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第14話『新しい命と、迫り来る帝国の牙』
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「……おめでとうございます、奥様。ご懐妊です」
城の主治医である老医師の言葉が、静まり返った寝室に響きました。 その瞬間、時間が止まったかのような錯覚に陥りました。
ベッドの横で私の手を握りしめていたジークハルト様が、石像のように固まっています。 普段はどんな強敵を前にしても眉一つ動かさない彼が、今は口を半開きにして、医師と私を交互に見つめているのです。
「……本当か?」
彼が絞り出した声は、震えていました。
「はい、間違いありません。まだ三ヶ月ほどですが、母子ともに経過は順調です。……いやはや、これはめでたい。辺境伯家に待望の跡取りができるのですからな!」
医師が満面の笑みで頷くと、ジークハルト様はゆっくりと、本当にゆっくりと私の腹部に手を伸ばしました。 その手は、かつてないほど慎重で、まるで触れたら消えてしまう幻に触れるかのようでした。
「ここに……俺と、エルサの子が?」
「はい、旦那様。……私たちの赤ちゃんです」
私が彼の手の上に自分の手を重ねて微笑むと、彼の紫色の瞳から、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちました。
「エルサ……!」
彼はベッドに崩れ落ちるように膝をつき、私の胸に顔を埋めました。
「ありがとう……。ありがとう……! 俺ごときが、こんな幸せを手にしていいのか……。家族ができるなんて、夢のようだ」
彼の背中が小刻みに震えています。 かつて「呪われた子」として親から疎まれ、孤独の中で生きてきた彼にとって、「自分の家族」という存在がどれほど大きく、尊いものか。 その感動が、私の胸にも痛いほど伝わってきました。
「いいんですよ、旦那様。貴方様はもう、一人じゃありません。……これからは、三人家族ですね」
「ああ……ああ、そうだ。三人だ。……絶対に守ってみせる。俺の命に代えても」
彼は顔を上げ、濡れた瞳で誓いました。 その表情は、父親としての自覚と、強固な決意に満ちていました。
◇
妊娠が判明してからというもの、ジークハルト様の過保護スキルは、天井知らずのレベルへと進化しました。 それはもう、「過保護」という言葉では生ぬるい、「絶対防衛圏」と呼ぶべき厳重さでした。
「エルサ、歩くな。移動する時は俺を呼べ。抱っこして運ぶ」
「旦那様、お手洗いに行くだけです……」
「階段は禁止だ。転んだらどうする。一階の部屋を改装して、段差を全てなくさせる」
「そこまでしなくても……」
「食事は俺が毒見をしてからだ。温度も俺が確認する。熱すぎても冷たすぎてもいかん」
「子供じゃないんですから……」
朝から晩まで、彼は私の影のように付き従い、指一本動かすことさえ心配します。 執務中も、私をソファに座らせて目の届く範囲に置いておかないと気が済まないようで、片手で書類に判を押し、もう片方の手で私の手を握っているという有様です。
城の使用人たちも、主人のこの豹変ぶりには苦笑しつつも、温かく見守ってくれていました。
「旦那様、もうメロメロですね」 「奥様、重いものは私たちが持ちますから、座っていてください!」 「生まれてくる若君か姫君のために、今からベビー服を縫っておきますね!」
城全体が、新しい命の誕生を心待ちにする、幸せな空気に包まれていました。
しかし。 その穏やかな日常の裏で、不穏な影が確実に近づいていました。
◇
ある日の午後。 ジークハルト様が執務室で騎士団長と深刻な顔で話し込んでいるのを、私は見てしまいました。 私がソファで読書をしていると思っているのか、二人の声は少し抑え気味でしたが、断片的な言葉が耳に入ってきます。
「……国境付近で……帝国の動きが……」 「……魔導兵器の反応……」 「……ヴァイサの行方は……」
私は本を閉じ、二人に近づきました。
「旦那様。隠し事はなし、という約束ではありませんでしたか?」
「ッ!?」
ジークハルト様が弾かれたように振り返りました。 バツの悪そうな顔をしています。
「……聞いていたのか」
「はい。帝国のことですよね? あの外交官、まだ諦めていないのですか?」
彼はため息をつき、諦めたように私を膝の上に乗せました。 騎士団長が気まずそうに目を逸らしますが、今は気にしていられません。
「……ああ。国境沿いに、ドラグニア帝国の軍が集結し始めている。表向きは『演習』と言っているが、明らかに臨戦態勢だ」
ジークハルト様の声が低くなりました。
「そして、先ほど密偵から情報が入った。……奴らが『キメラ』を連れているとな」
「キメラ……?」
「帝国が極秘に開発していた生体兵器だ。魔物と魔物を合成し、人工的に造り出した化け物。……理性がなく、ただ殺戮命令だけに従う厄介な代物だ」
背筋が寒くなりました。 そんな恐ろしいものを、なぜ国境に。
「目的は……私、ですね?」
私の問いに、ジークハルト様は沈痛な面持ちで頷きました。
「十中八九、そうだ。ヴァイサの奴、交渉が決裂したから、力ずくで奪いに来るつもりらしい。お前の『魔力無効化』の力を手に入れるために」
彼は私の肩を抱く腕に力を込めました。
「だが、指一本触れさせん。城の結界は最大出力に上げてあるし、黒鷲騎士団も総動員で警備にあたらせている。……いざとなれば、俺が前線に出て、奴らを塵(ちり)一つ残さず消滅させる」
「旦那様……」
「安心しろ、エルサ。お前と子供は、俺が絶対に守る。……胎教に悪い話をしてすまなかったな」
彼は無理に笑顔を作ってくれましたが、その瞳の奥には、隠しきれない焦燥感がありました。 帝国の軍事力は大陸随一です。 いくらジークハルト様が強くても、個人の力で大国の軍隊と正面からぶつかるのはリスクが高すぎます。 それに、もし彼が前線に出ている間に、城が襲われたら……。
(私が……私の力のせいで、この領地が危険に晒されている)
申し訳なさで胸が押し潰されそうになりました。 私がここに来なければ。 私の力がなければ。 彼は、そして領民たちは、こんな戦火の恐怖に怯えることはなかったかもしれない。
「……変なことを考えるなよ」
私の思考を読んだかのように、ジークハルト様が私の頬をつねりました。
「痛っ」
「お前がいなければ、俺はとっくに孤独死していたか、魔力暴走で自滅していた。……お前がここにいることが、俺たちの最大の幸福なんだ。敵が来たなら、追い払えばいい。それだけの話だ」
「……はい」
彼の強がりと優しさに、涙が出そうになりました。
◇
数日後。 事態は急変しました。
早朝、城の上空に巨大な魔法陣が出現したのです。 それは敵の攻撃魔法ではなく、巨大な映像を投影するための通信魔法でした。
空に映し出されたのは、あの外交官ヴァイサの不敵な笑みでした。 その映像は、城だけでなく、城下町や近隣の村々からも見えるほどの大きさでした。
『ごきげんよう、親愛なるジークハルト辺境伯閣下。そして、愛しのエルサ様』
ヴァイサの声が、空から降ってきました。 そのねっとりとした響きに、城中の人々が空を見上げ、戦慄しました。
『我が皇帝陛下からの、最後通牒をお伝えに参りました。……本日正午までに、エルサ様を我が軍に引き渡してください。さすれば、貴国との不可侵条約を更新し、未来永劫の平和をお約束しましょう』
「ふざけるな!」
庭に出ていたジークハルト様が、空に向かって怒号を飛ばしました。 彼の手から黒い炎が立ち上っています。
しかし、映像の中のヴァイサは、嘲笑うように言葉を続けました。
『もし、拒否されるのであれば……残念ながら、実力行使に出させていただきます。我が軍が誇る合成魔獣(キメラ)軍団を、貴領地の全土に解き放つことになります。……さて、どうなりますかねぇ?』
映像が切り替わりました。 そこに映し出されたのは、国境付近の平原を埋め尽くす、異形の怪物たちの姿でした。 獅子の頭に蛇の尾を持つもの、全身が鋼鉄の鱗で覆われた巨人、翼を持つ巨大な狼……。 その数、数百。
『これらが一斉に暴れ出せば、美しい鉱山街も、豊かな農村も、一晩で瓦礫の山となるでしょう。……領民の命を守るか、愛する妻を守るか。賢明なる辺境伯閣下の決断を、期待しておりますよ』
プツン。 映像が消えました。
残されたのは、絶望的な静寂と、鉛色の空だけ。
「……卑怯な」
ジークハルト様がギリリと歯ぎしりをしました。 彼は、領民を人質に取られたのです。 もし彼が城に籠もって私を守れば、領地はキメラに蹂躙され、多くの民が死ぬでしょう。 かといって、彼が領地を守るために出撃すれば、手薄になった城に敵の別動隊が攻め込み、私を奪いに来る可能性があります。
究極の二択。
城の中は騒然となりました。 騎士たちは武装して走り回り、使用人たちは不安そうに集まっています。
私は、自分の部屋の窓から、眼下に広がる城下町を見下ろしました。 そこには、空の映像を見てパニックになり、逃げ惑う人々の姿がありました。 幸せそうだった日常が、私のせいで壊されていく。
(……決めなければ)
私はお腹に手を当てました。 まだ膨らみも目立たない、小さな命。 この子のためにも、お父様のためにも、そして私たちを受け入れてくれた領民たちのためにも。
私は決意を固め、執務室へと向かいました。
「旦那様」
執務室では、ジークハルト様が騎士団幹部たちと地図を囲み、苦渋の表情で議論していました。
「キメラ軍団を止めるには、俺が出るしかない。だが、俺が城を離れれば、エルサが……」 「しかし閣下! 鉱山街が襲われれば、被害は甚大です!」 「城の結界も、ヴァイサの魔導兵器の前でどこまで持つか……」
八方塞がりです。 私の声に、全員が振り返りました。
「エルサ? 部屋にいろと言っただろう!」
「いいえ、居ても立ってもいられませんでした。……旦那様、行ってください」
「は?」
「領民たちを守ってください。貴方様は辺境伯です。この地の守護者です。……私一人のために、多くの民を見殺しにすることは、貴方様の誇りが許さないはずです」
「だがっ! お前を危険に晒すことなどできるわけがない! もしお前が連れ去られたら……俺は生きていけない!」
彼は私の肩を掴みました。 その手は震えていました。
「私なら大丈夫です」
私は彼の手を両手で包み込み、まっすぐに瞳を見つめました。
「城には結界があります。優秀な騎士団の皆様もいます。そして何より……私は貴方様の妻です。『魔力無効化』の力があります。もし敵が入ってきても、そう簡単にはやられません」
「……無茶だ。お前は妊婦なんだぞ!?」
「守られるだけの女ではありません。……ねえ、ジークハルト様。信じてください。貴方様が必ず帰ってきてくれると信じているように、私も、自分の身は自分で守れると信じてください」
私の言葉に、彼は言葉を詰まらせました。 長い沈黙の後、彼は苦しげに天井を仰ぎました。
「……わかった」
彼は覚悟を決めた顔で、私に向き直りました。
「俺は、出る。キメラどもを最短最速で殲滅し、すぐに戻る。……その間、城の指揮権をお前に委譲する」
「はい」
「影の部隊を全てお前の護衛につける。騎士団の半数も城に残す。……絶対に、絶対に死ぬな。怪我もするな。俺が帰るまで、部屋から一歩も出るな」
「約束します」
彼は私を強く抱きしめ、それから情熱的なキスをしました。 それは、別れのキスではなく、必ず再会するための契約の儀式でした。
「行ってくる。……愛している」
「ご武運を。……愛しています」
ジークハルト様はマントを翻し、風のように部屋を出て行きました。 続いて、出撃する騎士たちの足音が廊下に響き渡ります。
残されたのは、私と、城の守備隊。 そして、不気味な静けさ。
私は窓から、黒鷲騎士団を率いて出撃していくジークハルト様の姿を見送りました。 漆黒の馬に跨り、先頭を駆ける彼の背中は、誰よりも頼もしく、そして誰よりも孤独な戦士の背中でした。
(必ず、守ってみせる。このお城も、お腹の子も)
私は拳を握りしめました。
しかし、ヴァイサの策は、私たちの予想を遥かに超えていました。 ジークハルト様が城を離れて数時間後。 キメラとの戦闘が始まったという報告が入ったのとほぼ同時に、城の内部で異変が起きたのです。
ドォォォォォン!!
城の地下から、爆発音が響きました。
「なっ、何事ですか!?」
「ほ、報告! 地下牢の壁が爆破されました! 何者かが内部から侵入したようです!」
「内部から!? 結界はどうなったの!?」
「わかりません! ですが、敵はすでに城内に……!」
外部からの攻撃ではありませんでした。 敵は、最初から城の中に「種」を撒いていたのです。 あるいは、転移魔法による奇襲か。
「……ごきげんよう、エルサ様」
廊下の向こうから、聞き覚えのある声がしました。 煙の中から現れたのは、ヴァイサでした。 しかし、彼は一人ではありませんでした。 彼の後ろには、無機質な仮面をつけた兵士たちと……そして、異様な魔力を放つ、巨大な黒い影が従っていました。
「ジークハルト閣下をおびき出すのは簡単でしたね。彼は優しすぎる。……さあ、参りましょうか、帝国へ」
ヴァイサが手を差し出しました。 城内に残っていた騎士たちが剣を抜いて立ちはだかりますが、ヴァイサの背後の黒い影が腕を振るっただけで、彼らは人形のように吹き飛ばされてしまいました。
「強い……!」
あの黒い影は、ただの護衛ではありません。 あれこそが、帝国の切り札。 対魔導師用に調整された、人型キメラ兵器『ネメシス』。
ジークハルト様がいない今、この城で最大の戦力が失われています。 私を守る壁は、あまりにも薄い。
「……断ります」
私は震える足を叱咤し、一歩前に出ました。 お腹に手を当て、母としての強さを奮い立たせます。
「私はここの女主人です。泥棒猫についていく義理はありません」
「威勢がいいですね。ですが、抵抗しても無駄ですよ。貴女の『魔力無効化』は確かに厄介ですが……物理的な暴力には無力でしょう?」
ヴァイサが指を鳴らすと、ネメシスがゆっくりと私に向かって歩き出しました。 その腕は鋼鉄のように太く、一撃で壁を粉砕するほどの力を持っています。
絶体絶命。 しかし、私は諦めませんでした。 私には、まだ「武器」がある。 ジークハルト様が残してくれた、最後の切り札が。
「……影!」
私が叫んだ瞬間。 天井から、床から、壁から、無数の黒い影が飛び出しました。 ジークハルト様直属の暗殺部隊。 彼らは私の影に潜み、この時を待っていたのです。
「奥様には指一本触れさせない!」
影たちの刃が、ネメシスとヴァイサに襲いかかります。 城内での乱戦が始まりました。 私はその隙に、護衛の騎士に守られながら、城の最奥にある「聖域」へと走りました。 そこは、ジークハルト様の魔力が最も濃く残る場所であり、私が籠城するための最後の砦。
戦いの火蓋は切って落とされました。 夫は外で魔獣の軍勢と、妻は内で帝国の刺客と。 それぞれの場所で、愛するものを守るための死闘が始まったのです。
(負けない。絶対に負けない!)
私は走りながら、お腹の子に語りかけました。 お父様が帰ってくるまで、お母様が絶対に守り抜くからね、と。
城の主治医である老医師の言葉が、静まり返った寝室に響きました。 その瞬間、時間が止まったかのような錯覚に陥りました。
ベッドの横で私の手を握りしめていたジークハルト様が、石像のように固まっています。 普段はどんな強敵を前にしても眉一つ動かさない彼が、今は口を半開きにして、医師と私を交互に見つめているのです。
「……本当か?」
彼が絞り出した声は、震えていました。
「はい、間違いありません。まだ三ヶ月ほどですが、母子ともに経過は順調です。……いやはや、これはめでたい。辺境伯家に待望の跡取りができるのですからな!」
医師が満面の笑みで頷くと、ジークハルト様はゆっくりと、本当にゆっくりと私の腹部に手を伸ばしました。 その手は、かつてないほど慎重で、まるで触れたら消えてしまう幻に触れるかのようでした。
「ここに……俺と、エルサの子が?」
「はい、旦那様。……私たちの赤ちゃんです」
私が彼の手の上に自分の手を重ねて微笑むと、彼の紫色の瞳から、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちました。
「エルサ……!」
彼はベッドに崩れ落ちるように膝をつき、私の胸に顔を埋めました。
「ありがとう……。ありがとう……! 俺ごときが、こんな幸せを手にしていいのか……。家族ができるなんて、夢のようだ」
彼の背中が小刻みに震えています。 かつて「呪われた子」として親から疎まれ、孤独の中で生きてきた彼にとって、「自分の家族」という存在がどれほど大きく、尊いものか。 その感動が、私の胸にも痛いほど伝わってきました。
「いいんですよ、旦那様。貴方様はもう、一人じゃありません。……これからは、三人家族ですね」
「ああ……ああ、そうだ。三人だ。……絶対に守ってみせる。俺の命に代えても」
彼は顔を上げ、濡れた瞳で誓いました。 その表情は、父親としての自覚と、強固な決意に満ちていました。
◇
妊娠が判明してからというもの、ジークハルト様の過保護スキルは、天井知らずのレベルへと進化しました。 それはもう、「過保護」という言葉では生ぬるい、「絶対防衛圏」と呼ぶべき厳重さでした。
「エルサ、歩くな。移動する時は俺を呼べ。抱っこして運ぶ」
「旦那様、お手洗いに行くだけです……」
「階段は禁止だ。転んだらどうする。一階の部屋を改装して、段差を全てなくさせる」
「そこまでしなくても……」
「食事は俺が毒見をしてからだ。温度も俺が確認する。熱すぎても冷たすぎてもいかん」
「子供じゃないんですから……」
朝から晩まで、彼は私の影のように付き従い、指一本動かすことさえ心配します。 執務中も、私をソファに座らせて目の届く範囲に置いておかないと気が済まないようで、片手で書類に判を押し、もう片方の手で私の手を握っているという有様です。
城の使用人たちも、主人のこの豹変ぶりには苦笑しつつも、温かく見守ってくれていました。
「旦那様、もうメロメロですね」 「奥様、重いものは私たちが持ちますから、座っていてください!」 「生まれてくる若君か姫君のために、今からベビー服を縫っておきますね!」
城全体が、新しい命の誕生を心待ちにする、幸せな空気に包まれていました。
しかし。 その穏やかな日常の裏で、不穏な影が確実に近づいていました。
◇
ある日の午後。 ジークハルト様が執務室で騎士団長と深刻な顔で話し込んでいるのを、私は見てしまいました。 私がソファで読書をしていると思っているのか、二人の声は少し抑え気味でしたが、断片的な言葉が耳に入ってきます。
「……国境付近で……帝国の動きが……」 「……魔導兵器の反応……」 「……ヴァイサの行方は……」
私は本を閉じ、二人に近づきました。
「旦那様。隠し事はなし、という約束ではありませんでしたか?」
「ッ!?」
ジークハルト様が弾かれたように振り返りました。 バツの悪そうな顔をしています。
「……聞いていたのか」
「はい。帝国のことですよね? あの外交官、まだ諦めていないのですか?」
彼はため息をつき、諦めたように私を膝の上に乗せました。 騎士団長が気まずそうに目を逸らしますが、今は気にしていられません。
「……ああ。国境沿いに、ドラグニア帝国の軍が集結し始めている。表向きは『演習』と言っているが、明らかに臨戦態勢だ」
ジークハルト様の声が低くなりました。
「そして、先ほど密偵から情報が入った。……奴らが『キメラ』を連れているとな」
「キメラ……?」
「帝国が極秘に開発していた生体兵器だ。魔物と魔物を合成し、人工的に造り出した化け物。……理性がなく、ただ殺戮命令だけに従う厄介な代物だ」
背筋が寒くなりました。 そんな恐ろしいものを、なぜ国境に。
「目的は……私、ですね?」
私の問いに、ジークハルト様は沈痛な面持ちで頷きました。
「十中八九、そうだ。ヴァイサの奴、交渉が決裂したから、力ずくで奪いに来るつもりらしい。お前の『魔力無効化』の力を手に入れるために」
彼は私の肩を抱く腕に力を込めました。
「だが、指一本触れさせん。城の結界は最大出力に上げてあるし、黒鷲騎士団も総動員で警備にあたらせている。……いざとなれば、俺が前線に出て、奴らを塵(ちり)一つ残さず消滅させる」
「旦那様……」
「安心しろ、エルサ。お前と子供は、俺が絶対に守る。……胎教に悪い話をしてすまなかったな」
彼は無理に笑顔を作ってくれましたが、その瞳の奥には、隠しきれない焦燥感がありました。 帝国の軍事力は大陸随一です。 いくらジークハルト様が強くても、個人の力で大国の軍隊と正面からぶつかるのはリスクが高すぎます。 それに、もし彼が前線に出ている間に、城が襲われたら……。
(私が……私の力のせいで、この領地が危険に晒されている)
申し訳なさで胸が押し潰されそうになりました。 私がここに来なければ。 私の力がなければ。 彼は、そして領民たちは、こんな戦火の恐怖に怯えることはなかったかもしれない。
「……変なことを考えるなよ」
私の思考を読んだかのように、ジークハルト様が私の頬をつねりました。
「痛っ」
「お前がいなければ、俺はとっくに孤独死していたか、魔力暴走で自滅していた。……お前がここにいることが、俺たちの最大の幸福なんだ。敵が来たなら、追い払えばいい。それだけの話だ」
「……はい」
彼の強がりと優しさに、涙が出そうになりました。
◇
数日後。 事態は急変しました。
早朝、城の上空に巨大な魔法陣が出現したのです。 それは敵の攻撃魔法ではなく、巨大な映像を投影するための通信魔法でした。
空に映し出されたのは、あの外交官ヴァイサの不敵な笑みでした。 その映像は、城だけでなく、城下町や近隣の村々からも見えるほどの大きさでした。
『ごきげんよう、親愛なるジークハルト辺境伯閣下。そして、愛しのエルサ様』
ヴァイサの声が、空から降ってきました。 そのねっとりとした響きに、城中の人々が空を見上げ、戦慄しました。
『我が皇帝陛下からの、最後通牒をお伝えに参りました。……本日正午までに、エルサ様を我が軍に引き渡してください。さすれば、貴国との不可侵条約を更新し、未来永劫の平和をお約束しましょう』
「ふざけるな!」
庭に出ていたジークハルト様が、空に向かって怒号を飛ばしました。 彼の手から黒い炎が立ち上っています。
しかし、映像の中のヴァイサは、嘲笑うように言葉を続けました。
『もし、拒否されるのであれば……残念ながら、実力行使に出させていただきます。我が軍が誇る合成魔獣(キメラ)軍団を、貴領地の全土に解き放つことになります。……さて、どうなりますかねぇ?』
映像が切り替わりました。 そこに映し出されたのは、国境付近の平原を埋め尽くす、異形の怪物たちの姿でした。 獅子の頭に蛇の尾を持つもの、全身が鋼鉄の鱗で覆われた巨人、翼を持つ巨大な狼……。 その数、数百。
『これらが一斉に暴れ出せば、美しい鉱山街も、豊かな農村も、一晩で瓦礫の山となるでしょう。……領民の命を守るか、愛する妻を守るか。賢明なる辺境伯閣下の決断を、期待しておりますよ』
プツン。 映像が消えました。
残されたのは、絶望的な静寂と、鉛色の空だけ。
「……卑怯な」
ジークハルト様がギリリと歯ぎしりをしました。 彼は、領民を人質に取られたのです。 もし彼が城に籠もって私を守れば、領地はキメラに蹂躙され、多くの民が死ぬでしょう。 かといって、彼が領地を守るために出撃すれば、手薄になった城に敵の別動隊が攻め込み、私を奪いに来る可能性があります。
究極の二択。
城の中は騒然となりました。 騎士たちは武装して走り回り、使用人たちは不安そうに集まっています。
私は、自分の部屋の窓から、眼下に広がる城下町を見下ろしました。 そこには、空の映像を見てパニックになり、逃げ惑う人々の姿がありました。 幸せそうだった日常が、私のせいで壊されていく。
(……決めなければ)
私はお腹に手を当てました。 まだ膨らみも目立たない、小さな命。 この子のためにも、お父様のためにも、そして私たちを受け入れてくれた領民たちのためにも。
私は決意を固め、執務室へと向かいました。
「旦那様」
執務室では、ジークハルト様が騎士団幹部たちと地図を囲み、苦渋の表情で議論していました。
「キメラ軍団を止めるには、俺が出るしかない。だが、俺が城を離れれば、エルサが……」 「しかし閣下! 鉱山街が襲われれば、被害は甚大です!」 「城の結界も、ヴァイサの魔導兵器の前でどこまで持つか……」
八方塞がりです。 私の声に、全員が振り返りました。
「エルサ? 部屋にいろと言っただろう!」
「いいえ、居ても立ってもいられませんでした。……旦那様、行ってください」
「は?」
「領民たちを守ってください。貴方様は辺境伯です。この地の守護者です。……私一人のために、多くの民を見殺しにすることは、貴方様の誇りが許さないはずです」
「だがっ! お前を危険に晒すことなどできるわけがない! もしお前が連れ去られたら……俺は生きていけない!」
彼は私の肩を掴みました。 その手は震えていました。
「私なら大丈夫です」
私は彼の手を両手で包み込み、まっすぐに瞳を見つめました。
「城には結界があります。優秀な騎士団の皆様もいます。そして何より……私は貴方様の妻です。『魔力無効化』の力があります。もし敵が入ってきても、そう簡単にはやられません」
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「守られるだけの女ではありません。……ねえ、ジークハルト様。信じてください。貴方様が必ず帰ってきてくれると信じているように、私も、自分の身は自分で守れると信じてください」
私の言葉に、彼は言葉を詰まらせました。 長い沈黙の後、彼は苦しげに天井を仰ぎました。
「……わかった」
彼は覚悟を決めた顔で、私に向き直りました。
「俺は、出る。キメラどもを最短最速で殲滅し、すぐに戻る。……その間、城の指揮権をお前に委譲する」
「はい」
「影の部隊を全てお前の護衛につける。騎士団の半数も城に残す。……絶対に、絶対に死ぬな。怪我もするな。俺が帰るまで、部屋から一歩も出るな」
「約束します」
彼は私を強く抱きしめ、それから情熱的なキスをしました。 それは、別れのキスではなく、必ず再会するための契約の儀式でした。
「行ってくる。……愛している」
「ご武運を。……愛しています」
ジークハルト様はマントを翻し、風のように部屋を出て行きました。 続いて、出撃する騎士たちの足音が廊下に響き渡ります。
残されたのは、私と、城の守備隊。 そして、不気味な静けさ。
私は窓から、黒鷲騎士団を率いて出撃していくジークハルト様の姿を見送りました。 漆黒の馬に跨り、先頭を駆ける彼の背中は、誰よりも頼もしく、そして誰よりも孤独な戦士の背中でした。
(必ず、守ってみせる。このお城も、お腹の子も)
私は拳を握りしめました。
しかし、ヴァイサの策は、私たちの予想を遥かに超えていました。 ジークハルト様が城を離れて数時間後。 キメラとの戦闘が始まったという報告が入ったのとほぼ同時に、城の内部で異変が起きたのです。
ドォォォォォン!!
城の地下から、爆発音が響きました。
「なっ、何事ですか!?」
「ほ、報告! 地下牢の壁が爆破されました! 何者かが内部から侵入したようです!」
「内部から!? 結界はどうなったの!?」
「わかりません! ですが、敵はすでに城内に……!」
外部からの攻撃ではありませんでした。 敵は、最初から城の中に「種」を撒いていたのです。 あるいは、転移魔法による奇襲か。
「……ごきげんよう、エルサ様」
廊下の向こうから、聞き覚えのある声がしました。 煙の中から現れたのは、ヴァイサでした。 しかし、彼は一人ではありませんでした。 彼の後ろには、無機質な仮面をつけた兵士たちと……そして、異様な魔力を放つ、巨大な黒い影が従っていました。
「ジークハルト閣下をおびき出すのは簡単でしたね。彼は優しすぎる。……さあ、参りましょうか、帝国へ」
ヴァイサが手を差し出しました。 城内に残っていた騎士たちが剣を抜いて立ちはだかりますが、ヴァイサの背後の黒い影が腕を振るっただけで、彼らは人形のように吹き飛ばされてしまいました。
「強い……!」
あの黒い影は、ただの護衛ではありません。 あれこそが、帝国の切り札。 対魔導師用に調整された、人型キメラ兵器『ネメシス』。
ジークハルト様がいない今、この城で最大の戦力が失われています。 私を守る壁は、あまりにも薄い。
「……断ります」
私は震える足を叱咤し、一歩前に出ました。 お腹に手を当て、母としての強さを奮い立たせます。
「私はここの女主人です。泥棒猫についていく義理はありません」
「威勢がいいですね。ですが、抵抗しても無駄ですよ。貴女の『魔力無効化』は確かに厄介ですが……物理的な暴力には無力でしょう?」
ヴァイサが指を鳴らすと、ネメシスがゆっくりと私に向かって歩き出しました。 その腕は鋼鉄のように太く、一撃で壁を粉砕するほどの力を持っています。
絶体絶命。 しかし、私は諦めませんでした。 私には、まだ「武器」がある。 ジークハルト様が残してくれた、最後の切り札が。
「……影!」
私が叫んだ瞬間。 天井から、床から、壁から、無数の黒い影が飛び出しました。 ジークハルト様直属の暗殺部隊。 彼らは私の影に潜み、この時を待っていたのです。
「奥様には指一本触れさせない!」
影たちの刃が、ネメシスとヴァイサに襲いかかります。 城内での乱戦が始まりました。 私はその隙に、護衛の騎士に守られながら、城の最奥にある「聖域」へと走りました。 そこは、ジークハルト様の魔力が最も濃く残る場所であり、私が籠城するための最後の砦。
戦いの火蓋は切って落とされました。 夫は外で魔獣の軍勢と、妻は内で帝国の刺客と。 それぞれの場所で、愛するものを守るための死闘が始まったのです。
(負けない。絶対に負けない!)
私は走りながら、お腹の子に語りかけました。 お父様が帰ってくるまで、お母様が絶対に守り抜くからね、と。
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お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
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