新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART1 ~この恋、日本を守ります!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

文字の大きさ
51 / 117
第一章その3 ~とうとう逢えたわ!~ 鶴ちゃんの快進撃編

とうとう逢えたわ!

しおりを挟む


 激しい稲光が荒れ狂い、その場の敵を根こそぎ焼き尽くしていく。

 あの狗王型でさえ無様な悲鳴を上げながら、呆気なく崩れ落ちていった。

「…………???」

 誠はその様を呆然と眺めていたが、やがて虚空から何かが飛び降りてきた。

 それは一言で例えるなら、巨大な白い獅子である。大きさは狗王型にも匹敵するだろう。

 やがて獅子が言葉を発した。

「良かったな鶴、黒鷹は無事のようだ!」

 獅子の頭上には、まだ歳若く美しい少女がいる。

 虚空を見つめる涼しげな目元と、肩に届かぬセミロングの髪。

 風にたなびく空色の着物、そして時代錯誤の古風な鎧。

 まるで混沌の現代に降り立った、和装の戦女神ワルキューレのようであるが、何より誠を驚かせたのは、彼女が夢で見た少女に瓜二つだった事だ。

「こいつめ、柄にもなく緊張してるな」

 獅子は頭上の少女に呼びかける。

「おい鶴、しっかりしろっ、黒鷹はそっちじゃないだろ!」

「はにゃっ!? ち、違うの?」

 少女は忙しく周囲を見渡し、誠の機体に目を留める。

「い、いた! 確かに黒鷹の霊気だわ。はあはあ、どうれ、早く顔を見てお話ししたいわ……!」

(うわ、なんか怖い!)

 手をわきわきさせながらこちらを見つめる少女に、誠は内心ドン引きする。

 少女は獅子からジャンプし、遠慮なく誠の機体によじ登ると、すまして語りかけてきた。

「あーおほん、もうし、すみませんがちょっと開けてもらえないでしょうか。別に顔が見たくてこじ開けようってわけじゃないので、いいからさっさとお開けなさい」

 言ってどんがどんが機体を叩く少女に、誠はますます操縦席コクピット開閉装甲ハッチを開く気が無くなった。

 開けたら最後、酷い目に遭う。直感でそう感じたのだが……少女が機体を叩くその手が、胸部左側の非常開閉装置に触れてしまった。

「あら、何かしらここ。フタが開くようになってるけど……そして中には、取っ手らしきものがあるわ」

「ち、違う! それは自爆スイッチだ。決してひねってはいけな……」

「そこに取っ手があるのなら、迷わずひねる、それが鶴ちゃん」

 外部拡声器スピーカーで呼びかける誠の忠告も聞かず、少女は軽率を絵に描いたようにレバーを捻った。

 やがてハッチが開き、操縦席が外気にさらされてしまう。そしてあろうことか、少女は躊躇なく中に進入してきた。

「何よこれ、ずいぶん中はスカスカね。痩せたカニと同じ理屈かしら。もしもし、お留守ですかー? いらないなら貰ってもいいですかー?」

 少女はいきなり暗い場所に入ったせいか、奥の誠に気付いてないようだ。

「色々と珍しそうなものがあるけど、暗くてよく見えないわ。あら、ここはちょっと柔らかいわね。ぬう、これはもしかして、人?」

 少女は誠をあちこち触りまくり、顔を近付けて確認する。

 やがて目が慣れたのか、少女はいきなり絶叫した。

「わああああっ、きゃあああああああっ!!!」

「うわっ、どうした急に!?」

 少女はロケットのように飛び上がり、盛大にバウンドしてモニターと計器を破壊した。飛び散る機器の破片も気にせず、彼女は後ずさりして誠を指差す。

「こ、コマ、黒鷹よ! でっかい鎧の中に、ちっちゃい黒鷹が入ってたわ!」

「落ち着け鶴! 黒鷹は小さくない、鎧がでかすぎるだけだ……ていうか、前にもそれに乗っただろう」

「そ、それもそうね。私とした事が、生身の臨場ライブ感で取り乱したわ」

 獅子の言葉に、少女は気を取り直して立ち上がった。

 それから、「あい、ごめんなすって」などと言いながら機械類をまたぐと、いそいそと誠の傍に寄ってくる。

「な、何だよ……」

 誠がたじろいだ瞬間、少女は誠にしがみついていた。

「なっ!!? ど、どどどうしたっ? 大丈夫か、何かあったのか?」

「……黒鷹だ、500年ぶりの黒鷹だ。会いたかった……!」

 少女は誠の顔に頬を寄せ、頬擦りするように小さく動かす。

「ど、どこのどなたか、全く存じ上げないんだけど……???」

「鶴です。そしてあなたのお嫁なのです」

「嫁!? いや俺独身だし、て言うかまるで初対面だし!」

 誠はツッコミを入れたが、少女の勢いに圧倒されて押し除ける事が出来ない。

 あの夢以外、こんな鎧の女の子には面識が無いはずなのだが……

 恐る恐る触れてみると、着物は今では珍しい絹のそれである。さらりとして柔らかく、見た目の割にかなり軽い。

 セミロングの黒髪は、上質のツバキ油でいたわったかのように艶やかで、香水ではない甘い優しい香りがしていた。

 今は俯き加減だが、化粧っけのない顔立ちは、明るく健康的な魅力があるのだ。

 一体この子は誰なのだろう? もしかしたら、自分が知らない許婚いいなずけかもしれない……などと思った瞬間、誠は更に信じられない物を目にした。

 眼前の巨獣がみるみる縮み、子犬サイズになったのだ。

(理由は、仕組みは? 質量保存はどうなってる?)

 驚く誠をよそに、それは身軽にコクピットに侵入してきた。

 少女の肩に飛び乗って、前足で頬をぷにぷにつつくのだ。

「あのさ鶴、感動の再会は後にしなよ。今は戦わないとみんな死ぬよ」

 大きさが縮んだせいか、獅子の声は随分可愛らしくなっている。

「確かにそうねコマ。よーし、頑張りますわよほどほどに!」

「ほどほどじゃなくて、うんと頑張りなよ」

 2人のやりとりを見るうちに、誠はようやく頭が働き始めた。

「もしかして、増援の……味方なのか?」

 と、その時、ふと画面上に新しい通信が入った。隊員からの近距離無線かと思ったが、信号を見るに長距離の外部通信である。

「長距離通信? 敵の電磁妨害ジャミングがあるのに、どうやって……」

 怪訝そうな誠をよそに、モニターに映る女性は安堵の表情を浮かべた。

 歳は二十代の後半ぐらいであろう。長い黒髪に切れ長の目元の、凛とした面立ちの美人である。

 今は座しているが、服装は指揮官クラスが着る自衛軍の正服ジャケット、そして膝上までのタイトスカートである。長身でスタイルの良い彼女には、特注品のようによく似合っていた。

 頭上には小さな略帽……ギャリソン・キャップまで被っている。

「う、嘘だろ……?」

 誠は再び息を飲んだ。

 女性はあの夢に出てきた女神とそっくりだったからだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...