137 / 203
サマーバケーション勧誘編
海水浴場④
しおりを挟む
それからしばらくはそれぞれ泳いだり、波に揺られたり、ビーチボールでバレーをしたりと好きなように過ごした。
俺はと言えば、持ってきた水中ゴーグルを使って軽く潜水をしてみる。
海藻の塊がゆらゆらと蠢いている。
その光景になんとなく背筋がゾワリとし、潜った状態で沖の方を見た。
息を呑んだ。
奥の方から何かが向かって来てもおかしくないほどに暗く、深く、そして壮大だ。
海面からでは決して見ることのできない景色がそこには広がっていた。
(サッカーだけをしていたら、この感覚も味わえなかっただろうな……)
それほどまでに当時の俺はサッカー以外のことに興味がなかった。
今では徐々に膝の調子も良くなってきている。
まさか、怪我をしたことも悪いことばかりじゃないと思える日が来るとはな。
その後しばらくしてから梨音が飲み物を取りに行くというので一度みんなで拠点へと戻ることにした。
海に入っているだけでも身体の水分は抜けていってしまうようだ。俺も飲み物を取りに行く。
「おかえりっすー」
「もっちーさんは入らなくていいんですか?」
「そうっすねー。もう少ししてからとかでもいいっすかね」
そう言いつつ、椅子に座りながら海水を入れたバケツに足を浸けていた。
「ちょっと私、おトイレに行こうかな」
「じゃあ私も……」
「梨音っちと前橋っちについてこーっと!」
「ただのおトイレだってば」
「俺も行こうかな」
「修斗も女子トイレに?」
「誰がこのタイミングで犯罪行為宣言すんだよ!」
トイレの話をされると不思議と尿意が湧き上がってくる。ニノも同じように挙手していた。
「なあ腹も減らね? 向こうで焼きそばとか売ってたしなんか食おうぜ」
「いいねー」
「そうね。それだったら私、新之助と一緒にみんなの分も買ってくるわよ」
八幡が提案した。
「いやいや、私達も一緒に買いに行くよ」
「でもほらトイレとは真逆だから。荷物はだいたい新之助に持たせるから大丈夫よ」
「そっか。じゃあお願いしちゃおうかな」
「うぉい、扱いが雑じゃね?」
「…………だめ?」
梨音が少し上目遣いでお願いした。
いつの間にそんな技を。
「ぜんっぜん! 若元が言うならいくらでも買ってくるし、荷物は全部俺が持つ!」
「ちょろすぎるだろ」
「なんか釈然としないわね」
新之助はすぐに財布を準備して八幡と一緒にご飯を買いに行った。
「梨音、最近お前も新之助の扱い方分かってきてるな」
「分かりやすいというか、裏表のないところが佐川の良いところよね」
「うん? うん、そうかもな……?」
まあそういう言い方もできるか。
俺達もトイレへと向かい、男性用は割と空いていたが、女性用はやはりというか、少し混んでいた。
俺とニノはトイレを終えた後、少し離れたところで待つことにした。
「見てコーサカ君」
「ん?」
「カニ」
「うわマジじゃん。ちっちぇー」
砂の中から小さなカニが少し顔を覗かせている。
可愛くはないが、見られるのを恥ずかしがるように砂の中へ潜ろうとする。
「…………ニノはあれから家の人達とはどうよ」
ふと思い出したように俺が聞いた。
「うん、仲良くやれてる……とは思うよ。考え方を少し変えたら、前ほど気まずくならなくなったかな」
「良かったじゃん。牧村さんも今日来てくれてるし、これからもお世話になる人達だもんな」
「ちゃんと自分の気持ちを相手に伝える。こんなにも簡単なことなのに大切なことを今までできていなかったんだよね」
「そうだな。俺も改めて考えさせられるよ。にしても…………3人とも遅いな」
気になり少しトイレの方に目を向けた。
「………………ああ?」
梨音、前橋、桜川は既にトイレを終えたようだった。
しかし、3人の行手を阻むようにして3人の日に焼けたチャラそうな男達が梨音達に声を掛けていた。
金髪に茶髪に剃り込みの入ったツーブロック。
梨音と桜川が困ったような表情で断っており、前橋は怯えたようにその2人の後ろに隠れていた。
「おいニノ、うちの女性陣がナンパされてる」
「え? うわホントだ。なんかちょっと怖そうな人達だね」
「そんなこと言ってる場合かよ。行くぞ」
あの三人は普通に歩いてても周りの目を引くぐらいには可愛い。
女子三人だけで歩いてたらそりゃ声もかけられるか。
俺はニノを連れてすぐに三人の元へと向かった。
「な! いいじゃん少し遊ぶだけ!」
「俺ら男3人で来ちゃったから暇なんだよ」
「だから結構ですって言ってるじゃないですか。私達も友達と来てるんで」
「またまた~。さっきから三人しかいないのは見てたんだぜ」
「うわそんな前から見てたとかキッショ。行こ梨音っち、前橋っち。相手する必要ないよ」
「まぁまぁまぁ、ほら俺ら地元の人間だからこの辺のこと詳しいから案内もしてあげれるし。ビーチサッカーなんてものも向こうにあるんだよ」
「え、ビーチサッカー?」
「ちょっと美月! サッカーって単語に釣られないでよ」
「お、サッカーやる系? スタイル良いしなんなら向こうで一緒に──────」
「おい、俺達の連れに構うなよ」
相手の言葉を遮り、梨音達との間に割って入った。
男達の顔が急速に曇る。
「修斗!」「高坂!」「高坂っち!」
「んだよ本当にダチと来てたのかよ」
「しかも男。別に俺達は遊びに誘ってただけだろ」
「断られてたんだろ? だったら素直に引けよ」
「ああ?」
チャラ男達がずいっと前に出て圧をかけてくる。
おそらくそれなりに喧嘩もしてきてるようなロクでもない奴らではあるだろう。
「ガキがイキってんじゃねーぞ」
「地元でしかイキれないお前らに言われたくねーよ」
「んだとてめぇ!」
男の1人が俺の肩をガッと掴んできた。
「修斗!」
「きゃあ!」
実力行使で来られたとしてもやり返す覚悟はできている。だけどこっちは俺とニノだけだ。
新之助がいれば問題ないが、さすがにニノじゃ心許ないし、なんならブルってる。
そんな中で殴り合いになれば3vs2だし流石に無事じゃすまない。
ならこういう時にはどうすれば怪我なく無事に済むのか。
サッカーをやってきた俺に抜け目はないんだぜ。
「ふざけやがってこの───」
「痛っっっってえええええええええ!!!!」
俺はそれはもう大袈裟に、まるで刃物で刺されたかのごとく大声をあげた。
「な、なんだコイツ」
「肩掴んだだけだろ」
「ぐあああああ痛ってええええ!! 痛えええよおおおおお!! うわああああああ!!」
そして砂浜の上をのたうち回りながらさらに大声をあげた。
チャラ男達は俺の突然の奇行に怖気付き、周りにいた知らない人達は何事だと注目し始めた。
「どうしましたー!?」
俺の叫び声を聞きつけて、遠くにいたライフセーバーの人もこっちに走ってきていた。
「こいつわざと……!」
「お、おいやべーよ行こうぜ」
「ああ」
チャラ男達はそそくさといなくなっていった。
「ふぅ……」
いなくなったのを確認し、俺はスッと立ち上がった。
その様子にニノを含めて梨音達はポカーンとしていた。
「大丈夫ですか?」
ライフセーバーの人が心配そうに俺の元へときた。
「ああ、大丈夫ですすいません。ちょっと素足で割れた貝を踏んでしまっただけですから」
「危ないですからこちらの方ではサンダルを脱がない方がいいですよ」
「はいすいません、気を付けます」
嘘の説明をして、問題ないことが分かるとライフセーバーの人はすぐに離れていった。
「修斗…………なんていうか…………とりあえずありがとう?」
「なんで疑問系なんだよ。俺のナイスプレイだろ」
「高坂っち、今のって…………」
「いわゆる、これぞシミュレーションってやつだ」
シミュレーション。
サッカーの試合でもたびたび使われる、相手と接触していないのに接触したようみせかけて転び、カードの誘発やチャンスゾーンでのフリーキックやペナルティキックを得る技だ。
もちろん接触していないことが審判にバレれば、こちらがカードを貰うことになる。
「暴力沙汰の喧嘩になった時、いくらなんでも俺一人じゃあいつらに勝てないから、肩を掴まれた時に少し大袈裟に騒いだんだよ」
「少しどころじゃなかったけどね」
「大騒ぎして周りの人巻き込んで、問題にでもなればそれこそ地元のアイツらは手を出してこれないと思ったからな」
「サガー君は凄いね。僕なんか何もできなかったよ」
「まぁこればっかりは場数が物言うしな。俺はいつも相手選手と殴り合うぐらいの勢いで試合してたし、この程度のことで萎縮したりはしない」
「へえー」
「でもほんと高坂っちありがとう。ニノっちも」
「僕はなにも出来なかったってば」
「騒いだ時は少しびっくりしたというか引いたけど…………間に入って啖呵切ってくれた時はその…………カッコよかったよ」
「おう、そういうことはもっと言ってくれ」
「こら、調子に乗らない。それと修斗…………危ないから相手を煽るようなことはもうしないで。もしまた修斗に何かあってサッカーができなくなったりしたら…………」
「……そうだな、気をつけるよ」
俺だってこんなことで再び怪我するのは嫌だ。
だけど、友達がこうやって絡まれてたとして、助けないやつなんかいないだろう。
「…………高坂、ありがとう」
「今度はちゃんとお礼言えたな前橋」
「うっ…………ごめんなさい」
「いや冗談だって」
「…………うん」
前橋は思いの外怯えていたようだ。
俺の冗談に対してもまともに言い返したりできていないみたいだった。
「…………とりあえずもっちーさん達のところ戻るか」
「そうだね。きい、大丈夫?」
「大丈夫」
梨音は意外とナンパされることに慣れがあったのかもしれない。桜川も元の性格からか、はっきりと拒否していた。だけど前橋はそもそも人見知りだし、高圧的な、殴り合いに発展するような喧嘩は見たことがなかったのかもしれない。
サッカー部キャプテンのお兄さんとは喧嘩とかしないのだろうか。
もしかしたら、口論にすらならずに上手く切り抜けられた方法が他にもあったのかもしれない。
最初から喧嘩腰で行ったのは、俺の間違いだったかもな。
俺はと言えば、持ってきた水中ゴーグルを使って軽く潜水をしてみる。
海藻の塊がゆらゆらと蠢いている。
その光景になんとなく背筋がゾワリとし、潜った状態で沖の方を見た。
息を呑んだ。
奥の方から何かが向かって来てもおかしくないほどに暗く、深く、そして壮大だ。
海面からでは決して見ることのできない景色がそこには広がっていた。
(サッカーだけをしていたら、この感覚も味わえなかっただろうな……)
それほどまでに当時の俺はサッカー以外のことに興味がなかった。
今では徐々に膝の調子も良くなってきている。
まさか、怪我をしたことも悪いことばかりじゃないと思える日が来るとはな。
その後しばらくしてから梨音が飲み物を取りに行くというので一度みんなで拠点へと戻ることにした。
海に入っているだけでも身体の水分は抜けていってしまうようだ。俺も飲み物を取りに行く。
「おかえりっすー」
「もっちーさんは入らなくていいんですか?」
「そうっすねー。もう少ししてからとかでもいいっすかね」
そう言いつつ、椅子に座りながら海水を入れたバケツに足を浸けていた。
「ちょっと私、おトイレに行こうかな」
「じゃあ私も……」
「梨音っちと前橋っちについてこーっと!」
「ただのおトイレだってば」
「俺も行こうかな」
「修斗も女子トイレに?」
「誰がこのタイミングで犯罪行為宣言すんだよ!」
トイレの話をされると不思議と尿意が湧き上がってくる。ニノも同じように挙手していた。
「なあ腹も減らね? 向こうで焼きそばとか売ってたしなんか食おうぜ」
「いいねー」
「そうね。それだったら私、新之助と一緒にみんなの分も買ってくるわよ」
八幡が提案した。
「いやいや、私達も一緒に買いに行くよ」
「でもほらトイレとは真逆だから。荷物はだいたい新之助に持たせるから大丈夫よ」
「そっか。じゃあお願いしちゃおうかな」
「うぉい、扱いが雑じゃね?」
「…………だめ?」
梨音が少し上目遣いでお願いした。
いつの間にそんな技を。
「ぜんっぜん! 若元が言うならいくらでも買ってくるし、荷物は全部俺が持つ!」
「ちょろすぎるだろ」
「なんか釈然としないわね」
新之助はすぐに財布を準備して八幡と一緒にご飯を買いに行った。
「梨音、最近お前も新之助の扱い方分かってきてるな」
「分かりやすいというか、裏表のないところが佐川の良いところよね」
「うん? うん、そうかもな……?」
まあそういう言い方もできるか。
俺達もトイレへと向かい、男性用は割と空いていたが、女性用はやはりというか、少し混んでいた。
俺とニノはトイレを終えた後、少し離れたところで待つことにした。
「見てコーサカ君」
「ん?」
「カニ」
「うわマジじゃん。ちっちぇー」
砂の中から小さなカニが少し顔を覗かせている。
可愛くはないが、見られるのを恥ずかしがるように砂の中へ潜ろうとする。
「…………ニノはあれから家の人達とはどうよ」
ふと思い出したように俺が聞いた。
「うん、仲良くやれてる……とは思うよ。考え方を少し変えたら、前ほど気まずくならなくなったかな」
「良かったじゃん。牧村さんも今日来てくれてるし、これからもお世話になる人達だもんな」
「ちゃんと自分の気持ちを相手に伝える。こんなにも簡単なことなのに大切なことを今までできていなかったんだよね」
「そうだな。俺も改めて考えさせられるよ。にしても…………3人とも遅いな」
気になり少しトイレの方に目を向けた。
「………………ああ?」
梨音、前橋、桜川は既にトイレを終えたようだった。
しかし、3人の行手を阻むようにして3人の日に焼けたチャラそうな男達が梨音達に声を掛けていた。
金髪に茶髪に剃り込みの入ったツーブロック。
梨音と桜川が困ったような表情で断っており、前橋は怯えたようにその2人の後ろに隠れていた。
「おいニノ、うちの女性陣がナンパされてる」
「え? うわホントだ。なんかちょっと怖そうな人達だね」
「そんなこと言ってる場合かよ。行くぞ」
あの三人は普通に歩いてても周りの目を引くぐらいには可愛い。
女子三人だけで歩いてたらそりゃ声もかけられるか。
俺はニノを連れてすぐに三人の元へと向かった。
「な! いいじゃん少し遊ぶだけ!」
「俺ら男3人で来ちゃったから暇なんだよ」
「だから結構ですって言ってるじゃないですか。私達も友達と来てるんで」
「またまた~。さっきから三人しかいないのは見てたんだぜ」
「うわそんな前から見てたとかキッショ。行こ梨音っち、前橋っち。相手する必要ないよ」
「まぁまぁまぁ、ほら俺ら地元の人間だからこの辺のこと詳しいから案内もしてあげれるし。ビーチサッカーなんてものも向こうにあるんだよ」
「え、ビーチサッカー?」
「ちょっと美月! サッカーって単語に釣られないでよ」
「お、サッカーやる系? スタイル良いしなんなら向こうで一緒に──────」
「おい、俺達の連れに構うなよ」
相手の言葉を遮り、梨音達との間に割って入った。
男達の顔が急速に曇る。
「修斗!」「高坂!」「高坂っち!」
「んだよ本当にダチと来てたのかよ」
「しかも男。別に俺達は遊びに誘ってただけだろ」
「断られてたんだろ? だったら素直に引けよ」
「ああ?」
チャラ男達がずいっと前に出て圧をかけてくる。
おそらくそれなりに喧嘩もしてきてるようなロクでもない奴らではあるだろう。
「ガキがイキってんじゃねーぞ」
「地元でしかイキれないお前らに言われたくねーよ」
「んだとてめぇ!」
男の1人が俺の肩をガッと掴んできた。
「修斗!」
「きゃあ!」
実力行使で来られたとしてもやり返す覚悟はできている。だけどこっちは俺とニノだけだ。
新之助がいれば問題ないが、さすがにニノじゃ心許ないし、なんならブルってる。
そんな中で殴り合いになれば3vs2だし流石に無事じゃすまない。
ならこういう時にはどうすれば怪我なく無事に済むのか。
サッカーをやってきた俺に抜け目はないんだぜ。
「ふざけやがってこの───」
「痛っっっってえええええええええ!!!!」
俺はそれはもう大袈裟に、まるで刃物で刺されたかのごとく大声をあげた。
「な、なんだコイツ」
「肩掴んだだけだろ」
「ぐあああああ痛ってええええ!! 痛えええよおおおおお!! うわああああああ!!」
そして砂浜の上をのたうち回りながらさらに大声をあげた。
チャラ男達は俺の突然の奇行に怖気付き、周りにいた知らない人達は何事だと注目し始めた。
「どうしましたー!?」
俺の叫び声を聞きつけて、遠くにいたライフセーバーの人もこっちに走ってきていた。
「こいつわざと……!」
「お、おいやべーよ行こうぜ」
「ああ」
チャラ男達はそそくさといなくなっていった。
「ふぅ……」
いなくなったのを確認し、俺はスッと立ち上がった。
その様子にニノを含めて梨音達はポカーンとしていた。
「大丈夫ですか?」
ライフセーバーの人が心配そうに俺の元へときた。
「ああ、大丈夫ですすいません。ちょっと素足で割れた貝を踏んでしまっただけですから」
「危ないですからこちらの方ではサンダルを脱がない方がいいですよ」
「はいすいません、気を付けます」
嘘の説明をして、問題ないことが分かるとライフセーバーの人はすぐに離れていった。
「修斗…………なんていうか…………とりあえずありがとう?」
「なんで疑問系なんだよ。俺のナイスプレイだろ」
「高坂っち、今のって…………」
「いわゆる、これぞシミュレーションってやつだ」
シミュレーション。
サッカーの試合でもたびたび使われる、相手と接触していないのに接触したようみせかけて転び、カードの誘発やチャンスゾーンでのフリーキックやペナルティキックを得る技だ。
もちろん接触していないことが審判にバレれば、こちらがカードを貰うことになる。
「暴力沙汰の喧嘩になった時、いくらなんでも俺一人じゃあいつらに勝てないから、肩を掴まれた時に少し大袈裟に騒いだんだよ」
「少しどころじゃなかったけどね」
「大騒ぎして周りの人巻き込んで、問題にでもなればそれこそ地元のアイツらは手を出してこれないと思ったからな」
「サガー君は凄いね。僕なんか何もできなかったよ」
「まぁこればっかりは場数が物言うしな。俺はいつも相手選手と殴り合うぐらいの勢いで試合してたし、この程度のことで萎縮したりはしない」
「へえー」
「でもほんと高坂っちありがとう。ニノっちも」
「僕はなにも出来なかったってば」
「騒いだ時は少しびっくりしたというか引いたけど…………間に入って啖呵切ってくれた時はその…………カッコよかったよ」
「おう、そういうことはもっと言ってくれ」
「こら、調子に乗らない。それと修斗…………危ないから相手を煽るようなことはもうしないで。もしまた修斗に何かあってサッカーができなくなったりしたら…………」
「……そうだな、気をつけるよ」
俺だってこんなことで再び怪我するのは嫌だ。
だけど、友達がこうやって絡まれてたとして、助けないやつなんかいないだろう。
「…………高坂、ありがとう」
「今度はちゃんとお礼言えたな前橋」
「うっ…………ごめんなさい」
「いや冗談だって」
「…………うん」
前橋は思いの外怯えていたようだ。
俺の冗談に対してもまともに言い返したりできていないみたいだった。
「…………とりあえずもっちーさん達のところ戻るか」
「そうだね。きい、大丈夫?」
「大丈夫」
梨音は意外とナンパされることに慣れがあったのかもしれない。桜川も元の性格からか、はっきりと拒否していた。だけど前橋はそもそも人見知りだし、高圧的な、殴り合いに発展するような喧嘩は見たことがなかったのかもしれない。
サッカー部キャプテンのお兄さんとは喧嘩とかしないのだろうか。
もしかしたら、口論にすらならずに上手く切り抜けられた方法が他にもあったのかもしれない。
最初から喧嘩腰で行ったのは、俺の間違いだったかもな。
11
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる