怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
196 / 203
高坂修斗復帰編

元野球少年②

しおりを挟む
【第三者目線】

 ~中学3年夏~

「ストライーック! バッターアウッ! ゲームセット!」

「しゃああああ!」

 光里ひかりざとシニアという野球クラブに最速140kmの速球を投げるピッチャーがいた。
 佐川新之助。
 速球派でありながらもスライダーとカーブを使い分ける本格右腕として野球関係者の中ではそれなりに知名度が通っていた。
 中学3年になる頃には近くの強豪高校のスカウトも試合に観に来るような人物だった。

「新之助、今日もキレキレだな」

「当然。全試合全部俺が投げてやんよ」

「おいおい、俺にも投げさせてくれよな」

 新之助をねぎらったのは同じピッチャーで小学校の頃から一緒だった成瀬なるせ伊織いおり
 光里シニアの2番手ピッチャーであったが、新之助がほとんどの試合を投げ切ってしまうためそれほど出番は多くなかった。
 怪我もしないし最後まで投げ切るスタミナがあるのは他の選手にとってはある意味不幸とも言えた。
 それでも成瀬はお互いを高め合う存在であり、新之助にとっても親友と言える相手だった。

「佐川」

「なんですか監督」

「次の試合、遠方からもいくつか甲子園常連校のスカウトが観に来ると連絡があった。アピールするチャンスだからな」

「マジっすか!? しゃあああ頑張るぜ!」

「やったな新之助」

「おう!」

 新之助が狙っていたのは東京で甲子園常連の帝聖ていせい高校と大阪にある大阪桐隻とうせき高校の二つ。
 今度の試合ではもしかしたらその二つの高校のスカウトが視察に来るかもしれないということだった。
 俄然、新之助のモチベーションも上がった。

「お前のいつものピッチングなら余裕さ。内定、決められるといいな」

「ありがとな伊織」

 ウキウキで家に帰った新之助は早速母親達に報告をした。
 父はまだ帰っていなかったが、ご飯を準備していた母とテレビを見ていた妹が新之助の話を聞いてくれた。

「今度の試合で俺の進路決まるかもしんないわ」

「へぇ~凄いわね。アンタあんまり勉強出来ないんだからそっちで進路決まるなら良かったじゃない」

「だろだろ。最悪、希望のとこじゃなくてもスポーツ推薦で行けそうなところはいくつかあるけどな」

「自分でちゃんと考えてるなら母ちゃんも父ちゃんも応援してるから好きなようにやんな」

「ちなみに大阪の学校寮とかに入るかもしれないから」

「えっ…………兄さん、家から出て行っちゃうんですか?」

 寮の話をしたところで妹のしずくが目を丸くして驚いた。

「なんだよ雫、兄ちゃんが家から出て行っちゃうのが寂しいのか~?」

 新之助がニヤニヤしながら聞いた。

「ち、違います。うるさい人がいなくなると思って喜んでるだけです」

 雫がプイッと顔を背けて答えた。

「連絡ならしてやっから泣くなよな」

「いりませんよ。泣きもしないです」

「ほら唐揚げできたわよ。アンタたち運びなさいな」

「へーい」

「はい」

 母が作ってお皿に盛った唐揚げを、新之助はつまみ食いをしながらテーブルに持っていった。
 今が絶賛成長期の新之助にとって、夜ご飯は母と雫の二人分を足した以上にしょくしていた。



 試合当日。
 会場に向かおうと準備していた新之助の携帯に一通の連絡が届いた。
 送信者は成瀬だった。

『助けてくれ新之助!実は前から個人的にトラブル抱えてたんだが、その関係で複数人に絡まれてる!場所は◯◯の××!お前しか頼めねぇ!』

 内容を見て新之助の血の気が引いた。
 成瀬がリンチに合っているかもしれないという不穏な内容。暴力沙汰の経験が無い新之助。
 さらにはこの時間から成瀬がいる場所に行けば、試合開始には間に合わないという事実。早く片付いたとしても確実に遅れてしまう。
 なにより今日の試合にはスカウトの人達も来るため、すっぽかしてしまえば監督達にも迷惑がかかり、新之助の将来の進路すらも不安定なものになってしまうものだった。

 それでも新之助は迷いなく家を飛び出した。
 書かれていた場所に向かって自転車を飛ばした。
 自分の将来を捨てても、新之助は友人の危機を選んだのだ。

 30分ひたすらに自転車を飛ばし、書かれていた場所は簡単な柵で覆われた解体現場のようなところだった。
 新之助は汗だくになりながら到着し、自転車を投げ出して中に入った。

「伊織!!」

 声を掛けるも成瀬の姿は無かった。
 しかし、奥から同じ年頃ぐらいの男が五人ゾロゾロと出てきた。
 どれもニヤニヤと不適な笑みを浮かべており、新之助を囲むように広がる。

「なんだよ……お前ら」

「本当にアイツの言う通り来たよ。お前が佐川だよな」

「伊織はどこだよ!」

 新之助の質問に五人は顔を見合わせ、またしてもニヤニヤと笑みを浮かべた。

「お前、騙されてるよ」

「…………はぁ?」

「まぁいいや。とりあえず、お前はしばらくここで寝てろな」

 男の一人が殴りかかってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

処理中です...