【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸

文字の大きさ
96 / 107
第一章 後半

第96話:原初の魔王

しおりを挟む
 なにかが変わった。
 それだけは本能的に理解できた。

 突然魔王から溢れ出したすさまじい魔力の奔流に本能的な恐怖を感じ、槍を引き抜き、すぐさま距離をとった。

「これはいったい……」

 さっきまでセツナと魔王てとらぽっどが戦っている周りを魔王軍が取り囲んでいた。その魔王軍を殲滅させ、頭に血がのぼっている様子の魔王の隙をついて後ろに回り込むと、同時に奇襲の突きを放った。

 そのままその奇襲に焦った魔王を一気に追い込み、最後はこの『雷槍ヴァジュランダ』で魔王の胸を突き、討ち取った……はずだった。

 だというのに……。

「いったいこれは?」

 思わずそうこぼしたその時、セツナが閃光のような速さで現れた。

≪コウガ様。あれは危険です。すこしお下がりください。ん? もしやこの魔力の性質は……≫

 その先を口にしようとしたセツナだったが、突然オレたちを衝撃波が襲った。

「くっ!?」

 避けられない!?

 直撃を喰らうと一瞬身構えたが、しかし衝撃は襲ってこなかった。
 咄嗟にセツナが障壁かなにかを展開してくれたようだ。

「ふぅ……助かったよ。しかし、これはいったい……」

 衝撃波となってオレたちを襲ったのは、魔王から爆発的に広がった黒い魔力だった。
 それは瞬く間に辺り一面を埋め尽くし、魔王の姿を飲み込んでしまった。

 しかし、そのまま広がり続けるかに思えたその黒い魔力は、まるで前世で見た動画の逆再生のように中心に集束し始める。
 なにが起こっているのかわからず、下手に身動きがとれない。

 迷っているわずかな時間。
 その短い間に……そいつは顕現していた。

「いったい何者だ? 魔王……なのか?」

 ジルを彷彿とさせるほどの魔力を漲らせ、豊満な女性らしい身体つきで、そいつは静かにこちらを見つめていた。

「よもや妾をここまで追い詰めるとはな。白き獣に人族の槍使いよ。いや……しかし礼を言っておかねばならぬな。よくぞ起こしてくれた・・・・・・・と」

 まだ状況が理解できていないが、やはり魔王ということか?

「お前は本当に魔王てとらぽっどなのか?」

 話し方はまったく違っている。だが、その声に、その大人びた顔に魔王の面影が見えた。

「驚いたか? これが妾の真の姿じゃ。どうだ? エロかろう?」

 真面目な顔で聞いてきたので一瞬返す言葉に詰まってしまった。

 まぁ確かに先ほどまでの幼女のような姿とは打って変わって、いわゆる出ているところは出て、引っ込んでいる所は引っ込んでいるし、その……何というか、一言で言えば確かにエロいが……。

「いやいやいや!? そういう事じゃない! お前はなにものだ! てとらぽっどなのか!?」

 馬鹿馬鹿しい問いかけを無視し、愛槍を構えて警戒ランクを引き上げる。
 さっきから頭の中で警鐘が鳴りっぱなしだ。

「ん~……簡単に言えばてとらぽっどだ。あれは妾であるが妾ではない」

「どういう意味だ? てとらぽっどの身体を乗っ取ったって事か?」

「その解釈は心外だな。この身体は元々妾のものだ。あの『魔王てとらぽっど』という存在は、妾が力を取り戻すまでの間、この身体を管理させるために酔狂で創り出したおもちゃにすぎん」

 酔狂……おもちゃ……?

「ひどい言いようだな……」

 さっきまで戦っていた姿を思い出すと、なんだか哀れに思えた。

 てとらぽっどは敵だったが、勝手にその人格を生み出して身体を任せておいて、復活したから不要だと切り捨てるのは何かもやもやするものがあった。

「ん? なにがだ? 我は魔族の始まりの祖にして終焉を告げる者!! 『原初の魔王ショウハブロ』なるぞ! 妾に許されぬことなど何もない!!」

 ヤバい。強さもぶっ飛んでそうだが、元のてとらぽっどと比べても色々ぶっ飛んでそうだ。
 それに、さっきからオレの頭の中で警鐘がうるさいぐらい鳴り続けている。

≪コウガ様。この者と戦うのは不味いかも知れません。邪神の使徒と言うのはおそらくこの者が植え付けた偽の記憶。『原初の魔王ショウハブロ』というのが本当なら……それは堕ちた神……すなわち邪神そのものということになります≫

 ヤバいどころではなかった……。
 邪神の使徒どころか、邪神そのものだった。

 そもそも魔王とは邪神から加護などによって力の一部を借り受けた存在だったはず。
 そう。力の一部・・借り受けた・・・・・だけの魔王に、人類は何度も滅ぼされそうになっている。

 それがその本体ともなれば力の次元が違うはず。

「『魔王と思って戦ってたら邪神でした』とか、反則だろ……」

 思わず愚痴が口を突いて出てしまう。近頃オレの周りは桁違いに強い奴が多すぎませんかね?
 女神様? どうなってるんでしょうか?

「もう話はこれぐらいでいいだろう? どうせ死ぬのだ」

 魔王ショウハブロがそう言ったとき、なにかの影が魔王のそばへと駆け込んできた。
 いや、逃げてきたと言うのが正確か。

「ま、魔王様! た、助けてください! ふ、双子が!?」

 その影はナーガだった。

「むっ。逃げ足が速いのです……にゃ」

「蛇のくせに生意気……にゃ」

 そしてそれを追うようにリリーとルルーが現れ、オレの元へとやってきた。

「コウガ。すみません。アスタロト筋肉馬鹿は倒したのですが、ナーガ蛇女のとどめを刺し損なった……にゃ」

 どうやら六魔将の一人を無事に倒せたようだ。
 十分すごいのだが、二人はちょっと不満なようだ。

 うん。おかしい。
 この短期間にいったい何があった?

 ジル違うベクトルに不信感を募らせていると、ナーガが突然口から大量の血を吐いた。

 え? いったいなにが?

「妾が加護を与えてやったというのにこの程度の強さだなんて……生きる価値も無いわ」

 魔王ショウハブロの黒く変質した右腕が、助けを求めて逃げてきたナーガの胸を貫いていた。

「な、なんで……にゃ」

 ルルーの口から疑問の言葉がこぼれた。
 オレも同じくその行動は理解できないが、ショウハブロがオレの想像以上に危ない奴だということはわかった。

 だから警戒レベルをさらにあげたのだが……。
 しかし、どうやらそれでもぜんぜん足りていなかったようだ。

「じゃぁ本当に終わらせましょうか。次は槍使い……あなたよ」

 ショウハブロがそう呟いた瞬間、腹から焼けるような熱さと……激痛が襲ってきた。

 え? いったいなにが……?
 それに、いつの間に移動したんだ?
 ずいぶん遠くからリリーとルルーの悲鳴が聞こえてくるぞ……。

「ごぉぼ……」

 どうしたんだ? そう言おうと思ったがうまく話せなかった。
 何が起きたのか……わからない。


 目の前に顔があった。


 さっきまで幼かった顔が……妖艶な美貌の魔王の顔が。


 二人が移動したんじゃない。オレが……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

処理中です...