怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
186 / 203
高坂修斗復帰編

脱退宣言①

しおりを挟む
【若元梨音目線】

 冬華に泣きついた私はそのまま後夜祭には出ず、クラスの打ち上げにも参加しなかった。
 冬華は理由を聞くこともなく私と一緒にいてくれた。
 きっと誰絡みのことかは分かっていたと思うけど、それでも私が落ち着くまでそばにいてくれた。

 それから家に帰るまで、修斗からの連絡は無かった。
 きっと打ち上げには出ていないだろうけど、それでも連絡が一度もないことに私は悲しくなった。
 自分がその場から逃げたくせに、探しにきてくれるんじゃないかなんて面倒くさいことを考えてしまう自分が嫌になる。

 家に帰ると修斗のローファーが既にあった。
 だけどトレーニングシューズが無かったからきっと、すぐに家に帰ってきてランニングか公園にボールを蹴りに行ったんだと思う。
 私に話したことはドッキリなんかじゃなく、ちゃんとした決意表明だったんだ。
 本当ならそれを応援してあげるのが私の幼馴染としてのしかるべき対応なのに…………。
 サッカーとのバランスを取り始めた最近の修斗なら私の気持ちを伝えても…………なんて中途半端に思ってしまったのが良くない。

 こんな気持ちに気付かなければ、こんなに苦しい思いなんて…………。

 ううん。
 遅かれ早かれきっとこうなっていたのかもしれない。

 気持ちを伝える前で良かったじゃない。
 拒絶されていたらもっと傷付いていたかもしれないんだから。
 修斗がサッカーに対してのみ真摯に向き合うようになったって言うなら、ちゃんと支えてあげられるようにしなくちゃ!
 サッカーが出来なくなったあの時の修斗なんてもう見たくないんだから。


 夜、帰ってきた修斗は夕方のことについて全く触れなかった。
 ご飯の時も、私からの会話には返してくれたけど、修斗から話しかけてくることはなかった。

 応援すると決めたのに、私の胸は酷く苦しくなった。



 数日後、神奈月先輩に生徒会室に呼び出された。
 放課後に向かってみると、修斗以外の人が全員揃っていた。

「来たかいリオ」

「修斗は来てないんですか? 教室にはもういなかったんですけど……」

「みんなに集まってもらったのは、そのシュートに関することなんだよ」

「どういうことですか?」

 私が聞くと、神奈月先輩は渋い顔をしながら他の人達と顔を見合わせた。

「実は昨日……シュートから生徒会を辞めたいと申し出があってね」

「えっ!? ど、どういうことですか!?」

 生徒会を辞めるなんて話、私にとっても寝耳に水だった。

「やっぱりリオも知らなかったか……。昨日、シュートから話があると連絡があったから直接会ったんだ。そうしたらサッカーに本腰を入れたいから生徒会を辞めることは可能かって言われてね」

「僕もその場に一緒にいたんだ。ニュアンス的には、今でも配慮させてもらってるけどこれ以上は迷惑になりそうだから、ってことみたいだったね」

「そ、そんな…………」

 修斗がサッカーの復帰を目指しているのは生徒会の人達はみんな知っている。
 だからこれまでも大きな行事以外は参加しなくていいように神奈月先輩が働きかけてくれていた。
 それでも修斗にとってはそれすら足切りの対象になると判断したということ。
 修斗は本気でサッカーに関係のないものは切り捨てようとしているんだ。

「宇佐木先生にも確認したが、辞めること自体は不可能じゃない。それなりの理由があれば可能とのことだ。ただ、途中でやめれば内申に生徒会役員としての実績が書けなくなるとも言っていた。私個人としても半年近く一緒にやってきた仲間だからね。こんな形で辞めさせるようなことはしたくないよ」

「まったく。考えが性急過ぎるというか、少しは僕達を頼ってくれてもいいだろう。これでも僕達は生徒の代表で先輩なんだ。高坂のやりたいことを支援する環境くらい作れるさ」

「そうよね~。残ってる大きな活動も合唱コンクールと卒業式ぐらいだし、籍だけ置いてても私達は困らないのにね~」

 先輩達は総じて修斗が生徒会を辞めることについて反対のようだ。
 それだけで少し、私の心は軽くなった。
 だけど、きいだけは考えが違うみたいで。

「…………私は、高坂が辞めたいと言うなら尊重してもいいと思ってます」

「ええ~?」

「それはどうしてだい?」

「…………私は元々、ジュニアユース時代に輝いていた高坂を知っています。あの頃の高坂のプレーに…………魅了、されていたといっても過言じゃありません。だから……高坂がその頃へ戻りたいと言うのなら……私は無理に引き留める必要も無い、と……思います。プロを目指すなら進学も関係ないし……」

「ふむ……」

 たどたどしく話すきいの言葉にも説得力があった。
 そう言えば、きいも中学時代の修斗に魅了されたうちの一人なんだ。
 いちファンとしては、修斗の復帰が早くなるのであればそれを支援するのが当然のことなのかもしれない。

 だけどあの時の。
 あの時の屋上での危うさを知っている私にとっては、心から応援することは出来なかった。

「キイの言うことにも一理あるが、一旦この話は保留にしておこうと思う。修斗にも説明しておくが、それでもどうしてもと言う場合は改めてみんなにも説明するようにするよ」

 神奈月先輩の言葉でこの議題は締めくくりとなった。
 その後の生徒会室では、なんとも言えないよどみが残っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

処理中です...