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文化祭勧誘編
文化祭2日目③
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「俺は狩野。サッカー部に所属してる3年生だ」
「もちろん知ってますよ。名前も…………ジュニアユースの頃から知ってます」
「そうか。俺も高坂のことはユースの頃から知っている。ジュニアユースに俺以上の才能の持ち主がいるってな」
ジュニアユースの頃、狩野先輩のことは最も才能に溢れている選手だと聞いていた。
中学1年の頃に狩野先輩と戦う機会は訪れなかった。
日本代表でも狩野先輩は一つ上の世代に呼ばれていたため、俺は入学した頃の部活紹介で顔を見ても分からなかった。
試合で戦った相手じゃないと覚えられないんだ。
「先輩は……俺になんの用ですか?」
「まぁ……用というほどでもないんだが。高坂がこの学校にいるのは聖から聞いていた。ただ怪我をしてサッカーができないこともな」
聖というのは前橋のお兄さんか。
確かサッカー部の主将をしている。
「それが最近はサッカーをやっているって噂を耳にしてな。部員の中でもキックターゲットの動画で盛り上がっているやつがいた」
「それは…………そうですね。多少は出来るようになっています」
「そこで、だ。俺は今日、お前に一つ頼み事がある」
……頼み事?
いったい何を話すつもりだろう。
そもそも狩野先輩は弥守の手引きでサッカー部に入ることになった。
卒業後もクシャスラFCに入団することが確定している。
つまり今も弥守と裏で繋がっていてもおかしくはないのだ。
だから俺は狩野先輩に対して警戒心を持っている。
狩野先輩を通して、弥守が何かしてくるのではないかと。
だからこの頼み事も内容次第によっては───。
「瑞都高校のサッカー部に入ってくれないか?」
「…………へ? サッカー部ですか?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
まさか部活の勧誘だとは微塵にも思っていなかった。
「ああ。俺達は今年、関東2部のリーグでも優勝圏内にいる。もし優勝できれば来年は関東1部だ。それにインターハイでも全国を狙える実力がある。瑞都高校が全国の強豪校入りを果たすことができるチャンスなんだ」
「ま、待ってください。こんなことを直接先輩に言うのは気が引けるんですが…………俺は先輩が弥守と密約を交わして卒業後にクシャスラFCに入団することを知っています」
「鷺宮が話したのか? まぁあいつの目的は最初からお前だったみたいだから話すのは予想できたことか」
「だから今回のその話…………弥守の手引きとかじゃないですよね?」
「お前をサッカー部に誘うことがか? 馬鹿言え、これは紛れもなく俺の本心だ。鷺宮は関係ねぇよ」
狩野先輩はハッキリと否定した。
確かに、そもそも弥守が部活に入るように誘導すること自体おかしな話だ。
あいつなら別のユースに入れさせるための手を打ってくるぐらいのことはしかねない。
「でもそれなら、狩野先輩はなんで俺をサッカー部に誘うんですか? 来年には卒業ですし、関係ないですよね?」
「まぁな。俺だって最初は海外挑戦のためにやる部活なんて、怪我しないようにやるだけの無駄な時間だと思ってたよ。部員の奴らだって下に見てたしな」
狩野先輩はクシャスラのためとは言え、鹿島オルディーズのユースをやめ、全国にすら手が届かない高校の部活に入ることになった。
周りの環境も、大幅に変わったはずだ。
その中で一体、何をモチベーションにやってきたのだろうか。
「でも俺の意識が変わったのは、半年前の東京Vとの一戦だ。お前達の代が黄金世代と呼ばれていたのは知っていた。それでも俺にとっては初めて戦う相手だし、俺は自分の実力を信じて疑わなかった。だが実際はどうだ。俺は一度も台徳丸に勝つことができず、対して神上、城ヶ崎は俺以上の結果を出せるプレーヤー。初めてだった。あそこまで屈辱的な扱いを受けたのは」
狩野先輩が言っているのはヴァリアブルの連中がここで練習試合をした時のことだろう。
あの試合は俺も途中まで見ていたが、かなり一方的にやられていた。
確か前半だけで6ー0だったはずだ。
「だが、最後まで決して諦めなかった奴もいた。それがキャプテンの聖だ。あいつは最後まで仲間を鼓舞して、1点でも取り返してやろうと最終ラインから声を掛け続けていた。その声に押されてか他のやつも諦めなかった。それを見て俺も気付かされたよ。このまま海外挑戦をしてもすぐに戦力外通告を喰らっちまうってね。俺よりも凄いやつは山ほどいる。だから俺は腐らずに成長を続けなければならないと気付いたんだ。場所や人なんて関係ねぇ、聖やほかの奴らも、俺にとっては尊敬に値する奴らなんだって」
「あの一戦がそこまで影響を…………」
「そんな俺があいつらに恩返ししてやれることは、大会で実績を残すことと、来年の後輩達のために強力な戦力を補強することだ。だから高坂、俺はお前に声を掛けにきた」
狩野先輩の目はただ真剣に、俺を見据えていた。
この言葉に嘘偽りはないだろう。
神上達に負けたことによって、この人は精神的にも大きく前進したんだ。
そして俺を来年からの自分の代わりとして部活に在籍させ、自分は心置きなく海外挑戦するという決意表明。
こういう熱いのは、俺も嫌いじゃない。
「先輩の熱意は受け取りました。だけど今すぐ返事はできません。まだ俺もどこにするか決めかねてるんです」
「もちろん分かっている。だからもしサッカー部に入るときは連絡をくれ。歓迎する。連絡先だけ貰ってもいいか?」
「もちろんです」
「それと、鷺宮との話は部員の奴らには内密に頼む。俺が卒業後に海外行くことは知ってるが、なんでここの部活に入ったかは知らないんだ」
「ええ、分かりました」
いずれにせよ、今年は最後まで生徒会を全うすると決めているので、もし部活に入ることになるとしても来年からだ。
『ピロン』
携帯を取り出すとちょうど梨音からメッセージが届いた。
『屋上に来て。鍵は空いてるから』
屋上?
トイレに行ってたんじゃないのか?
それになんで梨音が屋上の鍵を持ってるんだ。
よく分からないけど、とりあえず向かってみるか。
連絡先を交換し、その場を後にしようとすると狩野先輩に呼び止められた。
「そうだ高坂、お前に一つ動画とリンクを送っておく」
そう言って携帯の通知音と共に動画とリンクが貼られていた。
「きっとお前が知っておいたほうがいい内容だ」
そう言って狩野先輩は立ち去っていった。
知っておいたほうがいいって、一体なんだろうか。
ウィルスとかじゃないよな。
少し気になったので俺は屋上に行く前にリンクを踏んで確認してみた。
「これって…………!」
そこに表示されていたのは数日前に行われたであろうJリーグの試合スタメン表。言うなればトップチームの試合、東京ヴァリアブル対FC横浜レグノス。
そして東京ヴァリアブル側のベンチメンバーに名前を連ねる3人の見知った選手。
城ヶ崎優夜。
神上涼介。
狭間流星。
これは、3人のトップ昇格を示唆したものだ。
「もちろん知ってますよ。名前も…………ジュニアユースの頃から知ってます」
「そうか。俺も高坂のことはユースの頃から知っている。ジュニアユースに俺以上の才能の持ち主がいるってな」
ジュニアユースの頃、狩野先輩のことは最も才能に溢れている選手だと聞いていた。
中学1年の頃に狩野先輩と戦う機会は訪れなかった。
日本代表でも狩野先輩は一つ上の世代に呼ばれていたため、俺は入学した頃の部活紹介で顔を見ても分からなかった。
試合で戦った相手じゃないと覚えられないんだ。
「先輩は……俺になんの用ですか?」
「まぁ……用というほどでもないんだが。高坂がこの学校にいるのは聖から聞いていた。ただ怪我をしてサッカーができないこともな」
聖というのは前橋のお兄さんか。
確かサッカー部の主将をしている。
「それが最近はサッカーをやっているって噂を耳にしてな。部員の中でもキックターゲットの動画で盛り上がっているやつがいた」
「それは…………そうですね。多少は出来るようになっています」
「そこで、だ。俺は今日、お前に一つ頼み事がある」
……頼み事?
いったい何を話すつもりだろう。
そもそも狩野先輩は弥守の手引きでサッカー部に入ることになった。
卒業後もクシャスラFCに入団することが確定している。
つまり今も弥守と裏で繋がっていてもおかしくはないのだ。
だから俺は狩野先輩に対して警戒心を持っている。
狩野先輩を通して、弥守が何かしてくるのではないかと。
だからこの頼み事も内容次第によっては───。
「瑞都高校のサッカー部に入ってくれないか?」
「…………へ? サッカー部ですか?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
まさか部活の勧誘だとは微塵にも思っていなかった。
「ああ。俺達は今年、関東2部のリーグでも優勝圏内にいる。もし優勝できれば来年は関東1部だ。それにインターハイでも全国を狙える実力がある。瑞都高校が全国の強豪校入りを果たすことができるチャンスなんだ」
「ま、待ってください。こんなことを直接先輩に言うのは気が引けるんですが…………俺は先輩が弥守と密約を交わして卒業後にクシャスラFCに入団することを知っています」
「鷺宮が話したのか? まぁあいつの目的は最初からお前だったみたいだから話すのは予想できたことか」
「だから今回のその話…………弥守の手引きとかじゃないですよね?」
「お前をサッカー部に誘うことがか? 馬鹿言え、これは紛れもなく俺の本心だ。鷺宮は関係ねぇよ」
狩野先輩はハッキリと否定した。
確かに、そもそも弥守が部活に入るように誘導すること自体おかしな話だ。
あいつなら別のユースに入れさせるための手を打ってくるぐらいのことはしかねない。
「でもそれなら、狩野先輩はなんで俺をサッカー部に誘うんですか? 来年には卒業ですし、関係ないですよね?」
「まぁな。俺だって最初は海外挑戦のためにやる部活なんて、怪我しないようにやるだけの無駄な時間だと思ってたよ。部員の奴らだって下に見てたしな」
狩野先輩はクシャスラのためとは言え、鹿島オルディーズのユースをやめ、全国にすら手が届かない高校の部活に入ることになった。
周りの環境も、大幅に変わったはずだ。
その中で一体、何をモチベーションにやってきたのだろうか。
「でも俺の意識が変わったのは、半年前の東京Vとの一戦だ。お前達の代が黄金世代と呼ばれていたのは知っていた。それでも俺にとっては初めて戦う相手だし、俺は自分の実力を信じて疑わなかった。だが実際はどうだ。俺は一度も台徳丸に勝つことができず、対して神上、城ヶ崎は俺以上の結果を出せるプレーヤー。初めてだった。あそこまで屈辱的な扱いを受けたのは」
狩野先輩が言っているのはヴァリアブルの連中がここで練習試合をした時のことだろう。
あの試合は俺も途中まで見ていたが、かなり一方的にやられていた。
確か前半だけで6ー0だったはずだ。
「だが、最後まで決して諦めなかった奴もいた。それがキャプテンの聖だ。あいつは最後まで仲間を鼓舞して、1点でも取り返してやろうと最終ラインから声を掛け続けていた。その声に押されてか他のやつも諦めなかった。それを見て俺も気付かされたよ。このまま海外挑戦をしてもすぐに戦力外通告を喰らっちまうってね。俺よりも凄いやつは山ほどいる。だから俺は腐らずに成長を続けなければならないと気付いたんだ。場所や人なんて関係ねぇ、聖やほかの奴らも、俺にとっては尊敬に値する奴らなんだって」
「あの一戦がそこまで影響を…………」
「そんな俺があいつらに恩返ししてやれることは、大会で実績を残すことと、来年の後輩達のために強力な戦力を補強することだ。だから高坂、俺はお前に声を掛けにきた」
狩野先輩の目はただ真剣に、俺を見据えていた。
この言葉に嘘偽りはないだろう。
神上達に負けたことによって、この人は精神的にも大きく前進したんだ。
そして俺を来年からの自分の代わりとして部活に在籍させ、自分は心置きなく海外挑戦するという決意表明。
こういう熱いのは、俺も嫌いじゃない。
「先輩の熱意は受け取りました。だけど今すぐ返事はできません。まだ俺もどこにするか決めかねてるんです」
「もちろん分かっている。だからもしサッカー部に入るときは連絡をくれ。歓迎する。連絡先だけ貰ってもいいか?」
「もちろんです」
「それと、鷺宮との話は部員の奴らには内密に頼む。俺が卒業後に海外行くことは知ってるが、なんでここの部活に入ったかは知らないんだ」
「ええ、分かりました」
いずれにせよ、今年は最後まで生徒会を全うすると決めているので、もし部活に入ることになるとしても来年からだ。
『ピロン』
携帯を取り出すとちょうど梨音からメッセージが届いた。
『屋上に来て。鍵は空いてるから』
屋上?
トイレに行ってたんじゃないのか?
それになんで梨音が屋上の鍵を持ってるんだ。
よく分からないけど、とりあえず向かってみるか。
連絡先を交換し、その場を後にしようとすると狩野先輩に呼び止められた。
「そうだ高坂、お前に一つ動画とリンクを送っておく」
そう言って携帯の通知音と共に動画とリンクが貼られていた。
「きっとお前が知っておいたほうがいい内容だ」
そう言って狩野先輩は立ち去っていった。
知っておいたほうがいいって、一体なんだろうか。
ウィルスとかじゃないよな。
少し気になったので俺は屋上に行く前にリンクを踏んで確認してみた。
「これって…………!」
そこに表示されていたのは数日前に行われたであろうJリーグの試合スタメン表。言うなればトップチームの試合、東京ヴァリアブル対FC横浜レグノス。
そして東京ヴァリアブル側のベンチメンバーに名前を連ねる3人の見知った選手。
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