130 / 203
サマーバケーション勧誘編
夏休み④
しおりを挟む
ケーキを買い、店を出て俺達は瑞都高校へと戻った。
箱の中には20分保つドライアイスを入れてもらっているが、この暑さだ、寄り道はせずに真っ直ぐ向かう。
学校に戻ったところで丁度サッカー部が校門の周りに集まっているのが見えた。
たぶんこれから外周を走らされるのだろう。
このクソ暑い中ご苦労様なことである。
部員を見るのは東京Vに完膚なきまで叩きのめされていた時以来だ。
全国大会出場にも手が届くと言われ、自分達の強さに自信があった時になす術もなく負け、彼らの気持ちは折れずに来れたのだろうか。
そこで反骨心を見せた選手はいたのだろうか。
───果たして俺だったら、心が折れずに戦うことが出来たのだろうか。
完膚なきまでに負けたような経験はないが、少なくとも怪我をして心が折れた経験はある。
そう考えると意外と俺は…………メンタルが弱いのか?
いや……サッカーができないと言われれば誰でも心折れるよな。
「全員、体をしっかりほぐせよ。怪我しないようにな」
そう呼び掛けていたのは元鹿島オルディーズのエース、狩野隼人だった。
賢治との一対一に負け、最後まで何もさせてもらえず試合を終えたあの選手は、一見して変わらず部内でもリーダーシップを取っているようだった。
(そういえば狩野は弥守の謀略で卒業後はクシャスラFCに所属することが決まっているんだっけか)
そのモチベーションがあれば大敗を喫したとしても、自分の練習を怠るわけにはいかないだろう。
プロの世界は実力を示さなければ容赦なくクビを切られる世界だし、いつまでも立ち止まってなんていられない。
常に後から後から、優秀な選手が自分を追い越していくかもしれないのだから。
練習の邪魔をしないように脇をすり抜けようとしたところで、聞き慣れた元気な声に呼び止められた。
「あー! 梨音っちに前橋っち、それと高坂っちだ! なーにしてんの外から戻ってきて」
腕を捲り、部員に負けず劣らずの汗を額から流しているサッカー部のマネージャー、桜川美月だった。
どうやら給水のボトルをカゴに入れて部員のために準備しているようだった。
俺達を見つけるやいなや重そうなカゴを揺らしながら笑顔で走り寄ってきた。
笑うと八重歯がちらりと顔を覗かせる。
「美月だ。暑い中大変だね」
「選手のみんなに比べたら全然だよ! むしろこれぐらい汗かいた方が気持ちいいまである!」
「ええ……」
前橋が冗談でしょとでも言いたげな表情をする。
どこまでインドア派になったんだ。
「そうそう美月、ついでに聞きたいことあるんだけど少し時間ある?」
「うん? あるよー。みんなが走って戻ってくるのをタイム測りながら待つだけだし、そのタイムは他の先輩が測ってくれてるから」
「じゃあさ、今度夏休み期間中にみんなで海に行こうと思ってるんだけど来る?」
「え!? 海!? 行く行く絶対行く!! 行かない選択肢が無い!」
予想以上な食いつき方。
新之助と同じくらいの熱量を感じる。
「部活の方は大丈夫なのか?」
「一日ぐらい先生に言えば大丈夫だよ。マネージャーは他にもいるし」
「ちなみに他のメンツはここにいる3人だろ? それと新之助とニノと八幡かな」
「八幡さん? とはあんまり絡みないから初めましてかな。ニノって確かおとなしめの人だよね」
そうだっけ?
イベント事は大体桜川もいた気がするが、確かに放課後は一緒にならないし勉強会の時も桜川はいなかったな。
でもニノも八幡もお前のことは超知ってると思うぞ。
二人に限らず俺のクラスの奴らなら入学初期の頃の桜川のストーカー具合見てたからな。
「知らない人いても大丈夫そ?」
「もちろん! 全然仲良くなる自信あるし!」
「流石すぎる」
見た目も可愛いし愛嬌も良いときた。
こりゃサッカー部内でもモテるんじゃなかろうか。
狙ってるやつは多そうだな。
「じゃあまた時間とか決まったら連絡するね」
「はーい。新しく水着買わなきゃなぁ」
そう言って桜川はるんるんで戻っていった。
「水着……」
水着という言葉に反応を示す前橋。
海行くようの水着持ってるんだろうか。
ちなみに俺は持ってない。
プールにも海にも行ったことがないからだ。
持ってるとしても学校で使う紺色の無地の水着のみ。
「前橋…………スクール水着着てくるとかいうボケかますなよ」
「しないよ!」
一応、釘刺しておかないと、一緒にいるこっちが恥ずかしめに合うからな。
箱の中には20分保つドライアイスを入れてもらっているが、この暑さだ、寄り道はせずに真っ直ぐ向かう。
学校に戻ったところで丁度サッカー部が校門の周りに集まっているのが見えた。
たぶんこれから外周を走らされるのだろう。
このクソ暑い中ご苦労様なことである。
部員を見るのは東京Vに完膚なきまで叩きのめされていた時以来だ。
全国大会出場にも手が届くと言われ、自分達の強さに自信があった時になす術もなく負け、彼らの気持ちは折れずに来れたのだろうか。
そこで反骨心を見せた選手はいたのだろうか。
───果たして俺だったら、心が折れずに戦うことが出来たのだろうか。
完膚なきまでに負けたような経験はないが、少なくとも怪我をして心が折れた経験はある。
そう考えると意外と俺は…………メンタルが弱いのか?
いや……サッカーができないと言われれば誰でも心折れるよな。
「全員、体をしっかりほぐせよ。怪我しないようにな」
そう呼び掛けていたのは元鹿島オルディーズのエース、狩野隼人だった。
賢治との一対一に負け、最後まで何もさせてもらえず試合を終えたあの選手は、一見して変わらず部内でもリーダーシップを取っているようだった。
(そういえば狩野は弥守の謀略で卒業後はクシャスラFCに所属することが決まっているんだっけか)
そのモチベーションがあれば大敗を喫したとしても、自分の練習を怠るわけにはいかないだろう。
プロの世界は実力を示さなければ容赦なくクビを切られる世界だし、いつまでも立ち止まってなんていられない。
常に後から後から、優秀な選手が自分を追い越していくかもしれないのだから。
練習の邪魔をしないように脇をすり抜けようとしたところで、聞き慣れた元気な声に呼び止められた。
「あー! 梨音っちに前橋っち、それと高坂っちだ! なーにしてんの外から戻ってきて」
腕を捲り、部員に負けず劣らずの汗を額から流しているサッカー部のマネージャー、桜川美月だった。
どうやら給水のボトルをカゴに入れて部員のために準備しているようだった。
俺達を見つけるやいなや重そうなカゴを揺らしながら笑顔で走り寄ってきた。
笑うと八重歯がちらりと顔を覗かせる。
「美月だ。暑い中大変だね」
「選手のみんなに比べたら全然だよ! むしろこれぐらい汗かいた方が気持ちいいまである!」
「ええ……」
前橋が冗談でしょとでも言いたげな表情をする。
どこまでインドア派になったんだ。
「そうそう美月、ついでに聞きたいことあるんだけど少し時間ある?」
「うん? あるよー。みんなが走って戻ってくるのをタイム測りながら待つだけだし、そのタイムは他の先輩が測ってくれてるから」
「じゃあさ、今度夏休み期間中にみんなで海に行こうと思ってるんだけど来る?」
「え!? 海!? 行く行く絶対行く!! 行かない選択肢が無い!」
予想以上な食いつき方。
新之助と同じくらいの熱量を感じる。
「部活の方は大丈夫なのか?」
「一日ぐらい先生に言えば大丈夫だよ。マネージャーは他にもいるし」
「ちなみに他のメンツはここにいる3人だろ? それと新之助とニノと八幡かな」
「八幡さん? とはあんまり絡みないから初めましてかな。ニノって確かおとなしめの人だよね」
そうだっけ?
イベント事は大体桜川もいた気がするが、確かに放課後は一緒にならないし勉強会の時も桜川はいなかったな。
でもニノも八幡もお前のことは超知ってると思うぞ。
二人に限らず俺のクラスの奴らなら入学初期の頃の桜川のストーカー具合見てたからな。
「知らない人いても大丈夫そ?」
「もちろん! 全然仲良くなる自信あるし!」
「流石すぎる」
見た目も可愛いし愛嬌も良いときた。
こりゃサッカー部内でもモテるんじゃなかろうか。
狙ってるやつは多そうだな。
「じゃあまた時間とか決まったら連絡するね」
「はーい。新しく水着買わなきゃなぁ」
そう言って桜川はるんるんで戻っていった。
「水着……」
水着という言葉に反応を示す前橋。
海行くようの水着持ってるんだろうか。
ちなみに俺は持ってない。
プールにも海にも行ったことがないからだ。
持ってるとしても学校で使う紺色の無地の水着のみ。
「前橋…………スクール水着着てくるとかいうボケかますなよ」
「しないよ!」
一応、釘刺しておかないと、一緒にいるこっちが恥ずかしめに合うからな。
11
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる