怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
183 / 203
文化祭勧誘編

告白

しおりを挟む
【若元梨音目線】


「すぅ…………はぁ…………」

 屋上に来て一つ深呼吸をした。
 日がかなり傾き、遮るものがないからか西日がよく差して眩しい。
 心臓がこれまで経験したことがないほどに鳴り響いている。
 私は今日、ここで修斗に告白をする。
 私の気持ちを、想いを、形ある言葉にして。
 そのために神奈月先輩に修斗と大事な話をしたいからと伝えて、宇佐木先生に話を通してもらって特別に屋上の鍵を借りることができた。

 最近の修斗は椚田くぬぎださんや他のクラスの子達とも話したり遊ぶことが増えていた。
 昨日だって、気付いたら一緒に文化祭も回ってたもん。
 いつまでも幼馴染という立場に安心していたらダメなんだ。

 だけど私のこの気持ちはあくまで私からの一方通行。
 修斗が実際にどう思っているのかは分からない。
 嫌われてる…………なんてことはないと思うけど、ただの幼馴染のままでいよう、なんてことも……。

 そ、その時はその時だよね。
 修斗はまたサッカーに対して集中しようとしてるんだから。
 私がその邪魔をするべきじゃないんだ。うん。

「…………はぁ…………緊張する」

 遠くから仄かに楽器の音が聞こえてくる。
 修斗に連絡をしてからの時間が永遠に感じる。
 気持ちがコロコロ変わって、やっぱり来ないでとも思ってしまう。
 ウロウロと落ち着きなく、心が張り裂けそうになる。

『ガチャ』

 音がしたと同時に足を止め、扉を見た。

 修斗が来た。

 私の心臓がより一層宙返りをした。

(今、ちゃんと立ててるかな私)

 ふわふわして、地に足がついていないような感覚。
 足元に一度目線を落として、自分がしっかり立てていることを確認してから顔を上げた。

「ごめんね修斗。いきなり屋上に来てだなんて……」

「…………大丈夫」

「じ、実は…………修斗に伝えたいことがあるの!」

 もう引き返せない。
 私の気持ちを初めて修斗に……!

「ちょうど良かった。俺も…………梨音に話しておきたいことがあったんだ」

 …………え? 修斗も……?
 な、なんだろう。
 もしかして…………修斗も…………。

「俺は高校に入学して、一度はサッカーから離れて過ごしてみようと思った。だけど途中でやっぱりサッカーが好きなんだってことに気付かされて、高校生活とサッカー、両立を目指そうって気持ちになったんだ」

「うん……知ってるよ。怪我の痛みが残ってるのに頑張ってたよね、リハビリとか……。私も一緒にいたから知ってるよ」

「新之助やニノ、八幡や桜川や前橋、それに生徒会の先輩方。色んなとこに行ったし、学校行事の裏方を手伝ったり、それまでの俺じゃ考えられない新鮮なことばかりだった」

「そうだね。中学の頃の修斗は……サッカーのことばかりだったもんね」

 その頃のことを思い出して、少し笑った。
 サッカーに夢中だった修斗は、良くも悪くも他のことは二の次だった。
 私が修斗のことを好きだったのは昔からだったけど、もしも今もその頃のままだったら告白しようなんて考えなかったかもしれない。
 まるで普通の高校生のように過ごすようになったから、私は危機感を覚えたんだ。

「来年に向けて、俺はこのまま高校生活とサッカーの両立が出来ると思っていたよ。だけど…………」

「…………だけど?」

「…………」

 ふと、逆光のせいなのか、修斗の表情が影になって見にくくなる。
 嫌な予感がした。

「…………俺の考えが甘かった。このままじゃ俺は自分の目指す者にはなれない」

「…………え?」

「二つを充実させようなんて中途半端な思いじゃ、俺は奴らを見返すことなんてできない」

 淡々と話す修斗の表情が見えなかった。
 それがなんだかとても怖い。

「奴らって…………鷺宮さん達のこと?」

「ああ。さっき涼介達の試合を見た。俺は…………いかに自分の立ち位置を理解できていなかったのかを理解したよ。俺はまだ、スタートラインに立ててすらいなかったんだ」

「それはしょうがないよ! だって修斗はまだ怪我が完治したわけじゃないんだし…………!」

「そういうのを含めて遊んでる場合じゃないって実感したんだ。だから梨音にも伝えておく。今度から俺のことは遊びに誘わないでくれ。新之助達にも同じことを話す。生徒会は…………もし途中で辞めることが可能なら辞める」

 違う。違うよ修斗……!
 私はそんな告白が聞きたいんじゃないよ……!
 だってそんなの…………そんなのまるで怪我する前の……!

「…………俺はもう、生徒会も、友人も、学校生活も…………幼馴染である梨音でさえも切り捨てる覚悟だ」

「わ……私も……?」

「ああいや、ごめん。言い方が悪かった。優先順位の話をしてるんだ。サッカーが絶対の優先事項だとして、それ以外は同率というか、どうでもいいというか…………」

 視界が滲んできた。
 どうでもいいって…………そんなの怪我する前と同じなんかじゃない。もっと酷くなってる。
 サッカーに夢中になっていた頃でさえも、優先順位は別として、私を傷つけるようなことは言わなかった。
 こんなの…………私の好きな修斗じゃ…………!

「要はサッカーに重きを置くから梨音にも理解だけしておいて欲しいって話だ。それで、梨音はなんの話が?」

「………………んでも」

「梨音?」

「なんでもない!」

 私はそこにいるのが辛くなって校舎内に走って戻った。
 階段を下りて、ただひたすらに人のいないところに。
 幸いにも後夜祭の影響か、校舎内に人はほとんどいなかった。

 少しだけ、修斗が追ってきてくれるんじゃないかなんて期待したけど、そんな淡い期待が叶えられることはなかった。

「あ、梨音いた」

 廊下の途中で冬華に会った。

「探したのよ中庭にもいないし───ってどうしたの!?」

「うわあああああん!」

 冬華に抱き付くと同時に抑え込んでた感情が溢れた。
 後夜祭の途中で良かったと思った。
 派手な演奏音で、私の気持ちが知らない人に聞かれることがなかったから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

処理中です...