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第一章その6 ~急展開!~ それぞれの恋の行方編
眠り姫は少年に恋する
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早朝にも関わらず、雪菜は秘密の特訓をしていた。
ベッドに横たわったままのトレーニングではあったが、自然とバーベルを持つ手にも力が入ってしまう。
「鳴瀬くんが見たら怒るかしら。でも悪い事じゃないものね。みんなも頑張ってるし、普段の5倍の重量で……ええい生ぬるいっ、後でバーベルのっけ盛りでおかわりだわ!」
「あの、雪菜さん」
「のわっとお!?」
突如聞こえた誠の声に、手を滑らせてバーベルが胸元に落下。
「ヘルプ、鳴瀬君、風のように速やかにヘループ!」
雪菜は助けを求め、彼はバーベルを取り除いてくれる。
とりあえず命拾いした雪菜だったが、無茶がバレたのでなんとなく気まずい。
ただ、てっきり何か言われるかと思ったのだが、少年は特に怒る様子もない。
雪菜は恐る恐る尋ねた。
「……あの、怒らないの? 鳴瀬くん」
「いいんです。雪菜さんはそういう人ですから、もう諦めました」
誠はバーベルを立てかけると、こちらに向き直った。その表情は不思議と穏やかである。
「それより朝早く悪いんですが、前の部屋に来てもらえますか?」
2人は並んで歩き、ほどなくあの中二階に辿りついた。
「2回目だけど、ここも通い慣れた気がするわ、先生」
「随分元気な患者さんですよね」
「あら、言うようになったわね」
笑顔で言う雪菜だったが、そこでふと彼の変化に気が付いた。
「あら、どうしたの鳴瀬君。その左手……」
そこまで言って、雪菜は息を飲んだ。少年の腕に残る異常な傷跡が、何を意味するかに気付いたからだ。
何か別の細胞に侵食されて引き剥がしたかのような腕は、見るからに痛々しく、今も苦痛から微かに震えていた。
答えない誠に代わって、彼の逆鱗に宿ったガレオンが告げる。
「彼は君の細胞を移植して、実験していたのだ。君を助ける手段を探すためにな」
「なんて事……鳴瀬君、あなた何て事してたの!? そんな事して、もし死んだらどうするつもりなの!?」
雪菜は声を荒げるが、彼は静かに雪菜を見つめていた。
「……僕には、今まで起きた事を、償う事は出来ません。あなたが一番綺麗で、幸せだったはずの時間を、返す事は出来ません」
「え……?」
「でも1つだけ、僕に出来る事があります。全身全霊で作り上げた最後の恩返しだから……もう一度、試してもらえますか?」
誠はそこで無理やり笑みを浮かべた。その笑顔は、戦いの負傷を誤魔化す時、彼がよく浮かべたものだ。
それを見た時、雪菜は我知らず誠を抱き寄せていた。声は自然と涙で揺れる。
「ねえ、どうしていつもあなたはそうなの? もっと器用に生きれないの? いつもいつも、無茶な事ばかり背負って、1人で傷ついて。それじゃ何回生まれ変わっても、不幸になるだけじゃない……!」
少年は黙っていたが、やがて雪菜の肩に手をかけ、2人の間に距離をとった。
雪菜を以前のように座らせると、誠は短く言った。
「手を」
「…………っ」
差し出される少年の右手に、雪菜は震える左手を乗せる。
雪菜は思った。
幼い頃に、こんなふうに手を取り合う男女の映画を見た事がある、と。
それが何の映画だったかは分からないが、確かダンスに誘われるシーンだった、と雪菜は思い出した。
父がいて、母がいて、あの頃は何も怖いものがなかった。
(ちゃんと見ておかなくちゃ。いつか私も、こんなふうに素敵な恋をするんだもの)
そう無邪気に幸せな恋を夢見ていた。
暖かい日差しが差し込む居間で、目を輝かせて画面に見入っていた幼い自分を思い出し、雪菜はすがるように誠を見つめた。
彼は雪菜の手を固定すると、真剣な眼差しで告げる。
「……もし、もしもですけど。もしこれが失敗して、あなたに何かあったなら……すぐに僕も追いかけます。その先にどんな世界があったとしても、そこであなたを守ってみせます……!」
「…………私も、もう諦めたわ」
雪菜は涙を流しながら、ゆっくりと少年に顔を近付ける。
「あなたは、そういう人だものね……?」
雪菜はそっと唇を重ねる。柔らかな粘膜が触れ合う感触があって、彼の体が震えるのが分かった。
このまま時が止まる事を願うかのように、2人は身じろぎもしなかった。
やがて雪菜は小さく唇を動かした。お願い、と言ったつもりだった。
彼も察してくれたようだ。
バチン、と何かが音を立てると、互いの唇が触れ合ったままで、機器が作動していく。
やがて流れ込んでくる激しい力に、雪菜は身を震わせた。薄れ行く意識の中で、けれど何1つ恐れるものもなく。
幼い少女の頃に戻ったように、雪菜は温かな安心感で眠りに落ちた。
それは永遠とも思える時間だった。
治療用電磁式を流された雪菜は、身を震わせて意識を失った。時折歪められる表情は、身に宿る悪魔の細胞が暴れている証拠だった。
逆鱗は燃えるように赤く輝き、今にも爆発するのではないかと誠は気が気ではなかった。
やがて怠け者の秒針が、白いグラウンドを十周した時、彼女の表情がふと楽になっていた。
「…………っ」
誠は震える手で、雪菜の喉元に触れた。
脈拍は正常に近かった。呼吸も安定している。
誠は躊躇いつつ、雪菜の衣服に手を伸ばす。そっと腹部までまくり上げ、細胞の様子を確認した。
見る間に小さく乾いていく細胞は、やがて枯れて剥がれ落ちていく。あっさりと、今までの苦労が嘘のように。
彼女の左手の逆鱗は、あの赤い狂気の光を忘れ、青く澄んだ宝石のように戻っていた。
「ガレオン……」
辛うじて絞り出した声は、自分のものではないように思える。
逆鱗に宿るガレオンは、雪菜の体に磁場を照射。体内に変異した細胞が残っていないか調べてくれる。
「反応は無い。よくやった、おめでとうナルセ。君の目的は達せられたのだ」
「…………」
にわかには信じられなかったが、誠はまくり上げた衣服を戻し、愛しい人に毛布をかけた。
手が震えて、指が自分のものでないようだった。何度も何度も、毛布を掴みそこなってしまう。
それから急に力が抜けて、ふらふらと後ずさった。コードにかかとをとられて、為す術なくよろめいた。
疲労がどっと噴き出してきている。小刻みに息が吐き出され、横隔膜が痙攣して、まともに立っていられないのだ。
何とか壁にもたれると、そのまま床に座り込んだ。
静かに涙が頬を伝っている。
長い長い戦いを終えて、ようやく1つ成し遂げたのだ。
「……ったあ。やった、やった、ったぁ……!!!」
誠は弱々しく天井を見上げ、震える手を握り締めた。
愛しい人を守れた事が、千の賞賛より万の褒章より嬉しかった。
けれど自惚れる気持ちも湧いてこなかった。
たった1つの問題を解くために、こんなにも時間をかけてきたのだ。
何が英雄だ、そして何が鷹翼天武だろう。無力で、何もかも分からなくて、1つ1つ出来る事を積み重ねるしかなかった。
誠はゆっくりと床に倒れ込んだ。
薄れ行く意識の中で、誠は思った。
長かった。そして疲れた。
でも生きてきてよかった。諦めないでよかった。
ただただ透明な何かが心を満たし、世界を肯定する気持ちでいっぱいだった。
やがて意識は急激に混濁していく。
どれぐらい時が経ったのだろう。
静まり返った室内で、雪菜はふと目を覚ました。
青い瞳で不思議そうに天井を見上げていたが、程なくして身を起こす。
己にかかっていた毛布を見つめ、首を傾げて室内を見回した。
それから壁際に横たわる誠に気が付き、慌てて彼に駆け寄った。いや、駆け寄る事が出来たのだ。
「な、鳴瀬君! 大丈夫? しっかりして!」
「……問題無い。大声を出すな」
彼の逆鱗に宿るガレオンがたしなめてくる。
「少し熱が出ているだけだ。疲労が一気に吹き出したのだろう。それより君は解放された。暴走した細胞は死に絶え、もう2度と君の命を食い荒らす事はない」
「えっ……」
雪菜は己の腹に手を当て、それから服を捲り上げた。
肌に深く食い込んでいた細胞は、剥がれ落ちて消え去っていた。日焼けして皮がむけた程度の、かすかな痕しか残っていない。
「……本当に、なんて子なの。こんな子がいていいのかしら……?」
雪菜はへなへなと座り込むと、困ったように微笑んだ。
涙腺は最早蛇口が壊れていたから、涙を止めるのは諦めよう。
雪菜は誠を抱き起こし、己が横たわっていた座席に寝かせる。
「ありがとうガレオン、あなたも休んで」
「そうさせて貰おう」
少年の左手の逆鱗は、その光を弱めていった。眠る少年をいたわるかのようにだ。
「……………………」
雪菜は黙って少年を見つめる。
女として生まれて、こんなにも誰かに思われるなんて考えた事がなかった。
自分にそんな価値があるとは思えないけど、彼の好意がたまらなく嬉しかったのだ。
だが眠る少年に、再び唇を重ねようとした時だ。
基地内に強い振動が奔った。長年の経験で、それが災いの予兆である事が直感で分かった。
「いけない……鳴瀬くん、待っててね」
雪菜は急いで立ち上がった。
そう、前より確実に、体が動くようになっているのだ。
万全とは言えないけれど、これなら少しは走れるだろう。
ベッドに横たわったままのトレーニングではあったが、自然とバーベルを持つ手にも力が入ってしまう。
「鳴瀬くんが見たら怒るかしら。でも悪い事じゃないものね。みんなも頑張ってるし、普段の5倍の重量で……ええい生ぬるいっ、後でバーベルのっけ盛りでおかわりだわ!」
「あの、雪菜さん」
「のわっとお!?」
突如聞こえた誠の声に、手を滑らせてバーベルが胸元に落下。
「ヘルプ、鳴瀬君、風のように速やかにヘループ!」
雪菜は助けを求め、彼はバーベルを取り除いてくれる。
とりあえず命拾いした雪菜だったが、無茶がバレたのでなんとなく気まずい。
ただ、てっきり何か言われるかと思ったのだが、少年は特に怒る様子もない。
雪菜は恐る恐る尋ねた。
「……あの、怒らないの? 鳴瀬くん」
「いいんです。雪菜さんはそういう人ですから、もう諦めました」
誠はバーベルを立てかけると、こちらに向き直った。その表情は不思議と穏やかである。
「それより朝早く悪いんですが、前の部屋に来てもらえますか?」
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「2回目だけど、ここも通い慣れた気がするわ、先生」
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「あら、言うようになったわね」
笑顔で言う雪菜だったが、そこでふと彼の変化に気が付いた。
「あら、どうしたの鳴瀬君。その左手……」
そこまで言って、雪菜は息を飲んだ。少年の腕に残る異常な傷跡が、何を意味するかに気付いたからだ。
何か別の細胞に侵食されて引き剥がしたかのような腕は、見るからに痛々しく、今も苦痛から微かに震えていた。
答えない誠に代わって、彼の逆鱗に宿ったガレオンが告げる。
「彼は君の細胞を移植して、実験していたのだ。君を助ける手段を探すためにな」
「なんて事……鳴瀬君、あなた何て事してたの!? そんな事して、もし死んだらどうするつもりなの!?」
雪菜は声を荒げるが、彼は静かに雪菜を見つめていた。
「……僕には、今まで起きた事を、償う事は出来ません。あなたが一番綺麗で、幸せだったはずの時間を、返す事は出来ません」
「え……?」
「でも1つだけ、僕に出来る事があります。全身全霊で作り上げた最後の恩返しだから……もう一度、試してもらえますか?」
誠はそこで無理やり笑みを浮かべた。その笑顔は、戦いの負傷を誤魔化す時、彼がよく浮かべたものだ。
それを見た時、雪菜は我知らず誠を抱き寄せていた。声は自然と涙で揺れる。
「ねえ、どうしていつもあなたはそうなの? もっと器用に生きれないの? いつもいつも、無茶な事ばかり背負って、1人で傷ついて。それじゃ何回生まれ変わっても、不幸になるだけじゃない……!」
少年は黙っていたが、やがて雪菜の肩に手をかけ、2人の間に距離をとった。
雪菜を以前のように座らせると、誠は短く言った。
「手を」
「…………っ」
差し出される少年の右手に、雪菜は震える左手を乗せる。
雪菜は思った。
幼い頃に、こんなふうに手を取り合う男女の映画を見た事がある、と。
それが何の映画だったかは分からないが、確かダンスに誘われるシーンだった、と雪菜は思い出した。
父がいて、母がいて、あの頃は何も怖いものがなかった。
(ちゃんと見ておかなくちゃ。いつか私も、こんなふうに素敵な恋をするんだもの)
そう無邪気に幸せな恋を夢見ていた。
暖かい日差しが差し込む居間で、目を輝かせて画面に見入っていた幼い自分を思い出し、雪菜はすがるように誠を見つめた。
彼は雪菜の手を固定すると、真剣な眼差しで告げる。
「……もし、もしもですけど。もしこれが失敗して、あなたに何かあったなら……すぐに僕も追いかけます。その先にどんな世界があったとしても、そこであなたを守ってみせます……!」
「…………私も、もう諦めたわ」
雪菜は涙を流しながら、ゆっくりと少年に顔を近付ける。
「あなたは、そういう人だものね……?」
雪菜はそっと唇を重ねる。柔らかな粘膜が触れ合う感触があって、彼の体が震えるのが分かった。
このまま時が止まる事を願うかのように、2人は身じろぎもしなかった。
やがて雪菜は小さく唇を動かした。お願い、と言ったつもりだった。
彼も察してくれたようだ。
バチン、と何かが音を立てると、互いの唇が触れ合ったままで、機器が作動していく。
やがて流れ込んでくる激しい力に、雪菜は身を震わせた。薄れ行く意識の中で、けれど何1つ恐れるものもなく。
幼い少女の頃に戻ったように、雪菜は温かな安心感で眠りに落ちた。
それは永遠とも思える時間だった。
治療用電磁式を流された雪菜は、身を震わせて意識を失った。時折歪められる表情は、身に宿る悪魔の細胞が暴れている証拠だった。
逆鱗は燃えるように赤く輝き、今にも爆発するのではないかと誠は気が気ではなかった。
やがて怠け者の秒針が、白いグラウンドを十周した時、彼女の表情がふと楽になっていた。
「…………っ」
誠は震える手で、雪菜の喉元に触れた。
脈拍は正常に近かった。呼吸も安定している。
誠は躊躇いつつ、雪菜の衣服に手を伸ばす。そっと腹部までまくり上げ、細胞の様子を確認した。
見る間に小さく乾いていく細胞は、やがて枯れて剥がれ落ちていく。あっさりと、今までの苦労が嘘のように。
彼女の左手の逆鱗は、あの赤い狂気の光を忘れ、青く澄んだ宝石のように戻っていた。
「ガレオン……」
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逆鱗に宿るガレオンは、雪菜の体に磁場を照射。体内に変異した細胞が残っていないか調べてくれる。
「反応は無い。よくやった、おめでとうナルセ。君の目的は達せられたのだ」
「…………」
にわかには信じられなかったが、誠はまくり上げた衣服を戻し、愛しい人に毛布をかけた。
手が震えて、指が自分のものでないようだった。何度も何度も、毛布を掴みそこなってしまう。
それから急に力が抜けて、ふらふらと後ずさった。コードにかかとをとられて、為す術なくよろめいた。
疲労がどっと噴き出してきている。小刻みに息が吐き出され、横隔膜が痙攣して、まともに立っていられないのだ。
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誠はゆっくりと床に倒れ込んだ。
薄れ行く意識の中で、誠は思った。
長かった。そして疲れた。
でも生きてきてよかった。諦めないでよかった。
ただただ透明な何かが心を満たし、世界を肯定する気持ちでいっぱいだった。
やがて意識は急激に混濁していく。
どれぐらい時が経ったのだろう。
静まり返った室内で、雪菜はふと目を覚ました。
青い瞳で不思議そうに天井を見上げていたが、程なくして身を起こす。
己にかかっていた毛布を見つめ、首を傾げて室内を見回した。
それから壁際に横たわる誠に気が付き、慌てて彼に駆け寄った。いや、駆け寄る事が出来たのだ。
「な、鳴瀬君! 大丈夫? しっかりして!」
「……問題無い。大声を出すな」
彼の逆鱗に宿るガレオンがたしなめてくる。
「少し熱が出ているだけだ。疲労が一気に吹き出したのだろう。それより君は解放された。暴走した細胞は死に絶え、もう2度と君の命を食い荒らす事はない」
「えっ……」
雪菜は己の腹に手を当て、それから服を捲り上げた。
肌に深く食い込んでいた細胞は、剥がれ落ちて消え去っていた。日焼けして皮がむけた程度の、かすかな痕しか残っていない。
「……本当に、なんて子なの。こんな子がいていいのかしら……?」
雪菜はへなへなと座り込むと、困ったように微笑んだ。
涙腺は最早蛇口が壊れていたから、涙を止めるのは諦めよう。
雪菜は誠を抱き起こし、己が横たわっていた座席に寝かせる。
「ありがとうガレオン、あなたも休んで」
「そうさせて貰おう」
少年の左手の逆鱗は、その光を弱めていった。眠る少年をいたわるかのようにだ。
「……………………」
雪菜は黙って少年を見つめる。
女として生まれて、こんなにも誰かに思われるなんて考えた事がなかった。
自分にそんな価値があるとは思えないけど、彼の好意がたまらなく嬉しかったのだ。
だが眠る少年に、再び唇を重ねようとした時だ。
基地内に強い振動が奔った。長年の経験で、それが災いの予兆である事が直感で分かった。
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