前から、見張りの兵士の大声が響き渡りました。 そして、その声を合図に、城の中からドッと人が溢れ出してきました。
「おかえりなさいませー!!」 「旦那様! 奥様! ご無事で何よりです!」 「王都の悪党どもを成敗したって聞きましたよ!」
騎士団員、メイド、執事、庭師、料理人。 総勢百名を超える城の人々が、沿道に並んで歓声を上げています。 中には、感動のあまり泣き出しているメイドや、「奥様バンザイ!」と書かれた手作りの横断幕を掲げている騎士たちもいました。
「……すごい」
私は圧倒されて、馬車の窓から身を乗り出しました。
「あ! 奥様が手を振ってくださった!」 「エルサ様ー! 今日のご飯は特製シチューですよー!」
熱烈な歓迎ぶりです。 かつて私がここへ嫁いできた時、誰一人として出迎えすらなかったあの寂しい到着とは、まるで別の世界です。
馬車がエントランスに横付けされると、執事長が恭しく扉を開けました。
「おかえりなさいませ、旦那様、奥様。……お二人のご帰還を、心よりお待ち申し上げておりました」
「ただいま、セバスチャン。留守の間、苦労をかけたな」
ジークハルト様が馬車から降り、続いて私に手を差し伸べました。 私がその手を取って降り立つと、ワッと歓声が一段と大きくなりました。
「さあ、中へ入ろう。外は寒い」
ジークハルト様は私をエスコートし、皆の祝福の中を歩き出しました。 その背中は誇らしげで、まるで凱旋した王のようでした。
城の中に入ると、懐かしい匂いがしました。 磨き上げられた木の床の匂い、暖炉の薪が燃える匂い、そして厨房から漂ってくるスープの香り。
「……落ち着きます」
私がほっと息をつくと、ジークハルト様が優しく頭を撫でてくれました。
「ここがお前の家だ。もう二度と、あんな窮屈な場所へ行く必要はない」
「はい、旦那様」
私たちは顔を見合わせて笑いました。 王都での華やかな日々も刺激的でしたが、やはりこの温かい日常こそが、私たちが一番大切にしたいものなのだと再確認しました。
◇
その夜は、城を挙げての祝賀会となりました。 王都での勝利と、無事の帰還を祝って、大広間で盛大な宴が開かれたのです。
「乾杯!」
ジークハルト様の音頭で、ジョッキやグラスが高々と掲げられました。 テーブルには、私が王都から持ち帰った食材を使った料理や、留守番をしていた料理人たちが腕によりをかけたご馳走が所狭しと並んでいます。
「奥様、これ食べてみてください! 俺が考案した新作のパテです!」 「いやいや、こっちのローストチキンの方が美味いですって!」
騎士たちが競うように私に料理を勧めてきます。 彼らは王都での武勇伝(特に私が毒霧の中でジークハルト様を助けた話)を聞きたがり、私が少し話すたびに「うおおおっ!」「さすが俺たちの女神!」と大盛り上がりでした。
ジークハルト様は、そんな騒ぎを上座から満足そうに眺めていました。 普段なら「騒がしい」と眉をひそめるところですが、今夜は彼自身も上機嫌で、珍しくワインを何杯も空けていました。
「……飲みすぎではありませんか?」
私が心配して声をかけると、彼は少し顔を赤らめて首を振りました。
「構わん。今日はめでたい日だ。それに……」
彼は私の耳元に顔を寄せ、低い声で囁きました。
「酔っ払った俺の介抱をするのは、妻の役目だろう?」
「もう……確信犯ですね」
「ああ。後でたっぷりと甘えさせてもらう」
その甘い響きに、私の心臓がトクンと跳ねました。 王都での緊張感のある関係も悪くありませんでしたが、この城での無防備な彼との時間は、何にも代えがたい幸福感があります。
宴がお開きになったのは、日付が変わる頃でした。 皆、酔い潰れて床で寝てしまったり、千鳥足で部屋に戻ったりしていきました。
私は、少し足元がおぼつかないジークハルト様を支えながら、寝室へと向かいました。
「おっと……大丈夫ですか?」
「問題ない。……お前の肩に捕まっているだけで、世界が安定する」
彼は私の肩に腕を回し、全体重を預けてきます。 重いですが、嫌な重さではありません。 信頼の重みです。
寝室に入り、彼をベッドに座らせました。 私は彼の靴を脱がせ、上着を脱がせようとしました。
「エルサ」
彼が私の手を止めました。
「ん? どうされました?」
「……ありがとう」
彼は真剣な眼差しで私を見つめました。 酔っているはずなのに、その瞳は澄み渡り、深い愛情を湛えています。
「王都では、本当に助けられた。お前がいなければ、俺はマリアの策に溺れ、獣に堕ちていただろう。……俺を守ってくれて、ありがとう」
「お礼を言うのは私の方です。……私を、あの地獄のような家から救い出し、こんなに温かい場所へ連れてきてくれたのは、貴方様ですから」
私は彼の頬に手を添えました。
「私たちは、互いに救い合っているのです。これからも、ずっと」
「ああ……ずっとだ」
彼は私の手首を掴み、引き寄せました。 そのまま、私たちはベッドへと倒れ込みました。
「……今日は、ご褒美をやらんとな」
ジークハルト様が、私の上に覆い被さりました。 銀髪がカーテンのように垂れ下がり、私と彼だけの閉じた空間を作ります。
「ご褒美?」
「ああ。王都で頑張った、最高に可愛い妻へのご褒美だ。……何が欲しい?」
彼は指先で私の輪郭をなぞりました。 そのタッチは羽毛のように優しく、同時に火傷しそうなほど熱を帯びていました。
「……貴方様が欲しいです」
私が素直に答えると、彼は嬉しそうに目を細め、蕩けるようなキスを落としてきました。
「強欲な妻だ。……だが、いいだろう。俺の全てをくれてやる。髪の毛一本、魂の欠片まで、全てお前のものだ」
その夜、私たちは王都での疲れを癒やすように、そして互いの存在を確かめ合うように、深く、長く愛し合いました。 窓の外では雪が降り始めていましたが、私たちの寝室は春のように暖かく、愛に満ちていました。
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厨房へ行くと、すでに料理長たちが朝食の準備をしていました。
「おはようございます、奥様! 昨日はお疲れ様でした!」
「おはよう。……ねえ、料理長。今日のお昼、少し時間が取れるかしら?」
「もちろんです! また何か新しいレシピですか?」
「ええ。王都で見つけた香辛料を使って、寒い冬にぴったりのスープを作りたいの」
私が提案すると、料理長たちは目を輝かせました。 王都での経験は、私に自信を与えてくれました。 以前は「私が口を出してもいいのかしら」と遠慮がありましたが、今は「この領地をもっと良くしたい」という明確なビジョンがあります。
朝食後、私はジークハルト様(まだ眠そうでしたが、無理やり起こしました)と共に、領地の南側にある農村へ向かいました。 ここは以前から、土壌が痩せていて作物が育ちにくいとされていた地域です。
「……確かに、土が硬いわね」
私は畑の土を手に取り、観察しました。
「魔力の影響で、土の栄養分が偏っているのかもしれません。……旦那様、ここに浄化の魔石を埋めることはできますか?」
「浄化の魔石? そんな高級品を、畑にか?」
ジークハルト様が驚きました。 浄化の魔石は、通常は貴族の屋敷や神殿で使われる高価なものです。
「はい。でも、この領地には魔石が掃いて捨てるほどあるでしょう? それを使わない手はありません。砕いて粉にして、肥料と混ぜて撒けば、土壌改良ができるはずです」
「……なるほど。贅沢な肥料だが、俺の領地ならではの発想だな」
ジークハルト様は感心したように頷きました。
「わかった。すぐに手配しよう。……お前のアイデアには、いつも驚かされる」
「ふふ、主婦の知恵ですよ。『あるものは使う』が基本ですから」
私たちは村長を呼び、計画を説明しました。 最初は恐縮していた村長も、「これで村が豊かになるなら」と涙を流して喜んでくれました。
「奥様は、本当に女神様のようだ……」
村人たちが拝むように私を見るので、少し恥ずかしくなりました。 でも、その笑顔を見ていると、疲れなんて吹き飛んでしまいます。
◇
午後になり、城へ戻ると、執事長が深刻な顔で待っていました。
「旦那様、奥様。……お客様がお見えです」
「客? また王都の連中か?」
ジークハルト様が不機嫌そうに眉を寄せました。 王都の人間はもう懲り懲りです。
「いいえ。……それが、隣国の外交官を名乗る者でして」
「隣国?」
私たちは顔を見合わせました。 北の国境を接しているのは、軍事大国として知られる「ドラグニア帝国」です。 あまり友好的とは言えない国ですが、表立った紛争もここ数年はありませんでした。
「通せ」
応接間に通されたのは、長身痩躯(そうく)の男でした。 仕立ての良いスーツを着ていますが、その目は蛇のように鋭く、油断ならない雰囲気を漂わせています。
「お初にお目にかかります、ジークハルト辺境伯閣下。私はドラグニア帝国の特使、ヴァイサと申します」
男は慇懃に礼をしました。
「何の用だ。俺は忙しい」
「単刀直入に申し上げます。……我が国の皇帝陛下が、貴方様の奥方、エルサ様に興味を持たれまして」
「……何?」
室温が一気に下がりました。 ジークハルト様から、黒い瘴気が漏れ出します。
「妻に興味だと? どういう意味だ」
「先日、王都で起きた『毒霧事件』。……その際、エルサ様が驚異的な『魔力無効化』の能力を発揮されたと聞き及びました。その力、我が国の魔導研究のために、ぜひお借りしたい」
ヴァイサは不敵に笑いました。
「もちろん、相応の対価はお支払いします。……場合によっては、貴国の王家よりも好待遇で迎えますよ?」
それは、明らかな引き抜き工作。 いや、事実上の「誘拐予告」に近いものでした。 私の能力が、他国にまで知れ渡ってしまったのです。
「……ふざけるな」
ジークハルト様が立ち上がりました。 その怒りは、マリアや両親に向けられたものとは比較にならないほど、静かで、そして深いものでした。
「エルサはモノではない。俺の妻だ。そして、俺の命だ。……それを『借りる』だと? 貴様らの皇帝に伝えておけ」
彼はヴァイサの目の前に指を突きつけました。
「『エルサに指一本でも触れてみろ。その時は、俺が帝国ごと地図から消してやる』とな」
凄まじい殺気。 ヴァイサの顔から余裕が消え、汗が流れ落ちました。 彼は、自分が虎の尾を踏んだことを悟ったようでした。
「……ご冗談を。あくまで、友好的な提案ですよ」
「二度目はない。……失せろ」
ヴァイサは逃げるように部屋を出て行きました。 しかし、その去り際に私に向けた視線は、まだ諦めていないことを物語っていました。
「……厄介なことになったな」
ジークハルト様が溜息をつき、ソファに座り込みました。 そして、不安そうに立っている私を抱き寄せました。
「すまない、エルサ。俺がもっと慎重であれば、お前の力が知られることもなかったのに」
「いいえ、旦那様。あの時は仕方ありませんでした。それに……」
私は彼の手を握り返しました。
「私は怖くありません。だって、世界最強の旦那様が守ってくださるんでしょう?」
「ああ。……絶対に守る。例え世界中を敵に回しても」
彼は私の手を強く握りしめました。
「これからは、城の警備をさらに厳重にする。お前も、一人での外出は控えてくれ。……窮屈かもしれないが、今は我慢してほしい」
「はい。貴方様のお側が、私にとって一番安全で、幸せな場所ですから」
平和な日常に戻った矢先の、新たな火種。 私の「魔力無効化」という特異体質は、幸せをもたらすと同時に、新たな争いの種にもなり得る諸刃の剣でした。
しかし、私たちはもう以前のように怯えることはありません。 困難が訪れるたびに、私たちの絆はより強固なものになっていくのですから。
「……そういえば、旦那様」
私は空気を変えるために、明るい話題を振りました。
「今日、畑の視察に行った時、不思議なものを見つけたんです」
「不思議なもの?」
「はい。雪の下から、小さな青い花が咲いていたんです。……この時期に咲く花なんて、聞いたことがありません」
「青い花……? まさか、『氷結花(アイス・ブルーム)』か?」
ジークハルト様が驚いた顔をしました。
「それは、強い魔力と、清らかな心を持つ者の近くでしか咲かないと言われる幻の花だ。……伝説だと思っていたが」
「まあ、そんな素敵な花なんですか?」
「ああ。……きっと、お前が呼び寄せたんだろう。この地に春を告げる、幸運の兆しだ」
彼は微笑み、私のお腹にそっと手を触れました。
「もしかしたら……他にも幸運が訪れているのかもしれんな」
「え?」
彼の手の温かさが、お腹を通じて伝わってきました。 まだ確証はありません。 でも、なんとなく、予感めいたものを感じました。 私たちの愛の結晶が、ここに芽吹いているのかもしれないと。
「……もしそうなら、もっと賑やかになりますね」
「ああ。……俺は、世界一の親バカになる自信があるぞ」
「ふふ、もうなっていますよ」
私たちは笑い合いました。 外からの脅威など、この温かい幸せの前では些細なことに思えました。
英雄の帰還。 それは、戦いの終わりではなく、新しい家族の物語の始まりでした。 これから訪れるであろう長い冬も、二人ならきっと、温かく過ごせるはずです。
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お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
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