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第一章その2 ~黒鷹、私よ!~ あなたに届けのモウ・アピール編
特務隊の慰問
しおりを挟む突然の声に誠達が振り返ると、格納庫の入り口に立つ青年が目に入った。かなり背が高く、パイロットスーツの胸元からは、金属のアクセサリーが覗いていた。
名は不是唯剋……先の戦いで誠達の救援申請を突っ撥ねた、特務隊のリーダーである。
彼の後ろには、十数人の一団が付き従っている。
いずれも歳若い少年少女、かつ名の知れた人型重機のパイロットであり、全員が3桁以上の撃墜数を誇る。強ければ許されるの精神で、機体も特注で改良したものが多く、その外見も多岐に渡っていたのだ。
不是は大股で格納庫に踏み込むと、誠と尚一の前に立った。
尚一は恐る恐る彼に尋ねる。
「……あ、あの、整備課にどういったご用件でしょうか……?」
「っせえよ。慰問とでも記録しとけや」
尚一を軽々と突き飛ばすと、不是は誠の胸倉を掴んで引き寄せた。
「あ~あ、始まっちゃった」
巻き髪を長く伸ばした少女が面白そうに呟いた。
見目麗しいが、いかにもチャラついた外見であり、この時代では貴重な化粧も施している。彼女は不是のパートナーらしく、集団内でも一際態度が大きかった。
不是は誠を睨みながら言葉を続ける。
「おいてめえ、俺は撤退指示を出しただろうが。何勝手な事してくれてんだ」
「……申し訳ありません。すぐ近くで救援要請があったため……」
「んなこた聞いてねえんだよ、俺の命令を無視した理由を聞いてるんだ」
「……それは……要請を受け、気が動転しておりました。全て自分の責任です」
「ちっ……!」
不是は露骨に苛立った様子で顔を顰める。
「いい気になるなよ、今じゃろくに動けねえポンコツだろうが。この英雄殺しが……!」
「…………っ!」
その言葉を聞いた途端、誠は露骨に動揺してしまう。手が震え、急速に呼吸が乱れた。鼓動は早鐘のように肋骨を打ち、ろくに思考が定まらない。
「何こいつ、急にキョドりだして。キモくない?」
先ほどの巻き髪の女が面白そうに笑っている。
「……ケッ、ビビリ野郎が、テンパるぐらいなら最初からやるな。てめえらの補給を打ち切るぐらい簡単なんだぜ」
青年は誠を掴む手を下げ、誠の腹に膝の一撃を見舞った。
「っ!!!」
「ちょっと、ふざけないで! 怪我人なのよ!」
カノンが止めようとするが、1人のパイロットが素早く立ち塞がった。
「……やめときなよ、余計こじれるからさ」
長髪をオールバックにした気の強そうな少女であり、手には長い電磁槍を持っていた。槍の口金には、金ピカの鯱が付けられていて、どうやら派手な趣味のようだ。
難波や宮島、香川も前に出るが、更にもう2人のパイロットが道を塞いだ。
一人は小柄で身のこなしの素早い少年。もう一人は2メートル近い長身で、体格のいい少女だった。
最初の長髪の少女が、一同を代表して発言した。
「……すぐ終わるから、少しだけ我慢して欲しいのよね。その方がお互い怪我が少なくなるでしょ?」
「おお、ナイス新入りども、その調子で頑張りなさいな」
リーダー格の女は、そう面白そうに言葉をかける。
誠も呼吸を整えながら仲間を制した。
「……カノン、みんなも下がっててくれ、俺が命令違反をしたせいだ」
カノン達は無言でその場に立ち尽くしている。
誠は膝を付いたままに頭を下げた。
「……申し訳、ありませんでした。補給の件、どうかご容赦下さい」
「うわ、ダッサ……ねえ、て言うかこんなこ汚い基地早く出ようよ。貧乏臭くなりそうだし、蛭間のおっさんにも呼ばれてるじゃん」
「……仕方ねえな。おい、これが最後通告だ」
女に促され、不是は誠を見下ろしたまま声をかける。
「補給を打ち切られたくなかったら、俺の命令には従え。それから整備、機体が壊れてんなら、寝ないで直せ」
不是はそう言って踵を返し、特務隊の一同は立ち去って行った。
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