新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART1 ~この恋、日本を守ります!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

文字の大きさ
65 / 117
第一章その4 ~さあ復活だ~ 懐かしきふるさとの味編

天守閣の合宿。鳳学習塾へようこそ

しおりを挟む
 天守閣には畳と座卓が並べられ、その上に資料がうず高く積まれていく。

 室内には神使や鳳の他に、難波、カノン、宮島、香川がいたが、彼らが殺人鬼のような目で睨んできたため、誠は内心震え上がった。

「……あ、あの、皆さん……?」

「鳴っち、あんた覚悟は出来てるやろなあ?」

「ご、ごめん、ほんと許して。俺1人じゃどうにもならないんだよ」

「あかん。言うこと聞いてもらうハードルが上がったと思いや」

 眼を光らせる難波の横で、カノンは自慢の包丁を研いでいる。

「そうね、あたしは手術の実験台になってもらうわ」

「そんじゃあ俺が押さえとくぜ」

「隊長さん、弔いは安くしとくからな」

 宮島と香川はバキボキ指を鳴らしている。

(こ、殺される……!!!)

 汗が滝のように流れる誠だったが、そこで鳳がぱん、と手を叩いた。

「はい皆さん、からかうのはその辺にして、お仕事を始めましょう。押収した資料を調べ、不正を徹底的に暴き出すのです。人の法で裁けぬものも、神界のそれに反していれば罰が下りますから」

「面白そうやな。神界の罰ってどんなんなん?」

 難波が座卓にひじを乗せて身を乗り出した。

「そうですね、人の罰とは違いますが……20年間、やる事為す事うまくいかず、周囲の人から蛇蝎だかつのごとく忌み嫌われるとか、ですか」

「ええやんええやん、それちょっと鳴っちにくれへん?」

「やめてくれ、昔から不幸は間に合ってるんだ。年に何回車に撥ねられたと思ってんだよ」

 誠が言うと、眼帯アイパッチを付けた狛犬が口を挟んだ。

「おんどりゃあ、アホ面しやがって、何が不幸じゃ。こうして調べられるだけでも幸せなんじゃい」

「そうです、姫様が魔界のモウ者を追い払って、邪気が減ったから私達が動けるのです」

「そうやで。邪気が多いと、敵の気配が見えにくいんや。姉さんら人間も、ワイら神使も、今まで大勢やられたんやぞ」

 牛やキツネの言葉に、誠は内心驚いた。てっきり毎日遊んでいると思っていた神使も、裏で苛烈な戦いを繰り広げていたのだ。

「そ、そうだったのか……それはその、大変なご苦労を……」

 誠が謝ると、神使は途端に調子に乗った。

「ようし、分かったらワシの肩もまんかい!」

「ワイにはおやつ持ってこい! 稲荷寿司も追加やで!」

 威勢のいい神使達だったが、そこで鳳が口を挟んだ。

「あなた達、あまり調子に乗ると代行様に言いつけますよ? 先日はデスクワークを抜け出したのに、後輩がいるとずいぶん元気ですね」

「ひっ!? 姉さん、ご勘弁を」

 神使達が大人しくなったので、鳳はカチャリと音を立てて太刀を置いた。

「ではこれより2時間、無駄口は厳禁とします。口を開けば斬るものとしますが、よろしいですか?」

 難波が冷や汗を流しながら耳打ちしてくる。

「あ、あかんで鳴っち、こりゃ嫁にしたら怖いタイプや。悪いこと言わへん、うちか、最悪カノっちにしとき」

「なんであたしが最悪なのよっ」

 カノンが抗議した所で、再び刀の鍔鳴りが響き渡る。

「……よろしいですか?」

『はいっ』

 よろしくなくても強要するタイプだと感じ、誠達は声を揃えた。



 一同は地獄のような仕分け作業に取りかかった。

 誠は最初仕分け方を神使に聞き、飛び蹴りされながら覚えて行ったが、慣れると逆に彼らのミスに気付くようになった。しかしそれを指摘すると、逆ギレした神使にキックを食らうので、結局のところ労働環境は改善されなかった。

 誠は頭を防御ガードしながら自分の作業に集中するも、やがてどうしても気になる事が出てきた。

 斬られるのは嫌だし、しかし気にはなるので、迷った挙句、意を決して鳳に言った。

「……あの、」

「それは遺言ですか?」

「き、聞いてから判断して下さい」

 鳳はしばらく黙っていたが、太刀を下ろして膝に手を置いた。

「聞きましょう」

 誠は鳳の前に移動すると、手にした資料をテーブルに置いた。

「蛭間の配下の取引で、タイミングに異常な点があるんです。平たく言えば、敵の襲撃と取引時期が合い過ぎてる」

 誠は大きな紙に地図を描き、各避難区の場所と、付近で戦闘のあった日付を書き込んでいく。

 隊員達はこれ幸いと見物し、神使達も資料を覗き込んだ。

「まずはここから。資料上のこの取引は、北西部の避難区が襲撃される3日前。これは1週間前です。他にも見ていくと……ここも、ここも。殆どの場所で、取引後すぐに襲撃が起こっています」

 鳳は姿勢を正したまま、怪訝そうに誠を見つめた。

「避難区の位置はともかく、全ての戦闘記録を覚えているのですか? 日付まで正確に?」

「完全じゃないかも知れませんが、一応覚えてます。格納庫に戻れば、端末にも記録してますから」

「なるほど、続けて下さい」

 鳳が頷いたので、誠は説明を続けていく。

「こうして見ていくと、物資のやりとりと敵の襲撃時期が合いすぎてて、蛭間一派の人間だけが、間一髪で被害が出ないようになってるんです。人相手ならともかく、相手は餓霊、そんな事が出来るでしょうか」

「…………普通なら、無理でしょうね」

 グーにした手を口元に当て、鳳は呟いた。丁度咳払いをするような姿勢である。

「と、ここまでがタイミングの問題で、次は取引の内容です。表のこの部分……移動された物資は、大型の餓霊に効果的な大火力の装備でしたが、それが取り除かれた数日後、この避難区は陥落してます。同様に他の場所も、必要な物資が削られ、戦力が激減した直後に襲撃している。ある程度他の場所もつついていますが、敵全体の規模から見れば、カムフラージュとか、威力偵察の範囲です」

「……なるほど。話の筋は通っています」

 鳳は手を再び膝の上に置いた。

「あのよ、ちょっといいか隊長」

 宮島が頭をかきながら口を挟む。

「相手は餓霊だろ? 敵がそこまで考えて動いてるもんなのかよ」

「いやいや宮島、考えるどうこうのレベルじゃないだろ。いくら相手の動きを予想したって、お釈迦様でもこうはいかんさ」

 香川は腕組みして話を続ける。

「ここまで一致してると、敵がこちらの情報を知ってるか、逆に人間側が事前に敵の動きを知って、それに合わせて動いているか。どちらにしても一大事だぞ」

 香川の言葉に一同は息を飲むが、鳳は予想していたように呟いた。

「……やはり、そうでしたか」

「知ってたんですか?」

 誠の問いに鳳は頷く。

「と言ってもおぼろげですがね。最も怪しいのはこの人物、蛭間です。混乱の初期に突然頭角を現し、瞬く間に船団のトップに上り詰めました。対立する人間がタイミングよく亡くなったり、色々と都合が良すぎるのです。今までは調べが進んでおりませんでしたが……これから奴を徹底的に洗い直しましょう」

「だけどこいつは何がしたいのかしらね」

 カノンがそこでもっともな疑問を口にした。

「自分達の権力は伸びても、それは他の対抗馬がやられて、相対的に優位なだけでしょ。船団全体で見れば弱ってると思うんだけど……」

「それも含めて調べますので。さあ、お仕事の続きです」

 一同は再び活字との戦いになったが、誠はふと資料の中の、研究諸経費と書かれた部分に目が行った。

 内容については記載が無いが、ただ異常に予算と物資が注ぎ込まれているのだ。

「すみません。あっ、斬らないで、すぐ終わりますから! この研究費、初めて見ましたけど、異常に予算を食ってますよね」

 鳳は誠の差し出した資料を眺め、すぐに答えた。

「公にはなっていない施設ですが、噂は聞いた事があります。高千穂研究所の生き残りが、技術開発を行っているとか」

「高千穂研の……?」

 誠は呟いて、それからぐいと身を乗り出した。

「それ、詳しく分かりませんか?」

「あっ……その、ど、努力してみましょう」

 少し距離が近すぎたのか、鳳はどぎまぎしながら頷いてくれた。



※別行動中のはずの龍やサルが絵の中にいますが、まあそういう事で。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...