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第一章その1 ~始めよう日本奪還~ 少年たちの苦難編
不可思議な足跡
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「カノン、桟橋の状況は?」
「1本はやられたけど、他はなんとか守れたわ。それよりあんた、機体ちゃんと動いてるの? 最後射軸がずれてたじゃない」
「よく見てるな」
カノンは副官でありながら衛生兵の資格も持つので、他人の不調に敏感なのだ。
誠が整備モードに切り替えると、画面に人型重機が図示された。
部位ごとの稼働率が示され、機体の指と連動する右前腕の筋群が、多数断裂しているようだ。
「かなり傷んでるな。耐用時期は過ぎてるし、さっきの戦闘で一気にガタが来たと思う。あのバスに弾が当たらなくて良かったけど」
誠の答えに、カノンは大きく溜め息をついた。
「あんたねえっ、あれだけ言ったのに、何で自分の機体も補修させないのよっ」
「い、いや、分かってるけどしょうがないだろ。部品が足りてないんだから」
「だからって」
「まあカノっちも、イチャつくんはそのへんにしいや」
そこでモニターに映るショートカットの少女が口を挟んだ。
名を難波このみという彼女は、大抵いつもニヤニヤしており、事あるごとに誠達をからかう……が、相手が本当に傷つく事は言わない。
髪は明るい栗色だが、別に染めているわけではなく、厳しい環境変化による体質の変化らしい。
「そんで鳴っち、どうせよそもピンチなんやろ? もっぺん前に出るんかうちら?」
「いや、要請はあったし、俺もそうしたいけど……まだ『上』の許可が出てない。一応こっちからも連絡は取ってるけど」
誠は画面上で空しく続く、緊急回線の明滅を見つめた。
通信能力は中佐の乗る指揮車よりはるかに劣るが、ちょっとした位置やタイミングで電波が繋がる事があるので、複数箇所から打電するのが今の常識だ。
「ったくじれってえな。もっとガンガン暴れたいのによ」
「おい宮島、焦ると死に急ぐぞ。俺はこれ以上、仲間の弔いは御免だ」
画面にはもう2人、少年達が映し出された。
短髪で活発そうな方が宮島武志、細身でスキンヘッドなのが香川芳春。
2人とも誠が指揮する人型重機小隊のパイロットであり、香川が頭を丸めているのは、父親が僧だった事に由来するのだ。
「俺はこんなとこじゃ死なねーよ、まだオヤジのお好み焼き屋を再建してないもん。けど特務隊の連中、どこで何やってんだろうな」
「さあ、いつも通りスコア稼ぎだろ? 政治家の後ろ盾があるし、実質この場の指揮官はあいつらだ。我らが第5船団も、上がこれじゃ、増えるは仏さんばかりだ」
ちなみに第5船団というのは、誠達が所属する地方政府の名前である。
敵に襲われないよう、海上の船に機能を移した政府は『船団政府』と呼ばれており、この第5船団は、中四国沿岸の避難区を取りまとめていた。
今回訪れた避難区は、旧香川県の北西に位置し、元は浦島太郎や人魚の伝説が伝わるのどかな半島だった。
怪物どもの猛攻で讃岐平野の防衛線が破綻し、大がかりな避難が必要になったため、誠達のように他の土地からヘルプで部隊が来ているのだ。
……だがそんな状況にも関わらず、この避難作戦を指揮する事実上の責任者は、前線で好き勝手に『狩り』を楽しんでいるという。
『調査及び特殊任務に関わる超法規的人型重機小隊』……通称『特務隊』と呼ばれるパイロット集団は、各地の戦闘に率先して駆けつけ、かつ協力はせずに手柄のみを独占していく。
また素質のある優秀なパイロットを引き抜き、それに応じない者には嫌がらせを厭わない。
そうやって、まるで悪質な戦士ギルドのようにメンバーを増やす彼らは、いつしか第5船団で不可侵の存在となっていた。
噂によれば、後ろ盾の政治家に代わって汚れ仕事をしているらしいが、いずれにしても彼らの力は、各居住区の指揮官をも凌いでいた。
あたかも革命直後の国のように、コネと暴力が支配する世界。それは即ち地獄に等しい。
「くそっ、早く行かないと全滅するぞ……!」
誠は苛立ちを隠せなかったが、そこでふと妙なものを目にした。
(……何だ?)
良く見ると、それは動物の足跡だった。一様に小さくて、子犬が歩き回ったぐらいの大きさしかない。
(さっきまでこんなのあったか? いや、そもそもどうして乗る時に気付かなかったんだ……?)
誠が指で足跡に触ると、不意に視界にノイズが走った。
「……!!!???」
「1本はやられたけど、他はなんとか守れたわ。それよりあんた、機体ちゃんと動いてるの? 最後射軸がずれてたじゃない」
「よく見てるな」
カノンは副官でありながら衛生兵の資格も持つので、他人の不調に敏感なのだ。
誠が整備モードに切り替えると、画面に人型重機が図示された。
部位ごとの稼働率が示され、機体の指と連動する右前腕の筋群が、多数断裂しているようだ。
「かなり傷んでるな。耐用時期は過ぎてるし、さっきの戦闘で一気にガタが来たと思う。あのバスに弾が当たらなくて良かったけど」
誠の答えに、カノンは大きく溜め息をついた。
「あんたねえっ、あれだけ言ったのに、何で自分の機体も補修させないのよっ」
「い、いや、分かってるけどしょうがないだろ。部品が足りてないんだから」
「だからって」
「まあカノっちも、イチャつくんはそのへんにしいや」
そこでモニターに映るショートカットの少女が口を挟んだ。
名を難波このみという彼女は、大抵いつもニヤニヤしており、事あるごとに誠達をからかう……が、相手が本当に傷つく事は言わない。
髪は明るい栗色だが、別に染めているわけではなく、厳しい環境変化による体質の変化らしい。
「そんで鳴っち、どうせよそもピンチなんやろ? もっぺん前に出るんかうちら?」
「いや、要請はあったし、俺もそうしたいけど……まだ『上』の許可が出てない。一応こっちからも連絡は取ってるけど」
誠は画面上で空しく続く、緊急回線の明滅を見つめた。
通信能力は中佐の乗る指揮車よりはるかに劣るが、ちょっとした位置やタイミングで電波が繋がる事があるので、複数箇所から打電するのが今の常識だ。
「ったくじれってえな。もっとガンガン暴れたいのによ」
「おい宮島、焦ると死に急ぐぞ。俺はこれ以上、仲間の弔いは御免だ」
画面にはもう2人、少年達が映し出された。
短髪で活発そうな方が宮島武志、細身でスキンヘッドなのが香川芳春。
2人とも誠が指揮する人型重機小隊のパイロットであり、香川が頭を丸めているのは、父親が僧だった事に由来するのだ。
「俺はこんなとこじゃ死なねーよ、まだオヤジのお好み焼き屋を再建してないもん。けど特務隊の連中、どこで何やってんだろうな」
「さあ、いつも通りスコア稼ぎだろ? 政治家の後ろ盾があるし、実質この場の指揮官はあいつらだ。我らが第5船団も、上がこれじゃ、増えるは仏さんばかりだ」
ちなみに第5船団というのは、誠達が所属する地方政府の名前である。
敵に襲われないよう、海上の船に機能を移した政府は『船団政府』と呼ばれており、この第5船団は、中四国沿岸の避難区を取りまとめていた。
今回訪れた避難区は、旧香川県の北西に位置し、元は浦島太郎や人魚の伝説が伝わるのどかな半島だった。
怪物どもの猛攻で讃岐平野の防衛線が破綻し、大がかりな避難が必要になったため、誠達のように他の土地からヘルプで部隊が来ているのだ。
……だがそんな状況にも関わらず、この避難作戦を指揮する事実上の責任者は、前線で好き勝手に『狩り』を楽しんでいるという。
『調査及び特殊任務に関わる超法規的人型重機小隊』……通称『特務隊』と呼ばれるパイロット集団は、各地の戦闘に率先して駆けつけ、かつ協力はせずに手柄のみを独占していく。
また素質のある優秀なパイロットを引き抜き、それに応じない者には嫌がらせを厭わない。
そうやって、まるで悪質な戦士ギルドのようにメンバーを増やす彼らは、いつしか第5船団で不可侵の存在となっていた。
噂によれば、後ろ盾の政治家に代わって汚れ仕事をしているらしいが、いずれにしても彼らの力は、各居住区の指揮官をも凌いでいた。
あたかも革命直後の国のように、コネと暴力が支配する世界。それは即ち地獄に等しい。
「くそっ、早く行かないと全滅するぞ……!」
誠は苛立ちを隠せなかったが、そこでふと妙なものを目にした。
(……何だ?)
良く見ると、それは動物の足跡だった。一様に小さくて、子犬が歩き回ったぐらいの大きさしかない。
(さっきまでこんなのあったか? いや、そもそもどうして乗る時に気付かなかったんだ……?)
誠が指で足跡に触ると、不意に視界にノイズが走った。
「……!!!???」
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