『「あんな化け物と結婚なんて嫌!」と妹が泣くので私が身代わりになりました。……あの、化け物どころか、国一番の美形で紳士な旦那様なんですけど?

ラムネ

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第15話『聖域の攻防と、銀閃の帰還』

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「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」

呼吸をするたびに、喉の奥から鉄の味がしました。 心臓が早鐘を打ち、全身の血液が沸騰しているかのように熱い。 重いはずのドレスの裾をまくり上げ、私はただひたすらに走り続けていました。

場所は、黒鷲城の最上階へと続く螺旋階段。 目指す先は、ジークハルト様が普段瞑想に使っている「静寂の間」――通称、聖域です。 そこは城の中で最も結界が強固であり、彼の魔力が色濃く残っている場所。 私が身を隠すには、そこしかありません。

「奥様、急いでください! 奴らが来ます!」

私の前後を固めるのは、五人の「影」たちと、三人の近衛騎士。 彼らは皆、すでに満身創痍でした。 鎧は砕け、黒装束は切り裂かれ、血が滲んでいます。 それでも彼らは、痛みを顔に出すことなく、私を守る壁となってくれていました。

ドォォォォォォン!!

階下から、建物そのものが悲鳴を上げるような轟音が響きました。 続いて、バリバリバリ!という何かが破壊される音。

「……速い」

影の一人が、悔しげに呟きました。

「あの化け物……ネメシスとか言ったか。壁ごとぶち破って直進してきやがる」

帝国が誇る最新鋭の生体兵器、ネメシス。 その姿を思い出すだけで、背筋が凍りつきます。 全身を黒い鋼鉄のような装甲で覆われた、三メートル近い巨躯。 顔には目鼻がなく、ただ無機質な赤い光が明滅するセンサーがあるだけ。 そして、その腕力は……。

「きゃあああっ!」

悲鳴とともに、後方を守っていた騎士の一人が、階段の下から吹き飛ばされてきました。 彼は壁に激突し、ぐたりと動かなくなりました。

「ロベルト!」

私が叫ぼうとするのを、影のリーダーが制しました。

「振り返らないでください! 止まれば全滅です!」

非情な言葉ですが、それが現実でした。 私たちは今、死神に追いかけられているのです。

「くっ……奥様、先に行ってください! ここは俺たちが食い止めます!」

二人の影が、足を止めました。 彼らは覚悟を決めた目で、階段の踊り場で剣を構えました。

「ダメよ! あなたたちも一緒に……!」

「時間稼ぎが必要です。……旦那様から、貴女様とお腹の子を守れと厳命されています。これが俺たちの任務です」

彼らは、ふっと笑いました。 それは、死地に赴く者とは思えないほど、穏やかな笑みでした。

「奥様。……旦那様に伝えてください。『俺たちの分まで、最高の家庭を築いてください』と」

「……っ!」

言葉が出ませんでした。 私は涙をこらえ、彼らに背を向けました。

「……必ず、伝えます。ありがとう!」

再び走り出した私の背後で、激しい剣劇の音と、不気味な重低音が響き始めました。 そして、数秒後には、短い断末魔の叫びが聞こえ……静寂が訪れました。

(ごめんなさい……ごめんなさい……!)

私は唇を噛み締め、階段を駆け上がりました。 彼らの命を無駄にしてはいけない。 一秒でも長く生き延びて、ジークハルト様が帰ってくるまで持ちこたえることが、私にできる唯一の報いなのです。

                  ◇

ようやく、最上階に辿り着きました。 目の前には、重厚なオリハルコン製の扉があります。 聖域への入り口です。

「開いて!」

私が手をかざすと、扉に刻まれた魔法陣が紫色に発光し、ゴゴゴ……と音を立てて開きました。 この部屋は、ジークハルト様の魔力波長に登録された者しか入れません。 つまり、彼と、妻である私だけ。

私たちは部屋の中に滑り込み、すぐに扉を閉めました。 内側から何重もの魔法鍵をかけ、さらに物理的な閂(かんぬき)も下ろします。

「はぁ……はぁ……」

私は扉に背を預け、ズルズルと座り込みました。 残った護衛は、影が二人と、騎士が一人だけ。 皆、肩で息をし、剣を握る手が震えています。

「……ここは、なんて静かなの」

聖域の中は、外の喧騒が嘘のように静まり返っていました。 広さは大広間ほどもあり、床には真っ白な大理石が敷き詰められています。 部屋の中央には、魔力を増幅させるための巨大な水晶が安置されており、天井の高い窓からは、青白い空が見えました。

空気中には、ジークハルト様の魔力が濃密に満ちています。 私にとっては、彼の匂いに包まれているようで心地よい空間ですが、敵にとっては重圧となるはずです。

「これで……少しは時間が稼げるはずです」

影のリーダーが、傷口を押さえながら言いました。 しかし、その表情は晴れません。

「ですが、あの化け物は物理攻撃が主体です。結界魔法も、物理的な破壊力の前では……」

ドォォン!!

彼の懸念を肯定するように、扉の外から衝撃が伝わってきました。 分厚いオリハルコンの扉が、大きく歪みました。

「なっ……!?」

「早すぎる……! もう突破したのか!?」

ドォォン!! ドォォン!!

ハンマーで叩くような、規則的で暴力的な音。 一撃ごとに、扉の中央が内側へと凹んできます。 魔法陣がバチバチと火花を散らし、悲鳴を上げています。

「くっ……結界が持たない!」 「総員、戦闘配置!」

生き残った三人が、私を背に庇うように立ち塞がりました。 私は震える手でお腹を抱きしめ、後ずさりました。 水晶の陰に隠れますが、ここも安全とは言えません。

メキメキメキッ……!

嫌な音がして、扉の蝶番(ちょうつがい)が弾け飛びました。 そして。

ドガァァァン!!!!!

扉が吹き飛び、部屋の中へと転がり込んできました。 舞い上がる粉塵。 その向こうから、ゆっくりと姿を現したのは。

「……ごきげんよう、かくれんぼは終わりのようですね」

薄ら笑いを浮かべたヴァイサと、その背後に佇む黒い巨神、ネメシスでした。

ネメシスの黒い装甲には、先ほどの戦闘でついた傷一つありません。 その手には、ひしゃげた鉄くずのようなものが握られていました。 よく見れば、それは私のために戦ってくれた影たちが使っていた剣の残骸でした。

「ひっ……」

恐怖で喉が引きつりました。

「さあ、エルサ様。無駄な抵抗はおやめなさい。貴女の護衛たちは、もう虫の息でしょう?」

ヴァイサが優雅に手招きしました。

「大人しくこちらへ来れば、これ以上の殺生はしませんよ。お腹のお子さんのためにも、賢明な判断を」

「……お断りします」

私は水晶の陰から顔を出し、精一杯の虚勢を張りました。

「貴方は嘘つきです。ここで私を捕らえたら、次はジークハルト様を殺し、この領地を焼き払うつもりでしょう? 帝国のやり方は知っています!」

「おや、よくご存知で。……ええ、その通りです。魔力無効化の希少サンプルである貴女さえ手に入れば、あとは用済みですからね」

ヴァイサは悪びれもせず認めました。

「ジークハルトなど、所詮は旧時代の遺物。個人の魔力に頼ったワンマンアーミーです。これからの時代は、我が帝国の科学と魔法が融合した『魔導兵器』が支配するのです」

彼はネメシスの黒い装甲を愛おしそうに撫でました。

「見てください、このネメシスを。あらゆる魔法攻撃を吸収し、物理攻撃力はドラゴンの十倍。疲れを知らず、感情もなく、ただ命令を遂行する完璧な兵士……。これさえ量産できれば、世界は我が帝国のものだ!」

「そんなもの……ただの人形じゃないですか!」

「人形? いいえ、進化です。……さあ、ネメシス。邪魔者を排除しなさい」

ヴァイサが命令を下しました。 ネメシスの赤いセンサーが点滅し、グオォォォ……という駆動音が響きました。

「させるかぁっ!」

残った護衛たちが、決死の覚悟で飛びかかりました。 影たちが左右からかく乱し、騎士が正面から剣を突き立てようとします。

しかし。

ブォンッ!

ネメシスが腕を無造作に振るいました。 ただそれだけで、突風が発生しました。 影たちは木の葉のように吹き飛ばされ、壁に叩きつけられました。 騎士の剣は、ネメシスの装甲に当たった瞬間、ガラス細工のように砕け散りました。

「がはっ……!」

騎士が、ネメシスの巨大な手に首を掴まれ、吊り上げられました。

「やめて!」

私が叫んだ時には、もう遅かったのです。 騎士はゴミのように投げ捨てられ、床を転がって動かなくなりました。

全滅。 私を守る壁は、なくなりました。

「ふふっ。あっけないものですね」

ヴァイサが笑いながら近づいてきます。 ネメシスもまた、ズシン、ズシンと床を揺らしながら歩み寄ってきます。

私は後ずさりし、背中が冷たい水晶に当たりました。 もう、逃げ場はありません。

「さあ、エルサ様。私の手を取ってください」

ヴァイサの手が、私の目の前に差し出されました。 その手を取れば、私は実験動物として一生飼い殺しにされる。 そして、ジークハルト様や子供とも二度と会えなくなる。

(嫌……絶対に嫌!)

恐怖で涙が溢れます。 でも、不思議と諦める気にはなれませんでした。 私の中にある何かが、強く叫んでいるのです。 『戦え』と。

私は、お腹の子を守るように両手を添え、ヴァイサを睨みつけました。

「……触らないで」

「往生際が悪いですね。では、ネメシスに運ばせましょうか。少々乱暴になりますが」

ヴァイサが顎でしゃくると、ネメシスが巨大な手を伸ばしてきました。 黒い鋼鉄の指が、私の体を掴もうと迫ります。

(ジークハルト様……!)

私は心の中で彼の名前を叫びました。 助けて。 でも、彼は間に合わない。 なら、私がやるしかない。

私は目を閉じず、迫り来るネメシスの手を見据えました。 ヴァイサは言いました。ネメシスは「魔導兵器」だと。 科学と魔法の融合。 つまり、その動力源には、必ず「魔力」が使われているはず。

もし、私の力が……「魔力無効化」が、生物だけでなく、機械仕掛けの魔力にも通用するとしたら?

(賭けるしかない!)

私は逃げるのをやめました。 逆に、一歩前へ踏み出しました。

「え?」

ヴァイサが意表を突かれて声を上げました。 私は、目の前に迫ったネメシスの巨大な指に向かって、自分の両手を突き出しました。

「止まりなさいッ!!」

私の手のひらが、ネメシスの冷たい装甲に触れました。

その瞬間。

バチバチバチッッ!!!!!

激しいスパーク音と共に、青白い電流のようなものがネメシスの全身を駆け巡りました。

「グ、ガガガ……!?」

ネメシスの動きが止まりました。 赤いセンサーが激しく明滅し、体内の機械が異音を発し始めます。 キュイイイイン……という、エネルギーが逆流するような高周波音。

「な、なんだ!? 何をした!?」

ヴァイサが狼狽えました。

「まさか……魔力回路がショートしているのか!? バカな、ネメシスの装甲は対魔法コーティングされているはずだぞ!?」

「魔法じゃありません!」

私は叫びました。 手のひらから、ネメシスの体内にある膨大な魔力が、私の体を通じて地面へと逃げていく感覚がありました。 まるで、ダムの決壊した水を排水しているような感覚。

「私の力は、『無効化』です! どんなに精巧な魔導回路でも、魔力が通わなければただの鉄屑よ!」

「おのれ……! 離れろ! ネメシスから離れろ!」

ヴァイサが懐から銃のようなものを取り出し、私に向けました。 魔導銃です。

「死にたくなければ手を放せ!」

「放しません!」

私は必死でネメシスの指にしがみつきました。 放せば、再起動してしまうかもしれない。 完全に沈黙するまで、絶対に放さない。

「ええい、忌々しい女め! 死ね!」

ヴァイサの指が引き金にかかりました。 銃口が光ります。

(ああ、ごめんなさい、あなた)

私はお腹の子に謝りました。 でも、お母様は最後まで戦ったわよ。

銃声が響く――その刹那。

ドガァァァァァァァァァン!!!!!

天井が落ちてきました。 いいえ、天井ごと、空が降ってきたのです。

凄まじい衝撃波が部屋を揺らし、ヴァイサが吹き飛ばされました。 ネメシスさえも、その衝撃でよろめき、私の手から離れました。

舞い上がる瓦礫と粉塵。 天井に空いた巨大な穴から、一筋の銀色の光が差し込みました。

そして。 その光の中に、漆黒の翼を広げたようなシルエットが降り立ちました。

「……俺の妻に、銃口を向けたな?」

地獄の底から響いてくるような、怒りに満ちた声。 その声を聞いた瞬間、私の目から涙が堰(せき)を切って溢れ出しました。

「ジークハルト様……!」

そこに立っていたのは、返り血で真っ赤に染まったマントを羽織り、鬼神のごとき形相をしたジークハルト様でした。 彼は、手にしていた大剣を一振りし、付着していたキメラの血を払いました。

「遅くなってすまない、エルサ」

彼が私を見た瞬間、その表情が苦痛に歪みました。 私のボロボロのドレス、頬についた煤(すす)、そして倒れている護衛たちを見て、事態の深刻さを悟ったのでしょう。 そして同時に、私が無事であることに安堵し、その安堵がすぐにどす黒い殺意へと変わりました。

彼は、ゆっくりとヴァイサの方へ向き直りました。

「……貴様か。俺の城を汚し、俺の部下を殺し、あまつさえエルサを傷つけようとした愚か者は」

「ひっ……!?」

ヴァイサは腰を抜かし、後ずさりました。 彼が持っていた魔導銃は、先ほどの衝撃でひしゃげて使い物になりません。

「あ、ありえない……! キメラ軍団はどうした!? 数百体いたはずだぞ!? こんな短時間で戻ってこられるわけが……」

「あんな雑魚ども、片手間で十分だ」

ジークハルト様は冷たく言い放ちました。

「俺が本気を出せば、国の一つや二つ、地図から消せる。……それをしなかったのは、エルサが悲しむからだ。だが」

彼の一歩ごとに、床の大理石が砕け散ります。 部屋中の空気が重くなり、呼吸すら困難なほどのプレッシャーがヴァイサを襲います。

「お前たちは、一線を越えた。……慈悲は期待するな」

「ひ、ひぃぃぃ! ネメシス! やれ! こいつを殺せ!」

ヴァイサが絶叫しました。 ショートしかけていたネメシスが、再起動しようと身を起こします。 腐っても最新兵器、まだ動くようです。

「グオォォォ……!」

ネメシスが巨大な拳を振り上げ、ジークハルト様に襲いかかりました。 対魔導師用の兵器であるネメシスは、魔法攻撃を吸収します。 しかし、ジークハルト様は魔法を使いませんでした。

彼は大剣を構えもしませんでした。 ただ、素手で。 迫り来るネメシスの鋼鉄の拳を、片手でガシッと受け止めたのです。

「な……っ!?」

ヴァイサの目が飛び出しそうになりました。

「……硬いな。いいサンドバッグだ」

ジークハルト様はニヤリと笑いました。 そして、受け止めた拳を握り潰す勢いで締め上げると、そのままネメシスの巨体を一本背負いのように投げ飛ばしました。

ズガァァァン!!

数トンの巨体が宙を舞い、壁に激突しました。 城が傾くほどの衝撃。

「対魔法装甲? 関係ないな。俺は強化魔法で身体能力を上げているだけだ。殴れば壊れる、単純な理屈だ」

彼は倒れたネメシスに近づき、その胸部装甲――動力炉がある部分を、素手で引き裂きました。 まるで濡れた紙を破るように。

「ギャガガガガ……」

ネメシスが断末魔のような機械音を上げます。

「消えろ」

ジークハルト様が、露出した動力炉に直接、圧縮した魔力を流し込みました。 私の「魔力無効化」とは逆の、「魔力過剰供給」による内部破壊です。

カッッッ!

ネメシスの内部から光が漏れ出し、次の瞬間、大爆発を起こしてバラバラに吹き飛びました。 ジークハルト様は爆風をものともせず、その場に立ち尽くしていました。

帝国の最高傑作が、わずか数分でスクラップと化したのです。

「あ……あ……」

ヴァイサは言葉を失い、失禁していました。 自分の知る常識が、目の前で粉々にされたショックで、精神が崩壊しかけているようです。

ジークハルト様は、ゆっくりとヴァイサの前に立ちました。

「さて。……何か言い残すことはあるか?」

「た、助け……私は特使だぞ! 殺せば国際問題に……!」

「国際問題? 構わん。喧嘩を売ってきたのはそっちだ。……ドラグニア帝国が文句を言ってきたら、俺が直接皇帝の首を取りに行くだけだ」

彼の目に、揺らぎはありませんでした。 本気です。この人は、妻のためなら世界大戦すら辞さない覚悟を決めているのです。

ジークハルト様が大剣を振り上げました。

「待ってください!」

私が声をかけました。 彼はピタリと動きを止め、私を見ました。

「……止めるのか、エルサ」

「いいえ。……ただ、子供が見ています」

私はお腹に手を当てました。

「あまり、残酷な殺し方は教育によくありません。……一撃で、苦しませずに終わらせてあげてください」

私の言葉に、ジークハルト様は少しだけ毒気を抜かれたような顔をし、それからフッと優しく笑いました。

「……そうだな。お母様の言う通りだ」

彼は剣を下ろしました。 そして、代わりに指先から小さな光弾を放ちました。

パシュッ。

乾いた音がして、ヴァイサの眉間に小さな穴が開きました。 彼は自分が死んだことすら気づかないまま、後ろに倒れました。 あっけない最期でした。

部屋に静寂が戻りました。 天井の穴からは、美しい青空が見えています。

ジークハルト様は剣を捨て、私の方へ歩いてきました。 血まみれの手を気にしながら、触れるのを躊躇っています。

「……汚れてしまったな」

彼は悲しげに言いました。

「俺はやはり、血に塗れた化け物だ。……こんな手で、お前たちを抱きしめる資格なんて……」

「あります!」

私は彼の胸に飛び込みました。 血の匂いがしました。鉄の匂いがしました。 でも、それ以上に、愛の匂いがしました。

「貴方様の手は、私たちを守ってくれた英雄の手です。……世界一、温かくて綺麗な手です」

私は彼の手を取り、自分の頬に、そしてお腹に当てました。

「おかえりなさい、パパ」

その言葉を聞いた瞬間、鬼神のようだった彼の顔がくしゃくしゃに歪みました。

「……ただいま。ただいま、エルサ」

彼は私を強く、強く抱きしめました。 私も彼の背中に腕を回し、声を上げて泣きました。

怖かった。本当に怖かった。 でも、信じていてよかった。

聖域の床には、壊れた兵器の残骸と、倒れた敵の死体がありました。 けれど、私たちの周りだけは、温かい光に包まれていました。 これが、私たちの勝利です。

後日談ですが、この事件をきっかけに、ドラグニア帝国はジークハルト辺境伯家に対し、正式に謝罪と賠償を申し出ることになります。 「たった一人で軍団を壊滅させる魔王」と、「最新兵器を素手で止める魔女」がいる国になんて、二度と手を出したくないと思ったのでしょう。

こうして、外敵の脅威も去り、私たちは本当の意味での平穏を手に入れました。 あとは、新しい家族の誕生を待つばかりです。

……と思っていたのですが。 どうやら、私の出産自体が、また一つの「伝説」を作ることになりそうなのです。 双子? いえ、三つ子? そして、お腹の中からすでに凄まじい魔力を放っているとかいないとか……。

波乱万丈な辺境伯夫人の毎日は、まだまだ続きそうです。
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