怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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高坂修斗復帰編

補習王子③

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【佐川新之助目線】

「なんでまた補習なんだ俺はー!」

「テストの点が悪いからだろ」

 現国のユキセンに冷たく言い放たれた。
 この前は数学の岡部に居残りをさせられ、今度は現国と来たもんだ。
 まったく、人気者はつらいぜ。

「お前は人気者なんかじゃないからな」

「ユキセン! なんで人の心が読めてるんでしょうか!」

「それは私が国語教師だからだよ」

 やべーな国語教師。
 〝この時の主人公の気持ちを答えよ〟を極めるとそんなことができんのか。

「この問題ができたら今日はもう上がっていいから」

「マジっすか! うおおおおとどろけ俺の右腕ぇ!!」

「先生な、たまにお前を見てると無人島に放り投げていつまでそのテンションが保つか試してみたくなるよ」


 なんとか課題を終わらせ、『妖怪GO!』を起動させながら下駄箱に降りたところで若元を見かけた。
 昨日に引き続きまたしても補習帰りに出会うとは。

「おいすおいす~若元。こんな時間まで何してんの?」

「あっ、佐川君……。ちょっと生徒会の仕事をね。佐川君は?」

「俺? 見ての通り───補習」

「全然見て分からないんだけど……。というか昨日も補習じゃなかった?」

「別教科だぜ!」

「ええ…………もう補習王子だね」

 王子……。
 なんて甘美な響きなんだ。
 イケメンたる俺に相応しい二つ名だ。
 ここは一つ、修斗にも俺のことをあがめさせる必要があるな。

「そういえば修斗は? あいつも生徒会なんだからいるんでしょ?」

「修斗は…………」

 ギョッとした。
 修斗の話題を出したとたん、若元の目に涙が溜まり始めた。
 もしかして、なんか触れちゃいけない琴線に触れたか?

「どどど、どうしたんだよ若元!」

「ご、ごめん……ぐすっ、なんでもないの……」

「なんでもないってこたぁねーだろ……。修斗か? 修斗に何かされたんか!? なんなら肩パンしてきてやんよ!」

「全然違くて…………ズッ、ほんとごめんね急に」

 おいおいちょっと見ない間にとんでもないことになってないか?
 絶対若元と修斗の間に何かあっただろ。
 最近の修斗の様子がおかしいことには気付いていたが、それはあくまで怪我でやることができなかったサッカーに夢中になっているからじゃなかったのか?
 だから付き合いが悪いことにも俺は理解していたし、やりたい夢があるやつのことは応援したいぐらいだ。

 だけどこの涙は…………二人の関係が上手くいってない証拠だ。

 二人の関係が幼馴染だってことは知ってるが、それ以上のことは俺は知らない。
 だけどよ、今までの二人の関係を見てたら単純な腐れ縁の関係じゃないことぐらい、俺じゃなくたって分かる。

「若元、何があった? 俺は修斗とも若元とも友達だ。だから二人が笑っていてくれないと目覚めが悪いんだよ」

「ぐすっ…………」

「俺を使ってくれ。頼ってくれ。話してもらったことで必ずしも最高の結果は得られないかもしれない。だけど、最善の結果は与えてやれるかもしれないから」

「………………うん」

 俺は若元から事情を聞いた。
 修斗がサッカーに集中するために、あらゆるものを切り捨てようとしていること。
 それは生徒会であり、友人であり、幼馴染であり。
 若元の話す言葉からは修斗を責めるような言葉は何一つとして入っていなかった。
 若元がどれだけ修斗のことを大切に想っているかが伝わってくる。
 だからこそ、修斗の取った手段は愚の骨頂だと言わざるを得ない。

 修斗、お前にとって若元はなんだ?

 ただの幼馴染か?

 違うだろ。

 絶対に違う。

 お前が怪我で苦しんでた時、そばにいてくれたんじゃないのかよ。
 そのぐらい、聞かなくても俺には分かるぜ。
 なにせ俺も同じ境遇だったからな。
 俺にもそばにいてくれた人がいた。
 だから俺は道を間違わずにここまで立ち直れたんだ。

 修斗がやろうとしているのは、その大切な人をないがしろにしようとしていることだ。
 それだけはやっちゃならねぇ。

「若元は…………修斗にどうなって欲しいんだ?」

「サッカーを頑張って欲しい。だけどこのまま放っておいたらきっと…………修斗が…………もう戻って来れなくなるんじゃないかなって……」

 その答えだけで俺が決意するには十分だった。

「分かった。後は俺に任せてよ」

「……え?」

「俺が直接修斗と話す」

 世話の焼ける友人達だ。
 だけどそんな友人達を俺は守りたい。
 そのためなら、どんな大変な役回りだって演じてみせるさ。
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