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怒らないでよ
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ざわめきが大きくなった。
「おい、あれは妃殿下のお姿に似ていないか……いや、しかし一体なぜだ」
「精霊が実在するなんて。それに何と美しい神秘的な姿だ」
「精霊のお姿と妃殿下がああまで酷似するなんて……これには特別な理由があるに違いないわ。きっと妃殿下は精霊がオスロに遣わしてくださった特別な御方なのよ!」
固唾を呑んで見守っていた人々は口々に言い合った。それはヨアンや司祭の耳にも届いた。
シュメルヒままだ唖然としていて、自分と似た面差しをただただ凝視していた。
「精霊様、貴方はなにをしたのです……その姿はどうして」
精霊は首をかしげて微笑んだ。
『なんじゃ、<擬態>を見るのは初めてか? 血を飲んだ相手の姿、声、知識を我がものとするのが我らじゃ。お主の血は美味い。飲み干してしまいたいほどじゃが、そうするとお主は死んでしまうからの、まだやめておこう』
随分と古風な話し方をするせいで、意味がするりと入って来ない。一拍置いてやっと言葉が腑に落ちると、そこからさらなる混乱が押し寄せてくる。
「毒が効かないのですか……?」
『毒? ああ、当然じゃろう。あれは昔、王家の娘が意に染まぬ婚姻を厭うて、心を許した人間だけが触れられるよう、己の血を毒に変えてくれと願ったのが事の始まりじゃ。この世のいちばんはじめの……お主らは何と言うたか、ああ、オメガか。原初のオメガの血を毒に変えたのは儂らの同胞じゃ。娘に同情して祝福を与えてやったのじゃ』
ふん、と得意気に胸を張る。
『血を毒に変えてしまえば、好いてもいないアルファから噛まれなくてすむであろ?』
シュメルヒは頭がおかしくなりそうだった。
オメガにのみかけられた呪いだと言われていた<毒血>は、初代オメガの願望から生まれた祝福だというのか……?
(祝福……? こんな、こんなものが呪いでなく祝福だと? そのせいで私が今までどれだけ……!)
「妃……、妃、シュメルヒ!」
肩を掴まれ揺すられた。
「……ヨアン様」
「さっきから何を話してるんだ。それにあの精霊の顔、なんで君の顔に似てるんだ、いきなり姿が変わったぞ」
「ヨアン様、私と精霊様の会話を聞いていたのでは」
「会話……? 妃は精霊の言葉が分かるのか?」
ヨアンの驚いた顔は嘘を言っているようには到底見えない。理由は定かでないが、先ほどからシュメルヒだけが精霊の言葉を理解しているようだ。
(私の血を飲んだことが原因で? いや、その前から片言ではあったが会話は成立していた)
シュメルヒはかいつまんでヨアンに説明した。時を戻す、以外の説明だ。
ヨアンはオメガと毒のくだりで精霊とシュメルヒの顔を交互に見やった。本当なのか? と精霊を疑う眼差しだった。
「そんな祝福聞いたことない。……一旦それは置いておこう。ほかには?」
シュメルヒは口を開きかけ、しかし一瞬の判断の元、言葉を呑み込んだ。
「……いえ、それだけです。精霊様はそれ以上は何も……あ、もう一つありました」
精霊を見ると、<彼>はシュメルヒの注意が引けて嬉しそうな様子だった。同じ顔で自分なら浮かべないであろう人懐っこい表情を向けられて居心地が悪い。
「……妃と似てるな」
ぽつんとヨアンが零すと、シュメルヒは無意識にヨアンをじっと見てしまった。ほぼ睨むといって良い眼差しの強さだ。
ヨアンが慌てて、
「違うぞ! 妃の方が何倍も綺麗に決まってる……怒らないでよ」
「怒ってなどおりません。ただ、精霊がさきほど『祝福をやる』と、そう言っていたのを思い出しただけです」
シュメルヒはふいとヨアンから顔を背けた。
(ヨアン様……精霊様に見惚れた顔をされるなんて。あんな、あんなの……別に見惚れるほどではないでしょうに!)
そもそも、シュメルヒと同じ顔で半裸でヨアンの前に現れるなど、たとえ精霊であっても控えてほしい。居たたまれない。
ヨアンはシュメルヒの不機嫌を敏感に感じ取り、話題を変えようとして聞き返した。
「祝福って、本当に?」
「ええ、……そう仰いましたね? 精霊様」
精霊は目を細めた。
『また我にお主の稀血をくれるか? くれるなら祝福してやろう。人間を祝福してやるのは好きじゃ』
さっきは敵意も露わに「カエセ」と怒っていたくせに、一転して人間に対し友好的な発言だ。シュメルヒには精霊の真意が読めなかった。こちらを嘘で翻弄する様子はなく、ただ思ったままを口にしている、そんな感じだ。
『お主は何が欲しい? どんな祝福が望みじゃ? 言うてみい、言うてみい』
シュメルヒはヨアンに耳打ちした。
「望みの祝福を授けてやると言っておられます。どうされますか?」
「僕が決めていいのか? 妃に望みがあるなら、それを精霊に願ったらいい。どこまで聞き届けてくださるかは分からないけど、精霊は君を気に入ってるみたいだ」
「私の望み……」
脳裏によぎるのは、処刑された前世、孤独だった幼少期……ヨアンのこと。
一瞬、分不相応な願望が浮かびかけたのを、理性が押しとどめた。
「ヨアン様の望みが私の望みです。どうかヨアン様が決めてください」
「……いいのか? 僕に委ねて、後から文句なんて受け付けないからな」
「かまいません。ヨアン様のご意思にこの身を委ねます」
ヨアンがボソッと「……言い方」と呟いた。
「いいんだな? 妃が言ったんだからな。僕の望む祝福を貰っていいって」
あまりに念押しされるので、さすがに少し不安になってきた。ヨアンは一体精霊に何を請おうというのか。
(オスロの繁栄や、次期国王としての盤石な治世だとか……ヨアン様が願うとしたらそういった類のものだろう。私に許可を求めるようなことではないと思うのだが)
「い・い・ん・だ・な?」
一語一句を区切って訊かれた。シュメルヒは気圧されながらも、申し出た手前、頷くしかなかった。
「は、はい」
ヨアンが精霊に向き直った。途端に精霊はぎゅっと顔を顰めた。
『この小童め、嫌いじゃ! なんで小童の望みを叶えてやらねばならんのじゃ!』
身を捩って叫ぶ精霊の姿に、言葉は聞こえずとも意志は伝わったらしい。
「妃、もしかして僕は精霊に嫌われてるのか?」
不安そうなヨアンに、シュメルヒは急いで精霊に訴えかけた。
「精霊様、どうぞヨアン様の願いを私の願いとしてお聞き届けくださいませ」
『……なんじゃ、その小童を好いておるのか? 小童はお主のなんじゃ?』
シュメルヒは硬直した。自分にとってヨアンが何か、だと?
(それを、この場で言えと……? 公衆の面前で?)
「妃、精霊はなんて言ってる?」
「それは、その……」
『どうした? なぜ言わん? 小童を好きか、嫌いか、簡単じゃろうが、早う言え』
(うるさいっ! 小童と呼ぶな、ヨアン様に失礼だ!)
シュメルヒは内心反駁するが、精霊に向かってヘタな態度を取って機嫌を損ねるわけにもいかない。
「ヨアン様、すみませんが、少し離れていてくださいませんか」
「は? 駄目に決まってる。さっきみたいに襲ってくるかもしれないじゃないか。絶対離れない」
精霊はじっと二人を観察し、にやにやと嫌な笑みを浮かべた。
『ほう、そうかそうか……お主、小童に惚れておるじゃろ、そうなんじゃな!』
「違いますッ!」
突如叫んだシュメルヒの横で、ヨアンがビクッと肩を跳ねさせた。
「妃、どうした、何を言われたんだ?」
精霊は心底愉快そうに囃した。
『おお恐い。我に嘘は通じんぞ。早う言え、小童はお主のなんじゃ。それとも、祝福をいらんのか』
シュメルヒは頭が沸騰しそうになりながら、ぎゅっと唇をかみしめた。
ヨアンがせっかく精霊からの祝福を受け取れる貴重な機会を、自分のせいで台無しにするわけにはいかない。
「ヨアン様は、私の……」
『声が小さいのぅ、よう聞こえんわい』
シュメルヒは相手が精霊だろうが人外だろうが、今すぐ自分とよく似た横っ面をぶん殴ってやりたくなかった。
「ヨアン様は私の、大事な、大事な御方です……これでよろしいですか!」
ヨアンが目を見開いてシュメルヒを見つめる。嬉しそうに口元が緩んだ。
「妃、それは本当……?」
シュメルヒはヨアンの方を断固として見ないようにして、ギッと精霊を睨みつけた。
「さあ、言いました。早くヨアン様に祝福を」
『足りんなァ』
「……は?」
精霊は噴水の縁に腰を下ろし、指先でくるくると長い髪の毛先を弄った。
『大事にも色々あるじゃろ。どの程度じゃ』
シュメルヒは怒鳴り散らしたいのを堪えて、ヨアンから半歩距離を取った。
「……お慕い、しております」
ヨアンが顔を輝かせ、半歩開いた距離を詰めてきた。
「ねえ、それはどういう……」
『だから程度を聞いておるんじゃ、慕うとはどの程度じゃ。はっきりせい!』
二方向から迫られて、シュメルヒの顔は真っ赤になり、目には何の感情か分からない涙まで滲んできた。我慢できなくなり、ついにシュメルヒは苛立ちに任せて叫んだ。
「……この身を捧げてしまいたいほどお慕いしているとっ、そう言えば満足ですかっ!」
はあ、はあ、と肩で荒い息をするシュメルヒの周囲が、しんと静まり返った。
精霊だけでなく、周囲にいた貴族達も固まっている。
シュメルヒは涙目で精霊を睨み、決してヨアンの方を見なかった。見なくとも、ヨアンからの熱を孕んだ視線が突き刺さり、怖くて顔向けできなかったのだ。
「おい、あれは妃殿下のお姿に似ていないか……いや、しかし一体なぜだ」
「精霊が実在するなんて。それに何と美しい神秘的な姿だ」
「精霊のお姿と妃殿下がああまで酷似するなんて……これには特別な理由があるに違いないわ。きっと妃殿下は精霊がオスロに遣わしてくださった特別な御方なのよ!」
固唾を呑んで見守っていた人々は口々に言い合った。それはヨアンや司祭の耳にも届いた。
シュメルヒままだ唖然としていて、自分と似た面差しをただただ凝視していた。
「精霊様、貴方はなにをしたのです……その姿はどうして」
精霊は首をかしげて微笑んだ。
『なんじゃ、<擬態>を見るのは初めてか? 血を飲んだ相手の姿、声、知識を我がものとするのが我らじゃ。お主の血は美味い。飲み干してしまいたいほどじゃが、そうするとお主は死んでしまうからの、まだやめておこう』
随分と古風な話し方をするせいで、意味がするりと入って来ない。一拍置いてやっと言葉が腑に落ちると、そこからさらなる混乱が押し寄せてくる。
「毒が効かないのですか……?」
『毒? ああ、当然じゃろう。あれは昔、王家の娘が意に染まぬ婚姻を厭うて、心を許した人間だけが触れられるよう、己の血を毒に変えてくれと願ったのが事の始まりじゃ。この世のいちばんはじめの……お主らは何と言うたか、ああ、オメガか。原初のオメガの血を毒に変えたのは儂らの同胞じゃ。娘に同情して祝福を与えてやったのじゃ』
ふん、と得意気に胸を張る。
『血を毒に変えてしまえば、好いてもいないアルファから噛まれなくてすむであろ?』
シュメルヒは頭がおかしくなりそうだった。
オメガにのみかけられた呪いだと言われていた<毒血>は、初代オメガの願望から生まれた祝福だというのか……?
(祝福……? こんな、こんなものが呪いでなく祝福だと? そのせいで私が今までどれだけ……!)
「妃……、妃、シュメルヒ!」
肩を掴まれ揺すられた。
「……ヨアン様」
「さっきから何を話してるんだ。それにあの精霊の顔、なんで君の顔に似てるんだ、いきなり姿が変わったぞ」
「ヨアン様、私と精霊様の会話を聞いていたのでは」
「会話……? 妃は精霊の言葉が分かるのか?」
ヨアンの驚いた顔は嘘を言っているようには到底見えない。理由は定かでないが、先ほどからシュメルヒだけが精霊の言葉を理解しているようだ。
(私の血を飲んだことが原因で? いや、その前から片言ではあったが会話は成立していた)
シュメルヒはかいつまんでヨアンに説明した。時を戻す、以外の説明だ。
ヨアンはオメガと毒のくだりで精霊とシュメルヒの顔を交互に見やった。本当なのか? と精霊を疑う眼差しだった。
「そんな祝福聞いたことない。……一旦それは置いておこう。ほかには?」
シュメルヒは口を開きかけ、しかし一瞬の判断の元、言葉を呑み込んだ。
「……いえ、それだけです。精霊様はそれ以上は何も……あ、もう一つありました」
精霊を見ると、<彼>はシュメルヒの注意が引けて嬉しそうな様子だった。同じ顔で自分なら浮かべないであろう人懐っこい表情を向けられて居心地が悪い。
「……妃と似てるな」
ぽつんとヨアンが零すと、シュメルヒは無意識にヨアンをじっと見てしまった。ほぼ睨むといって良い眼差しの強さだ。
ヨアンが慌てて、
「違うぞ! 妃の方が何倍も綺麗に決まってる……怒らないでよ」
「怒ってなどおりません。ただ、精霊がさきほど『祝福をやる』と、そう言っていたのを思い出しただけです」
シュメルヒはふいとヨアンから顔を背けた。
(ヨアン様……精霊様に見惚れた顔をされるなんて。あんな、あんなの……別に見惚れるほどではないでしょうに!)
そもそも、シュメルヒと同じ顔で半裸でヨアンの前に現れるなど、たとえ精霊であっても控えてほしい。居たたまれない。
ヨアンはシュメルヒの不機嫌を敏感に感じ取り、話題を変えようとして聞き返した。
「祝福って、本当に?」
「ええ、……そう仰いましたね? 精霊様」
精霊は目を細めた。
『また我にお主の稀血をくれるか? くれるなら祝福してやろう。人間を祝福してやるのは好きじゃ』
さっきは敵意も露わに「カエセ」と怒っていたくせに、一転して人間に対し友好的な発言だ。シュメルヒには精霊の真意が読めなかった。こちらを嘘で翻弄する様子はなく、ただ思ったままを口にしている、そんな感じだ。
『お主は何が欲しい? どんな祝福が望みじゃ? 言うてみい、言うてみい』
シュメルヒはヨアンに耳打ちした。
「望みの祝福を授けてやると言っておられます。どうされますか?」
「僕が決めていいのか? 妃に望みがあるなら、それを精霊に願ったらいい。どこまで聞き届けてくださるかは分からないけど、精霊は君を気に入ってるみたいだ」
「私の望み……」
脳裏によぎるのは、処刑された前世、孤独だった幼少期……ヨアンのこと。
一瞬、分不相応な願望が浮かびかけたのを、理性が押しとどめた。
「ヨアン様の望みが私の望みです。どうかヨアン様が決めてください」
「……いいのか? 僕に委ねて、後から文句なんて受け付けないからな」
「かまいません。ヨアン様のご意思にこの身を委ねます」
ヨアンがボソッと「……言い方」と呟いた。
「いいんだな? 妃が言ったんだからな。僕の望む祝福を貰っていいって」
あまりに念押しされるので、さすがに少し不安になってきた。ヨアンは一体精霊に何を請おうというのか。
(オスロの繁栄や、次期国王としての盤石な治世だとか……ヨアン様が願うとしたらそういった類のものだろう。私に許可を求めるようなことではないと思うのだが)
「い・い・ん・だ・な?」
一語一句を区切って訊かれた。シュメルヒは気圧されながらも、申し出た手前、頷くしかなかった。
「は、はい」
ヨアンが精霊に向き直った。途端に精霊はぎゅっと顔を顰めた。
『この小童め、嫌いじゃ! なんで小童の望みを叶えてやらねばならんのじゃ!』
身を捩って叫ぶ精霊の姿に、言葉は聞こえずとも意志は伝わったらしい。
「妃、もしかして僕は精霊に嫌われてるのか?」
不安そうなヨアンに、シュメルヒは急いで精霊に訴えかけた。
「精霊様、どうぞヨアン様の願いを私の願いとしてお聞き届けくださいませ」
『……なんじゃ、その小童を好いておるのか? 小童はお主のなんじゃ?』
シュメルヒは硬直した。自分にとってヨアンが何か、だと?
(それを、この場で言えと……? 公衆の面前で?)
「妃、精霊はなんて言ってる?」
「それは、その……」
『どうした? なぜ言わん? 小童を好きか、嫌いか、簡単じゃろうが、早う言え』
(うるさいっ! 小童と呼ぶな、ヨアン様に失礼だ!)
シュメルヒは内心反駁するが、精霊に向かってヘタな態度を取って機嫌を損ねるわけにもいかない。
「ヨアン様、すみませんが、少し離れていてくださいませんか」
「は? 駄目に決まってる。さっきみたいに襲ってくるかもしれないじゃないか。絶対離れない」
精霊はじっと二人を観察し、にやにやと嫌な笑みを浮かべた。
『ほう、そうかそうか……お主、小童に惚れておるじゃろ、そうなんじゃな!』
「違いますッ!」
突如叫んだシュメルヒの横で、ヨアンがビクッと肩を跳ねさせた。
「妃、どうした、何を言われたんだ?」
精霊は心底愉快そうに囃した。
『おお恐い。我に嘘は通じんぞ。早う言え、小童はお主のなんじゃ。それとも、祝福をいらんのか』
シュメルヒは頭が沸騰しそうになりながら、ぎゅっと唇をかみしめた。
ヨアンがせっかく精霊からの祝福を受け取れる貴重な機会を、自分のせいで台無しにするわけにはいかない。
「ヨアン様は、私の……」
『声が小さいのぅ、よう聞こえんわい』
シュメルヒは相手が精霊だろうが人外だろうが、今すぐ自分とよく似た横っ面をぶん殴ってやりたくなかった。
「ヨアン様は私の、大事な、大事な御方です……これでよろしいですか!」
ヨアンが目を見開いてシュメルヒを見つめる。嬉しそうに口元が緩んだ。
「妃、それは本当……?」
シュメルヒはヨアンの方を断固として見ないようにして、ギッと精霊を睨みつけた。
「さあ、言いました。早くヨアン様に祝福を」
『足りんなァ』
「……は?」
精霊は噴水の縁に腰を下ろし、指先でくるくると長い髪の毛先を弄った。
『大事にも色々あるじゃろ。どの程度じゃ』
シュメルヒは怒鳴り散らしたいのを堪えて、ヨアンから半歩距離を取った。
「……お慕い、しております」
ヨアンが顔を輝かせ、半歩開いた距離を詰めてきた。
「ねえ、それはどういう……」
『だから程度を聞いておるんじゃ、慕うとはどの程度じゃ。はっきりせい!』
二方向から迫られて、シュメルヒの顔は真っ赤になり、目には何の感情か分からない涙まで滲んできた。我慢できなくなり、ついにシュメルヒは苛立ちに任せて叫んだ。
「……この身を捧げてしまいたいほどお慕いしているとっ、そう言えば満足ですかっ!」
はあ、はあ、と肩で荒い息をするシュメルヒの周囲が、しんと静まり返った。
精霊だけでなく、周囲にいた貴族達も固まっている。
シュメルヒは涙目で精霊を睨み、決してヨアンの方を見なかった。見なくとも、ヨアンからの熱を孕んだ視線が突き刺さり、怖くて顔向けできなかったのだ。
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