新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART1 ~この恋、日本を守ります!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

文字の大きさ
58 / 117
第一章その3 ~とうとう逢えたわ!~ 鶴ちゃんの快進撃編

今までの苦労は一体……

しおりを挟む
 霧は木々に乱されながら、山肌を駆け下りていく。さながら白い瀑布のようだ。

 誠達の人型重機部隊は、高輪半島南部の山あいに待機しており、眼下には険しい谷……つまり日本を東西に横断する、中央構造線が見てとれる。

 鶴と狛犬のコマは、今は誠の後ろの補助席に座っていた。

 不意に誠の機体のモニターに、例の女神の姿が映った。

「それでは始めるぞ。知っての通り、先の戦いでお前達の居住区は守れたものの、他の地域は依然として苦境のままだ」

 女神は誠達の画面に地図を表示して説明する。

「特に北西の平野部は、敵の別働隊が押し寄せた。おかげで避難区の多くは孤立状態にある。まずはこれらの避難区を助け、お前達の味方に付けるのだ」

 女神の言葉と共に、四国北西部の平野が拡大された。

「現状は敵の囲みがかなり厚いし、一度に相手どるのは骨だろう。邪気の霧も濃く、例え艦砲射撃をしても、威力がかなり減衰するしな。だからこそ、お前達で敵の補給路を叩くのだ」

「補給路を?」

「そうだ。この谷を通る抜け道は、敵が戦力を動かすために不可欠なもの。ここを叩けば必ず敵は浮き足立ち、平野部の囲みも乱れる。こんなところだが、質問はあるか」

「無いわナギっぺ」

「いや、あるよ! 具体的な作戦をまだ、」

 慌てる誠だったが、鶴は強引に通信を切ってしまった。霧の中で通信出来るのは、鶴の神通力とやらのおかげなので、最早誠にはどうしようもない。

「大丈夫よ黒鷹、私がいるわ。こっちよ」

 鶴の案内で、誠達は山肌を駆け抜けていく。

 レーダーすら効かぬ霧の中、敵の配置を事前に察し、素通りで進んでいるのだ。まるで一度攻略したゲームのようである。

 誠達が移動すると、山の木々が機体を避けるようにずれるが、誠はもうツッコミをいれなかった。

 やがて敵の大将の直上に来ると、鶴の合図で斜面に並んだ。なんとなく戦隊ヒーローの登場シーンのようだ。

「さあさあ、人の世に仇為す悪党ども、今日が年貢の納め時よ! 黒鷹、みんな、こらしめてやりなさい!」

 もうここまで来たら行くしかない。ともかく部隊は斜面を駆け下りた。

 その状態で鶴が念じると、天から雷が降り注ぎ、誠の機体の剣に宿った。誠はそのまま勢いに任せ、敵の大将に切りつける。

 大将はもがきながら悲鳴を上げ、谷に落下していった。山間の道路を埋め尽くす餓霊も、瞬く間に溶け落ちていく。

 この間、わずか10秒程度だ。

「な、なんやこれ、あっけなさ過ぎるやろ……」

「っつーかよ、俺ら今まで何やってたんだろな……」

 悩む難波や宮島だったが、画面には再び女神の姿が映る。

「何をぼやぼやしている、次だ次!」

「りょ、了解!」


 誠達は独楽鼠のように移動しては、同様の戦いを繰り広げ、敵部隊は激減していく。効率的に大将のみを狙っているため、既に7000近い敵が姿を消していた。

「ねえ鶴、これだけ後ろを突っついたら、さすがに敵も慌ててきたね。平野にいた奴らが戻ってきたよ」

 コマが半透明の地図をスクロールすると、敵は平野部にいた戦力の多数をこちらに向けてきたようだ。

「このままここで迎え撃ちますか?」

 誠の問いに、モニターに映る女神はにやりと笑った。

「いや、このぐらい誘い出せば、平野の守りも薄いはず。さあ今が好機だ、平野部に切り込み、孤立している人々を救い出すのだ!」

「了解!」

 段々慣れてきた誠達は、女神の言葉に力強く答えた。

 こちらへ向かう敵をかくれんぼのようにすり抜け、敵の大将へ突進する。

 巨大化したコマが敵の群れを飛び越え、鶴が放った火球が敵の大将を一撃で吹き飛ばしてしまう。

 厨子王型レベルの巨大な敵を瞬殺した鶴に、誠はひきつった顔で感想を述べた。

「……な、なんか前より威力が上がってないか?」

「勿論よ黒鷹、だいぶこの体に慣れてきたもの」

 鶴はすました顔で得意げだ。

 ひょっとすると、ディアヌスに代わって新しい魔王が来ただけなんじゃないか……と誠は思ったが、鶴が怒りそうなので黙っておいた。

 そこでコマが鶴の頬を前足で突っつく。

「鶴、機嫌のいいとこ悪いけど、そろそろ素通りしてた別働隊が戻ってくるよ」

 コマの言う通り、山間部に向かっていた敵が、慌ててこちらに戻って来ている。

 今度は奇襲も効かないだろうが……

「ナギッペ、敵が戻ってくるわよ」

 鶴が言うと、画面に映る女神は、頬杖をついたままニヤリと笑った。

「ふん、バカどもめ。移動に焦って霧が薄いぞ。さあ夏木よ、艦砲射撃をお見舞いしてやれ!」

「……や、やあ鳴瀬少尉。そんなわけで、またよろしく」

 夏木が疲れた顔で画面に映ると、彼方から光弾が降り注いでくる。

 あきしまから強力な砲撃が加えられ、折角戻ってきた敵は、完膚なきまでに叩きのめされていくのだ。

「いよっしゃあ! やったぜ!」

 飛び上がって喜ぶ一同だったが、女神は勝利の余韻に浸らせてくれない。

「お前達、何を安堵している? まだまだ多くの人が苦しんでいるのだ。さあ動け!」

「あ、あの、うちらちょっと休憩したいんやけど……」

「駄目だ。一刻を争う事態なのだ」

 女神は頑として譲らない。

 誠達は機体を走らせながら、ひそひそ声で話し合った。

「なあ隊長、これって前より苦しくなってねーか?」

「俺もそう思う。神は神でも邪神の方かもしれないぞ」

「聞こえているぞ!」

「ひえっ!?」

 レバーを握る手に力が入り、機体が高くジャンプした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...